1/1
はじまりのはなし
運命とは残酷なものだ。
なぜかだって?
では状況を説明しよう。
俺、水平 卓冬は年越しを目の前にして、年越し蕎麦を用意していなかった。
そのために近くのコンビニまでひとっ走りしたわけだが、ちょうどコンビニの前で居眠り運転をしていたトラックが俺めがけて突っ込んできている、まあそんな状況だ。
回避は無理だろう。
え? どうしてそんな状況なのにこうも冷静に語っていられるのかっだって?
だってよく分からんが、時間が止まっているからだ。
時間が止まっているというか、空間が固まったと言い換えた方が正しいのだろうか。
「見つけました」
固まった景色の中に空間を切り取ったような真っ暗な穴の中から、透き通るような白い肌に、銀色の髪の少女が現れた。
いよいよ死神の登場だな。
まあこんな可愛い死神なら喜んで魂をやってもいいが。
「私たちを、お救い下さい」
少女は涙を流しながら俺の冷たくひえた手を掴んだ。
「我が君主様!!」
そして時は再び動き出す。
冬のボーナスで買った腕時計はちょうど午前零時をさしていた。