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音無VS風化

「邪魔するんじゃないよ!」


 風を纏わせた短剣を構える風化が怒鳴る。それに比して冷静な音無は、


「風の民がこんなところでなにをしている?」


 と詰問した。そこには常人には言い返せぬほどの迫力が滲み出ている。その間にも両者の短剣と金属管は交差し、何度も打ち合っては立ち位置を変えた。


 音無の下段蹴りが風化の脛を刈る。行動着の具足は当たれば脛を破壊する強度があるはずだ。

 それを風を纏った威力で飛び退いた風化は、目線の高さに風刃を放つ。


 しゃがんで避けようとした音無が、突如真横に跳んだ。それを見た風化は舌打ち一つ、油断なく短剣を構えながら、周囲の状況を探る。


 一つ目の風刃の後に、小さな隠し風刃を仕込んでいたのだ。あのまましゃがんで避けたら、その小さな刃がまともに斬っていたに違いない。


 音無は金属管から周囲に呪煙を放っていた。それは薄すぎて見えず嗅げずの無害な煙だったが、その範囲内に有る物を触っているように知覚できる、便利な機能が備わっていた。

 更にもう一つの機能、それはーー


「うぐっ、な、何をした?」


 やられていく味方と山岳民との位置関係を見て、少しづつ場所を移動しながら、様子を見ていた風化が、急に苦しみだす。最初は顔が赤くなり、ついで紫のまだら模様になってきた。


「お前達の部族が毒を使うように、我らは呪術を使う。風に乗る呪いもある」


 金属管に込めた呪力を操りながら、逃げる風化を効果範囲外に逃さぬよう一定の距離を置いて付きまとう。


 音無の操る〝空殺〟呪術は、空気中の成分を人間が取り込めないように、呪煙を一部変質させたものだった。


 そこへ風の民の残存兵力が結集して、空から襲いかかる。毒手槍を投擲しながら、体ごと音無に襲いかかり、それに対応したせいで、空殺の呪煙から逃れた風化が、


「カハァーッ、カハッ、ゴホゴホ」


 とむせながら片膝をついた。そこへ駆け寄った一人が、


「風化様、お逃げください! ご武運を!」


 と抱えると、信じられない事に集めた風を肩に集約して、風化を投げ飛ばした。

 俺がしっかり狙って黒矢を放つと、手前にいた風の民が、身体を盾に風化を守る。黒子汁が全身に回り、体を黒く干からびさせながら、のたうち苦しんだその男は、絶叫に顔を歪めつつ、湿地に半ば埋まりながら絶命した。


 投げられた風化は、風に乗って遠くまで跳躍すると、そのまま風を纏って走り去っていった。放った男は満足気な笑顔で振り向くと、激しく抵抗して、全身に矢を受け、手槍で何度も刺されながら、最後まで戦い抜いて死んだ。


「敵ながらあっぱれ」


 と賞賛するセキを見ながら、


 怖えなぁ、やっぱり痛い目にあって死ぬのは嫌だなぁ、このままバックレちゃおうかなぁ……と思っていると、


 〝それも有りだね、もっともこの世界でこれ以上友好関係を持てる部族がいるかどうか? 一人で生き抜く自信、有る?〟


 ない! 即答で返す俺は、サバ姉の深いため息を聞いた気がした。

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