クエスト009:ゲームセット
23時をすぎてしまいました...反省しつつ明日は休載致します。
その分内容も多目ですから悪しからず!!
人は生まれながらにして平等ではない。
私、前川劫は思う。何故人を殺していけないのだろうか?
人は生まれながらにして平等であるなら他人との差を埋めるため手段に殺人が無い事に疑問を覚えた。
否、殺人だけでなく強奪、暴力でも良い。それらを禁じる『ルール』というものがある限り平等は保障されない。
即ち私がスキルに目覚めるのは必然なのだ。
人を殺める為だけに必要とするスキル。
私は自身を正しいと信じているからこそスキルに目覚めたのだ。
テロリスト事件を聞いたときは震え上がった。
犯罪者が殺害されたと聞いたときは興奮を隠せなかった。
ならば私がする事は唯一つ。生き残りを始末する。
私はスキル持ちであるクラスメイトの女を脅し、八田蒼也を釣り出した。
後は警察と共に再びテロリスト殺害者を誘い出す。
これで私はこの事件の勝利者となるのだ。
故にこの結果はとても残念である。
やはり犯罪者から逃げたテロリストなど所詮この程度だったか。
警察を待つ時間、観覧車からこの景色を楽しもう。
私は外の景色を再び見た。
目を疑う。
「遺体が、いないだと!?」
☆ ☆ ☆
数分前。
「あー、危なかった!。あの陰険野郎、調子に乗りやがって!!」
蒼也は遊園地の入口付近、少女に声を掛けられ、建物の陰へと引っ張られる。
「うん、お兄ちゃんのお知り合いさんみたいだね。ちょっと痛いけど我慢してね」
「んっ!? なんだお前は。俺は今忙し......!?」
蒼也は目を見開く。
「これはっ!? 俺が、いる」
「ちょっと難しいけどがんばって! 動いている自分をイメージしてね」
蒼也は訳がわからなかった。確かに目の前にはもう一人の自分がいる。
言われた通りにイメージをしてみた。
「動いて、いるのか」
「ちょっと不思議な感じだよね、ラジコンで自分を操作するイメージみたいかな?」
少女は楽しそうに指を動かした。
よく見ると少女はターゲットと共に居る同級生そのものである。
「お前は何者だ? 敵ではない事はわかるが」
「そうだよー、お兄ちゃんわかる? 芥川翡翠の妹!!」
「翡翠に妹がいたのか......」
「あれれー。お兄ちゃん説明してなかったのかな」
まあいいやと妹を名乗る少女は握手を求めた。
「芥川紫苑だよ、お兄ちゃんとは異母兄妹。よろしくね!!」
蒼也は素直に握手に応じた。
「お兄ちゃんは心配性だから、蒼也さんの他に私を協力者として出したんだよー」
(なるほど......翡翠め、実質俺の監視役との両立役という事か)
密かに納得する蒼也を余所に紫苑は続ける。
「私のスキルは分身。髪の毛を元に対象の分身を出せる!! とはいってもさっき説明した通りに自分がイメージした通りの動きしかできないけどねー」
だから蒼也さんの分身は棒立ちしたままだよと彼女は指摘し蒼也は少し慌てる。
「大丈夫だよ、ターゲットなら私が上手く引き付けているからー」
「お前は離れた位置に居ても状況がわかるのか?」
「うん! 今私は脅されて蒼也さんを引き寄せる様に言われてる、ターゲットには探知系の能力って嘘吐いてるから!!」
「なるほどな......」
つまりは脅したはずの同級生もスパイとして忍ばせていたのか。
抜け目が無いにもほどがある、さすがと言うべきか。
蒼也自身も、分身の視界が脳裏に浮かび始めてきた。
「あ! 私死んだ!!」
「なに!?」
蒼也と少し離れた分身は観覧車を見た。そこには射殺された紫苑の姿があった。
「あいつ......!! 分身じゃなかったら人殺しだぞ!?」
