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ガチムチ漢連に囲まれて

 いつもの汗臭い修練場に向かうと、そこには先客が居た。俺が薬を飲ませて命を取り留めたセキと、音無に惚れているらしきミル、それに似た体格の男達がゾロゾロと総勢で……


「俺を含めて十名になる、接子のなかでも若手の部類だ」


 最前列で腕組みをするナナが説明した。うん、皆面がまえこそ立派だけど、肌ツヤや雰囲気がどことなく若さを滲ませている。各々素手の者もいれば、長短様々な棒や、十字弓などの凝った構造の武器を持つ者もいて、一種異様な雰囲気をかもし出しているな。


「それで、何を?」


 と武器を指さして聞くと、


「今までやってきた接子としての基本を確かめる、そしてお前の覚悟を見極めさせてもらう」


 おおう、いわば試験みたいな感じかな? 確かにこの十日、無手による組手の他に、槍術や剣術、弓術などを徹底的に仕込まれてきた。まあほぼサンドバッグ状態で、体に覚えさせられた感じだけど。


 実戦的な技術を教わるには受けなどの基本を知らなくてはならない、それには体で技を受けて覚えるのが一番手っ取り早い。それがこの集落の、接子の教えらしい。だがこうも短い間に詰め込まれても、何かを習得した気にならないんだけど……


「よう、こいつのしごきによく耐えたな」


 と一歩前に出てきたのはセキ、もうすっかり傷も癒えたようだ。


「我ら接子が相手取るのはおおかた魔獣のたぐいだ、その戦いは激しく厳しい。今までの修練は、戦うに際しての覚悟をつけるためのものだと思ってくれ。そして今日仕上げの儀式を行う」


 と言うと、短い棒を一本こちらに放ってきた。思わず受け取ると、目の前には同じような棒を持つセキが、戦闘態勢をとっている。


「十人組手だ、いざ!」


 やっぱり? そんな予感はしてたんだ〜、と考える余裕もなく、俺も棒をいつでも突き出せるように構えると、筋肉の塊のようなセキと対峙した。


 ゆったりとしているが、いつでも初動を起こせるような見事な構え。それに対して俺は窮屈に力を溜め込んで、どんな攻撃が来てもすぐに合わせられるように気を張るしかなかった。


「シュッシュッ」


 と口から息を吐きながら右に左に揺れるセキ。その呼吸がいきなり変調したと思うと、視界から消えた。次の瞬間、衝撃と共に天地がひっくり返り、思わず手をつく。ギュッと喉元に押し付けられる木の棒、これが短剣だったら一巻の終わりだ。


 間近に見るセキの目が血走っていて怖い。足もジンジンと痺れているから、足を刈られたという事か? フッと身を引かれて解放されると、咳き込みながら立ち上がる。すると今度は打ち込んで来いよ、とばかりに手のひらで誘い込まれた。


 くそっ、俺だってサバ姉を主武器としているんだ、馬鹿にするなよ、とフェンシングのように棒を構えて突き込んでいった。だが簡単に受け流されると、腕を引き込まれて投げ打たれ、またもや首元に棒を押し当てられる。


 その後もうちかかってはいなされ、何度も何度も仮想の死を経験した。しばらくすると、後方から鐘の音が響き、倒れこむ俺にセキが手を差し出す。


「頑張れよ」


 という言葉を残して。これで一人目は終わりなのか? 次の対戦者らしい男が、今度は背丈ほどの棒を放ってきた。一人目の相手でもフラフラなのに、あと九人か〜、キッツ〜! と思いながら受け取ると棒を構える。すぐに打ち込んでくる男に、何だかちょっとだけイラッとしてきた。だって薄ら笑いを浮かべてるんだもの。


 何とか一矢報いてやる! その思いだけで男の振るう棒を見極め、反撃の隙をうかがった。

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