分からんのじゃ
「で? この指輪で何ができるんですか?」
当然湧いて出た俺の問いに、
「はてのう? それが分からんのじゃ、ウムウム。何せこいつは封印されておったし、これに関する文献も特に無いしのう、ウムウム」
と、がっかりする返事を返す占婆、真顔で言われても困るわ。
「何か無いんですか? 次代の迷い人に宛てた手紙とか、こいつに関するものならなんでも良いんですが」
と右手の指輪を見ながら聞いても、占婆もリー師もヒョウ師も首を振るばかり。まぢかよ! じゃあ何でこいつを渡す気になったんだ?
〝音無の黒呪と頭無し黒犬、二つが同時に人の管理下にあるのが不味いって言ってたわね〟
そうだ、何がどう不味くて、俺は何故この力を得たのか? 何を期待されている? いまだに右手を検分している占婆達を見てから、音無を見ると、真剣な表情でこっちを凝視していた。
目と目が合うと力強いうなずきを受ける。お、おう。何か分からんが、俺もうなずき返した。
「こいつはお主の心臓と同調したんじゃのう、ウムウム、流石は迷い人様、よい血系呪魂じゃわい、ウムウム」
占婆が呪魂と呼んだ指輪略して〝ジュリン〟を惚れ惚れと見つめる。だが決して触れようとはしなかった。まるで危険物のように丁重に扱う。いや、危険物なのか?
「おそらくじゃが……こいつには先代の力の一部が封ぜられておる。そこらへんは検証していくしか無いが、決して軽々に試すで無いぞ、ウムウム。お主の心臓と同調したということは、お主の危機に合わせた力の発動になるかも知れんのう、ウムウム」
と言うと、ニヤリと厭らしい笑みを浮かべた。それを検証? って事は無理やりピンチの状態を作って、実験するつもりか?
見回す占婆とリー師、それにヒョウ師までが危ない笑みを浮かべている。おいおい、やめてくれよ。
〝もうこれ以上はノー! よ。流石に無理! 一旦帰してもらいなさい〟
サバ姉の言葉を受けなくとも、俺だって嫌だよ。詳しい事情は聞きたかったが、これ以上ここに居るのはお断りだ。
目に入る壁掛けの刃物やノコギリ、ペンチ類なんかが、急に迫力を増して見える。あの染みは、何かの動物の血じゃないか? それが人間のものじゃないという保証は無い。
必死になってアピールすると、たしかに無理はいかんという結論を得て解放された。占婆達は本気で残念がってたな、あの勢いだとバラバラに検分されてもおかしくない。超怖えぇ。
軽いトラウマを刻まれながら部屋に戻ると、音無とヘタちゃんも入ってきた。
あゝ、女子成分に癒されるなぁ。このまま一緒に寝ようか?
「さっきの話にも少し出たが、黒呪が重なる件で話がある。お前の指輪にも関連する事だ」
音無が告げると、ヘタちゃんも真剣な顔でうなずいた。やっぱりその話だよねぇ、俺は一度ゴロンと寝転がると、う〜〜ん! と手足を伸ばしてから、開放感を味わった後で、
「まあ座ってよ」
と言ってあぐらをかいた。




