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サバ姉

 〝はい、サッサとモンスターを収納する!〟


 俺は怒られていた、サバイバル・ナイフに。


 血まみれの全裸の男が、ナイフ一丁片手に持っているだけでも、空恐ろしい話なのに、そいつはナイフに怒られているのである。


 俺は狂ってしまったのだろうか? と苦悩しかけると、手元がブルブルッと震えて、


 〝早くしないと他のモンスターが寄ってくるよ!〟


 と怒鳴られた。それは音にならない怒声。イヤホンのように頭に直接響いて、周囲には聞こえない(であろう)言葉だった。


 俺は恐る恐る、地面に横たわる緑獅子(勝手に命名)をつつくと、反応が無い事を確認して、指輪をはめた左手で触れる。


 すると、次の瞬間には跡形も無く消えた。


 頭の中の表示には、


 *死骸


 という項目が有り、それを意識すると、


南風獅子はえじし


 とある。緑獅子と近かったな、惜しい。と一人残念がっていると、


 〝あそこの蟻塚ありづかまでダッシュ! しないと死ぬよ〟


 とサバイバル・ナイフのお姉さんが新たなミッションを与えて来た。


 ここに来て気づく、このナイフは、生存をサポートしてくれる、本当の意味でのサバイバル・ナイフらしいと。


 〝早くダッシュ! そう、私はあなたを生き延びさせるために現れた、救世主よ。ありがたいと思ったら、早くダーッシュ!〟


 キレ気味のサバイバル・ナイフ姉さん、略してサバねえがこれ以上キレないように、ダッシュする。


 すると、思っていた以上に体のキレが良く、あっという間に小高い丘のような、蟻塚に辿り着いた。不思議に思っていると、サバ姉が、


 〝どう? 南風獅子を倒したあなたは、相当レベルが上がってるから、身体能力も上がってるでしょ?〟


 と得意げに話してくれた。やはり有るんですね? レベルとか、じゃあステータスも?


 〝有るわよ、見れないけどね?〟


 おおう、そうなんだ。隠しステータス仕様なのね? 数値化できないのを残念がっていると、


 〝この蟻塚は、日が昇りきるまでは他のモンスターが寄ってこないけど、少しでも穴の中に日が射したら、中から巨大バネあぎと蟻が五万と出てくるから、サッサと指輪の中身を再確認なさい〟


 とさとされた。俺は不明アイテムの代表である*薬を出しては入れし、新たに吸収した南風獅子の魔法を確認すると、


 *薬には【強靭、病気治癒1/2、傷治癒、怪力、言語】


 そして、


 *魔法には【南風】


 とある。他は何となく理解できるが、言語と南風はサッパリだな、と思っていると。


 〝次の工程いくよ! 先ずは南風獅子の解体、そして加工。早くしないと一番上の欄が死骸で確定しちゃうよ! そうなると、それ以降死骸しか入れられないから、早くしな!〟


 とまたも脅された。五つしかない貴重な項目の一つが死骸だなんて……まっぴらごめんだ。


 俺は手のひらから南風獅子を出すと、デロンと力なく転がった南風獅子を前に、サバ姉を構えた。


 〝解体するぞ〜っ!〟


 サバ姉の声に、何も言わずにいると、


 〝アホウ! サッサと復唱せんかい! いくぞーっ!〟


「いくぞ〜っ」


 〝もっと大きい声で! いくぞ〜っ!〟


「いくぞ〜っ!」


 〝解体するぞ〜っ!〟


「解体するぞ〜っ!」


 大草原に俺の声が響くと、満足したのか、サバ姉の解体教室が始まった……何だこれ?

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