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岩棚にて

 何故こうなる?


 って状況、誰しも経験があると思う。今の俺が正しくそれだ。何これ?


 〝うるさいね、私とババアの取り決めで決まったのさ、あんたみたいな馬鹿はすぐ死ぬからね。まずは修行だよ、修行〟


 あらやだ、サバ姉の口調がどんどん劣化していく。中の人、やさぐれないでおくれ。


 〝うるさい、中の人なんて居ないわよ〟


 というあからさまな嘘は放っておいて、修行って普通、修練場とかで組手したりするんじゃないの? なんで物々しく厳つい男どもに囲まれながら、集落外の岩棚を這いつくばっているんだろうか?


 まあ目の前には音無のお尻があるから、エロパワーで何とかすがりついているが、手足を滑らせたら、何の突起物もない岩肌を延々転がって……あの豆粒のような木に激突するのは、嫌だなぁ。


 〝お前さんが何をするか、もう充分説明したでしょ?〟


 うん、そのための得物も指輪に収納したし、まあ話は分かってるよ? 腐肉鳥の巣の定期掃討について行くんでしょ?


 〝これからやる狩りの旅に必要な事物で、一番大切なのは何?〟


 それは……強くなる事、かな?


 〝強くなったら生き延びられるのかい? それは自惚れってもんだろう。お前自身の力なんて、たかが知れてるよ〟


 ハッキリ言うねえ、確かに化け物揃いであろうこの世界で、個対個でも綱渡りだったやつらが、群れとなる状況。以前に見たバネ顎蟻、あれが五万と出現する中で、個人の強さなんて通用する気がしないな。となると……一番大事なことって何だろう?


 〝それはね、この部族との繋がりだよ。信用とも言い換えられるわね。まがりなりにも、この地で生き延びてきた奴らだからね、学ぶ事は多いはずさ。まあお互いに利用し合う関係での繋がりだから、仲間だなんて思い込まない方が良いけど〟


 うわあ、ドライだなぁ。サバ姉だけにさばけてるってか?


 〝…………〟


 ごめん、謝るよ。謝るから無視はやめて。心の中で頭をさげる俺に、何も言わないサバ姉。久しぶりに静かな中を、黙々と進む。


 目の前を歩くお尻に意識を戻して、ひたすら絶叫アトラクションのような道を行く。所々湿って苔も生えており、その恐怖感はアトラクションなどの比ではない。というか、風やめて! ビュウビュウと逆巻く髪が、目に入って痛い。


 突風を受けた体が浮きそうになった時、


「少し……するぞ! 縦列た……しろ」


 振り向いた音無が大声をあげるが、何を言っているのか全くわからない。俺は尻に集中していた素振りも見せずに、


「わー! かー! らー! ん!」


 と言ったが、伝わったのだろうか? 一つ頷かれると、先に進んでいった。おいおい、こんな風の中をまだ進むとか、命をかける意味が分からんぞ。


 と思っていると、先行する男達と、岩の隙間に金具を取り付け始め、荷物の中から大きな骨のついたテントを組み上げて、固定した。薄べったいあれが煽られたら、凧のように飛んでいきそうだなぁ。


 〝何のんびりしてるんだい? サッサと中に入りな、死ぬよ!〟


 腰元にしつらえた鞘の中で、サバ姉が震える。確かに、冷たい風にさらされ続けた手先は、感覚がなくなり、力が入らなくなっている。


 俺は風下に開いた入り口に進むと、睨みつける接子の男と、目が合わないようにしながら、中に入れてもらった。

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