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昔話

「その当時、この地において迷い人様の統治が落ち着いた頃の事じゃ、ウム。様々な奇跡をお示しになり、その威力を知った民の内、才能の有る者が選ばれて、呪術を学ぶ事になったのじゃ、ウムウム。ただの流浪民にとって、迷い人様の呪術の力が学べるなど、考えてもみなかった事じゃからのう、ウムウム」


 ウムウムが多くてしんどいから、聞いた話を省略すると、そこで一番の成績を収めた少女が初代占婆となり、今で32代目にあたるらしい。超老舗女将って感じか?


 その頃は岩場周辺の方が強い魔獣が多く、自然発生的な死告獣達が群雄割拠、人間は隠れるように洞窟に潜んで暮らしていたという。


 だが危険な岩場に居を構える必要があった。それは洞窟に合った独自の食物生産方法を、先代迷い人が伝授したからである。洞窟に生える岩茸やぬめり虫などの昆虫は、ここの岩場に含まれる成分との相性が良く、安定生産できるこの場を離れるわけにはいかなくなっていた。


 だが、個人的な力で死告獣や魔獣を討伐していった先代迷い人にも、予想外の事態が発生する。それは、余りにも場に滞留する呪いの力が強すぎて、迷い人の扱う呪術との相乗効果で、岩場全体が黒呪の範囲呪術に犯され始めたのだ。


 そう、双子が黒呪をコントロールしようとして、集落が半分壊滅した事故と、同じ元凶である。


 その時初代占婆は、空中に放たれた先代迷い人の血が、見えない飛沫となって集落に拡散したのを感じ取ったという。それまでは誰も感知できなかった迷い人の呪術が、術理を収めた少女によって、初めて理解された瞬間でもあった。


 その一瞬で黒呪の範囲呪術は中和されたという。先代迷い人も、その術一発でかなり消耗したらしく、数日間寝込んだらしい。


「その逸話って、前にやったお試しの雫にもにてますね」


 ここまでの長話にこった首を回しながら聞くと、


「そうじゃ、あれは貴重な迷い人様の遺産、本来は危機に応じて解き放つものなんじゃ、ウムウム。あれでもかなり力を弱めたものらしいのう、ウムウム。それでもワシらの本気の呪術を軽く超越しておるわい、ヒッヒッヒッ」


 右手のジュリンを見ると、話の内容が分かるのか、珊瑚色の球がフルフルと揺れて見えた。これが弾けて黒呪を中和する……もしそれが本当ならば、今回の騒動に対する絶大な力となるだろう。


 だけど俺は先代迷い人とは違い、なんら呪術の素養がない。そんな人間の血が役に立つのだろうか?


 〝詳しくは探知できなかったけど、貴方とその指輪……ジュリン? それとの相性は抜群よ。流石は〝便利な指輪を使える〟能力者、異世界転移の力をその一点に集めただけの事はあるわ〟


 神器同士、何か共感するものでもあるのだろうか? そう言われた俺は、サバ姉の柄頭を撫でると、その指にハマるジュリンの球も撫でた。そうなるとどことなく左手の薬指も寂しそうに感じたので、左親指で撫でてやる。


 なんだ? この感じ。俺一人なのに三人の女に囲まれて、ご機嫌うかがいながら生きている感覚ーーそこでハッと気付いた、これが〝異世界転移ハーレム〟かっ!


 目から鱗の自分の発想に、急に悲しくなった俺は、せめて音無の魅力的な尻でも眺めたいと、強く思った。

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