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迷い人の遺産

「ウムウム、すまないねぇ、色々試したり、目隠しをしたり、ウムウム。それもこれも〝これ〟の力が余りにも大きすぎるからなんじゃ、ウムウム」


 そう言って占婆が目の前に置いたのは、手の中にスッポリ収まるほどの小さな箱だった。


「迷い人様の小さくて大きな遺産だのう、ウムウム。これは誰にも扱いきれなんだわ、ウム、余りにも強すぎて、もしお前さんがこれを使いこなせても、狂ってしまわんかと懸念したんじゃがのう、ウムウム」


 と言うと、スッと箱を差し出してきた。開けろって事なのか?


「事ここにいたっては、そうも言ってられんからのう、ウムウム。そこに小さな封がしてあるじゃろう?」


 見ると箱にある継ぎ目に、小さな封印が張り付いていた。


「それは迷い人様直々に施した封印でのう、ウムウム。先ほどの試験を数倍、いや数十倍にも強烈にした試しの術が施されておるんじゃ、ウムウム。資格の無い者が触れると、ショック死を起こす事もある。ウム」


 カンテラに照らされる老婆に、真顔で脅されると怖いな。


「でも俺は試験に合格したんですよね?」


 と問うと、一つ頷いてみせた占婆が、


「正直あれに合格した者は二人目じゃ、ウム。じゃがこれを開けた者はおらんのう、ウムウム。前回の挑戦者は開けようとした手が、いかれてしもうた」


 と、占婆は長袖に隠れた右手を差し出した。見ると人差し指が親指と融着して、長い親指のように変形している。それを見て驚く俺を見て、ケッケッケッ、と品の無い笑いをあげると、


「心配するな、ウム。ワシの失敗から更に検査法を改めたんじゃ、ウムウム。血を抜いて調べたじゃろう? 大丈夫、お前さんは完全なる適合者じゃよ。やはり迷い人同士、何か繋がりがあるんじゃろうのう、ウムウム。直系子孫のワシでも無理じゃったからのう、ウムウム」


 二パッと笑う、歯の無い口が余計に怖いが、大丈夫というならば、やってみるしかあるまい。


 〝気をつけて、さっきの力も私の探知能力に引っかからなかった。私達には計り知れないものが眠っているかも知れないわよ〟


 サバ姉の忠告に生唾が湧く。分かってるよ、でもやるしかない。


 俺は赤い封印に指をかけると、剥がそうと爪を立てた。瞬間、電流が全身を駆け巡ると、鼻の奥で熱いものが弾け、真っ赤な火花が散った。

 更にそれがもう一発弾けると、自分の脳みその形を認識する。


 強烈な火花に焦点はボヤけ、刺激の先には口を開けた小さな箱が見えた。焦点を合わせていくと、その中に小さな物が固定されていると分かる。


 何だろう? よく見ると円環の下部が台座に埋まっている。指輪か? その頂点には、鈍く光を反射するーー石?


 何の石だろう? と目を近づけると、それは〝プルン〟と揺れた。

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