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逆ナン

 今日は疲れただろうから他の話は明日、と音無が告げると、セキが改めて深々と頭を下げて、


「この恩義はいずれまた」


 などと古風な事を言いだした。


「いやいや、気にしないでね、したくてした事だから」


 と手を振ると、かえって恐縮されてしまった。皆も挨拶をして引き返そうとする。その最後尾に立つギョロ見男ことミルに、


「あの件は今度ゆっくりと聞いといてやるからな」


 と言って肩を叩くと、


「う、うるさい! っす」


 とその手を払われた。あらやだ嫌われちゃった? 若者の気変りの早さにはついていけないわ。


 〝あんただって若者なんだからね? っていうか、いらない事言って敵をつくるんじゃないわよ〟


 いやいやいや、どっちかっていうと、味方を作ろうとしたんだけど? まあ、あんまり上手くはいってないけどさ。チェッ。


「あ、それから」


 皆が出ていった扉を開けて、音無が戻ってくると、俺の側までやって来た彼女は、息のかかりそうな距離で、


「明日迎えをよこすから、早朝に待ち合わせよう。早く寝ておくんだな」


 と言い残して、立ち去っていった。え? これって逆ナン? どうしようドキドキする。


 〝はっ! あれはそんなたまじゃないよ。本当に逆ナンパなら、素っ首落とされないように気をつけな〟


 なんだよ? 俺だってまともにそんな事考えちゃいないけどさ。この世界に来て唯一出会った妙齢の女性なんだもの、少しくらい浮ついてもしょうがないでしょ? それにしても他に女はおらんのかな?


 〝いや、隠すでしょ。訳の分からない男が、いきなり異世界なんて訳の分からない所から来たら〟


 ええ? 俺って警戒されてるわけ?


 〝当たり前よ。この部屋もキッチリ監視されてるしね、最初みたいに変な操作されたり、薬を盛られないだけマシなほうよ〟


 え? 俺って操作されてたの? いつの間に?


 〝最初に占婆と話した時よ。その場には居なかったけど、状況がそれを物語ってるわ。いくらあなたが馬鹿でも、見ず知らずの人間に、指輪の事までベラベラしゃべる?〟


 いや、さすがの俺でも、警戒して喋らないでおこうとするだろう。でも集落の者にはすでに、俺の能力の全てがバレている。占婆の術にかかったと考えれば、全てがしっくりとおさまるな……


 〝だから不審な行動は慎みなさい、人気の無い所で、意味もなく十字弓を構えて悦に入るとか〟


 ばっ、あれはほれ、練習だよ練習。昼間みたいに狙いがそれないように、スムーズな具現化からの照準を練習しないとさ……


 〝はいはい、明日も早いから、練習もそこそこにして寝なさい〟


 何だよ? そのぞんざいな物言い、お母さんかよ。


 脳内会話の悪い所は、とめどなくラリーが続いて、終わらないところだな。あ〜もうこのまんまじゃ眠れないなぁ……なんて考えている内に、まぶたが重くなった俺は、アッサリと夢の世界へ旅立って行った。

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