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風化襲撃

 サバ姉の切っ先に敏感に反応して、不意に突進を止める女。こいつ中々鋭いな! 身のこなしもキレがあって、迷いがない。

 その間に魔力を溜め込んだままのサバ姉を油断なく引き寄せる。周囲はまだ戦闘の最中で、こちらに構っている余裕はなさそうだった。


 目の端にセキが起き上がるのが見えるが、目の前の女に集中しないと、先ほどの素早い動きはすぐに見失いそうである。


 そんな緊張感の中、女が不意に短剣を素振りした。


 〝指輪を!〟


 サバ姉の声に咄嗟に左手を突き出すと、目に見えぬ何かが指輪に収納される。意識の端には*魔法【風刃】が加わっていた。


 それを見た女の目が見開かれる。さらに俺が指輪の風刃を発動すると、女は新たな風刃で打ち消しながら、大きく距離を取るように飛び退いた。流石は自分の魔法、俺には感知できなかったが、気配の薄い攻撃を察知する能力もあるようだ。


 不意をついて、後ろから突進したセキの刃が、女を捉えたと思った瞬間、搔き消えるように姿をくらませると、


「ビイイイィッ!」


 と風切り音が湿地帯を駆け抜けた。それに応じた敵の集団は、傷付いた仲間を残して、即時撤退していく。

 余りにも素早い撤退行動、ぬかるむ斜面も軽快に走り抜けていく。彼らの服のはためきをみると、どうやら風の支援を受けているようだ。


 音無と接子に仕留められた敵が三名、地面に転がっているが、皆殺されるか、負傷者は自らの手で自害していた。


 周囲を探っていた音無が、


「どうやら完全に撤退したようね、かなりの範囲を感知したけど、奴らの気配はかすりもしなかったわ。今頃は草原地帯付近の、沼狼の縄張りってところかな」


 と魅惑的な尻を傾けて話す。そう言われた俺は、つい最近苦戦させられた沼狼の群れを思い出した。案の定、遠くの方で泥弾を連射する大群の音が響く。


「どうしましょうか? 追撃しますか? 山岳付近の湿地帯は不可侵領土、奴らを殺してもなんら非はありません」


 セキの質問に、音無は首を振って、


「明らかに戦力不足だし、我々の目的はナナシの指輪の力の検証と偵察。ここに転がる死体を回収して、早く集落に戻りましょう。襲ってきたのは風の少数民族の長である風化……草原に何があったか、探る必要がある」


 と言って、ミルに敷布を用意させ、損傷の少ない一体の死体を包むと、それを縛って担がせる。他の者は持ち物だけをあらためると、湿地の中に放置した。


 早速大量の毒貝が群がり、死肉を争って排水管からしぶきを上げて威嚇しあっている。貝に少しづつ齧られる人間を見るのは気持ちの良いものでは無く、血に染まる湿地帯を足早に抜け出した。


 それにすぐ移動しないと、死体に群がる毒貝を狙う雷魚竜が来るかもしれない。重い荷物を背負ったミルを真ん中に、陣形を再編成した俺たちは、音無を先頭に、集落へと引き返していった。

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