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襲撃激化

 その投げ槍を左手で収納すると、お返しとばかりに切っ先を返して具現化する。ドウッ と手応えとともに体の中心を貫き、目の前の男は口をパクパクさせながら、毒による激痛に苦しみ絶命した。


 俺は恐怖のあまり震えながら呆然と立ち尽くすが、


 〝次来るよ!〟


 というサバ姉の怒声に、ハッと前を見る。そこには地を駆ける沼狼と、風を纏って跳躍する風の民が、毒手槍を振りかぶって迫っていた。


 〝生命の危機を感知しました、雷撃(4)を発動します〟


 久しぶりの指輪のアナウンスで、左手から空間を埋め尽くすような大雷撃が発生すると、目の前の敵全体に稲妻が走る。


 正に一網打尽! カッと光ったかと思うと、風の民は弛緩してそのまま落下し、沼狼も絶縁しきれずに体の芯から焦げた臭いを発して倒れこむ。


 真横を見ると、雪魔獣の盾を集めてドーム状の避難場所を作り、ヒナちゃんを中心に接子達が防御を固めていた。

 くそっ、客人たる迷い人の扱い酷くない? そこに手槍を投じる風の民には、遊撃部隊の音無が容赦なく呪術をもって撃退していた。


 ふっと目線を感じて振り向くと、立ち枯れたシユロの樹上に、先ほど風刃を唱えてきた女が立っている。


「我は風の民の族長風化(ふうか)、お前の魔法は反射しているだけだな、いや他にも力を隠し持っているのか? どちらにせよお前が迷い人で間違いなさそうだ」


 と話しかけられて、思わず、


「えっ? 何故それを?」


 と言ってしまってから後悔した。サバ姉も、


 〝なに反応してるのよ! そうですって言ってるようなものじゃない、あんなの分かりやすい引っ掛けでしょ?〟


 と怒鳴りつけながらも最大限の警戒を発揮し、右手のナイフを熱くし始めた。貯蔵魔力を出し惜しみしている場合はじゃないって事か。


 風化と言った女は、暗い笑顔でこちらを見ると、無音のまま姿を消してしまった。あれか? 速すぎて見えないっていうやつか?


 一先ず左手に黒矢を装填した十字弓を具現化して、物音一つ立てない風化を探った。傍目に見る戦局は、山岳民が有利そうだ。何せ風の民の人数は、1回目の襲撃よりも減っているくらいだから。


 雷魚竜がミルの一撃で仕留められると、沼狼達も魔獣盾に泥弾を封じられて、各個仕留められていく。


 少数民族とはいえ、あまりにも少な過ぎないか? といぶかしむ余裕もなく、サバ姉の、


 〝そこっ!〟


 という言葉に合わせて矢を放つ。だが空を穿つのみで瞬足の風化を捉える事ができない。逆に発射後に十字弓を収納するのを読まれて、突如目の前に現れた風化の刃を、ほとんどサバ姉の魔力でもって受けると、反対の拳で腹を殴られた。勢いのついた一撃が完璧にみぞおちを捉える。

 

 一瞬息が出来なくて体をくの字に曲げたその首を、風化の短剣が刈り取ろうとする。その軌道に金属管を合わせた音無が絡め取るように管を捻ると、それを嫌った風化が飛び退いた。

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