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新武装

 〝なんだい? そのヒャッハーってのは?〟


 サバ姉の質問に、ムキムキマッチョな革ジャン野郎が、モヒカン軍団を率いるという、俺のイメージを強く念じると、


 〝うぇ、そんなの本当に居るのかい? 勝手に妄想してると、足元すくわれるよ〟


 あくまで生存に真面目なサバ姉らしいツッコミを返された。まあ俺もそんな妄想ドストライクな奴が居るとは思って無いけどさ。連想ってあるじゃない?


「シンの事は置いといて、まず配慮すべきはこれから向かう腐肉鳥の討伐の件だ。我らの手際をよく見て、後から接子としてやってもらうからね。二人のやり方をしっかり学んでくれ」


 黙り込んでサバ姉とやり取りをしていると、音無が注意してくる。なんだか身の回りの女性は強いのばかりだな。まあ頼りない優柔不断男としては、頼もしい限りだけど。


「はい、よろしくお願いします」


 と音無の後ろに控える接子の二人を見ると、返事もしないし、こちらを見もしない。黙って下を向く男は、ナイフで干し肉らしきものを削り食べる事に集中していて、もう一人は目をつぶって、腕を組んで仮眠している。


 まあ後ろに控えるジロ見男よりは、普通に接してくれる方だと思う、いや思いたい。


 〝あまりヘコヘコするな、軽く見られるのも生存率を落とす原因になるよ〟


 まあそうだな、ナメられても別に良いというほど、生ぬるい環境ではない。どちらかというと、黙っていても好感を持たれるように、悪印象を持たれているとしたら、逆転していかないといけない。


 個対集団なのだ、利用されるだけ利用されて、ボロ雑巾のように使い捨てされるのだけは、避けないといけない。ならばそういった細やかな配慮こそが、明日の我が身を助けるかも知れない。


 〝分かってるじゃない、さあもうすぐ出発するだろうから、今の内にかじかんだ手足を温めときな〟


 おお、そんなすぐに出発するのか? ならば……と手を擦り息を吹きかけた。話では小休止は行程の半分の地点でする予定だったから、もう半分ほどこの岩棚を進む事になる。


 死告鳥を倒して、大幅にレベルアップしていて助かった。そうでなければ、これほど過酷な道行に耐えられたかどうか? 怪しいところだ。


 〝そうだ、お前は既にある一定レベルの身体能力を得たと言える。だが決定的に足りていないのが……〟


 実戦経験、だろ?


 〝そうだ、これまでの行き当たりばったりなやり方じゃ、命がいくつあっても足りない。そのためにも、この部族の戦い方や、借りたその武器に習熟する必要がある〟


 そうだな、気前良く貸し出された武器は、指輪の*武器に収納してある。再度指輪を確認すると、



 *食料【リンゴ、五穀米、柿、シユロ(10)、シユロ(6)】

 *魔法【雷撃】

 *武器【南風鞭はえべん+、死告嘴しこくし、十字弓(術矢装填済)、術矢(9)】

 *薬【病気治癒1/2、傷治癒、怪力、シユロ灰汁あく(4)】


 十字弓、いわゆるクロスボウと呼ばれるような、機械式の弓矢だな。もつとずっしりと重い木の台座に、魔獣の骨弓が幾重にも重ねられていて、相当な威力だった。

 それに装填された術矢というものは、山岳民族が得意とする封印術を応用したやじりらしい。


 つまりはこの部族の最新兵器ともいえる逸品である。こんなどこの馬の骨とも分からぬ奴に、おいそれと貸し出して良いものではない。周囲の男たちの反応の冷たさも、そこらへん由来だとしてもおかしくない。


 〝それだけ期待されているって事さ。どうやら彼らには余裕がない事情がありそうだしね〟


 サバ姉の言う通り、俺も薄々感じてはいるのだ、彼らの性急さに。だがその事情とやらに巻き込まれて死ぬ気は無い。


 〝そうだ。だから利用されるふりをしても、気を許すな。そして得るものを得て利用してやれ。指輪の便利機能を活かした弓矢術も早く習得するんだよ〟


 分かってる、それにこれもな。と*武器の中でも異彩を放つ死告嘴しこくしを意識する。そこにあった(呪)というマークは、先に一定時間具現化した事で、消滅させていた。


 〝ああ、切り札は大事にとっておきなさい。南風の魔法の時のように、間抜けなタイミングで使用するんじゃないよ〟


 というサバ姉のお小言をちょうだいしていると、音無に突かれた。そろそろ出発するらしく、皆が準備を始めている。


 俺も水筒などを鞄にしまうと、順番を待ってテントの外に出た。

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