惨劇を見て飛び出そうとする蒼也を紫苑は止めた。
「落ち着いて!!今ここで動いたら敵の思うつぼだよ!!」
「だからとはいえ......!!」
「ここで私の能力を活かすんだよ! 蒼也さんならどうするか、分身にイメージさせてみて!!」
蒼也は対象を睨む様にイメージさせる。
観覧車内のターゲットはニヤニヤと分身を見返した。
そしてターゲットは弾丸を発射した。
「弾けッ!!」
蒼也の思惑通りに分身は弾丸を刀で弾いた。
「すごいすごい!! 本体でもできる動きだからこその業だね!!」
「しかしイメージだとやはり反応が少し遅れるか......」
「ッ!? 従業員が……!!」
「野郎……!! なんて奴だ……」
射殺される従業員を見て蒼也は拳を握り絞める。
ここまで平気な表情であった紫苑も声を震わせながらも「お兄ちゃんのため」と復唱していた。
「翡翠の事が好きなのか?」
分身に手榴弾を避けさせながらも器用に蒼也は質問をした。
「うん。私を守ってくれた大切な人。お兄ちゃんのためなら私、がんばるよ」
「そうか、なら頼みがあるがいいか? 逃げ出す観客を利用して試したい事がある」
こうして今に至る。
☆ ☆ ☆
「くそ、この女!! 私を騙したのか」
紫苑の遺体の消滅を前川は確認した。既に血すらなかった。
「いまだ!!」
紫苑は一斉に能力を発動する。前川から見ると、遊園地内を縦横無尽に走り回る蒼也が見えた。
それも複数で。
「くそがあああああ!!! めんどくせええええ!!」
グレネードランチャーを使い、園内を吹き飛ばす勢いで猛撃する前川。
爆風と炎が園内を包み込む。
しかし、
「本性を表したなゲーマー!!」
「ッ!!?」
観覧車を超速度で駆け上がる蒼也が窓の外へ姿を見せた。
一瞬意識が追いつかなかった前川は蒼也が距離を詰めるのを許してしまう。
「園内に意識を向けさせる陽動に嵌った。それがお前の敗因だ!!」
「ぐわあああああああ!!!!!!」
蒼也は観覧車ごと前川の腕を斬りつけた。
「ゲームセット。観覧車が下るまでもなく裁きが下ったな、プレイヤー」
芥川翡翠のスキル解説コーナー①
名前:人間失格
ランク:☆☆☆☆☆
能力:投擲物が必ず命中する。
①命中する対象は人に限らない。地面や壁などでも可能。
②命中した物がいかなる玩具であろうと、実物としての威力、性能を発揮する。
③やがて玩具は、命中する以前から実物と並ぶ物となる。これは能力者本人の成長によるスキルの進化である。
翡翠コメント:凄腕ゲーマーがスキルを手にしたら。まさにそんな彼にとっては夢のようなスキルだったろうね。スポーツ面でもプロになれる未来が多いであろうそのスキルを殺戮として使用する彼の最も恐ろしい所はその精神面だ。と蒼也さんは言っていたよ。
芥川翡翠のスキル解説コーナー②
名前:命名・分身の術
ランク:☆☆☆★★~☆☆☆☆☆
能力:対象の髪の毛により対象のイメージで動く分身体を創り出す。
①分身体は全部で5体まで展開できる。(対象は関係なく全体での数)
②分身は遺体になろうとも解除するまで残る。
③分身体は対象のスキルを使用できる。
④対象の分身体は対象にしか操作できない。
⑤分身と本体は感覚を共有できる(触覚、味覚、嗅覚は除く)。
翡翠コメント:朱里さん情報での精神面、スキル面共に恐ろしい彼を倒すために僕は紫苑を蒼也さんの下へ派遣した訳になるね。相変わらず緊張感はなさそうには見えるけど本当に無茶をさせてしまった。
しかしそれほどまで便利だからね、紫苑のスキルは。
分身とはいえ死ぬ経験をしたと怒る彼女を宥めるために後日一緒に遊園地へいったのだけどもその話はまたどこかでするとしよう。




