表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/78

メッセージ♡

 気づくと草原の中に立つ俺。って誰? 分からん、何も分からん。


 素っ裸だから、身元を確認する術も無い。


 〜〜ビュウウゥ〜〜


 さぶっ、吹きすさぶ風が冷たい。股間に揺れるものがあるから、男だな。確認する左手薬指には、地味な銀色のリングが一つ……


 その瞬間、


【便利な指輪*】


 というイメージが頭に浮かんだ。それは消えることなく、どこを見ても、頭をふっても確固として存在し続ける。


 便利な指輪? と思って、親指でリングをこすると*の部分が五つに分かれて緑にまたたいた。


 その後ろには、それぞれに文言が続いている。


 *メッセージ♡

 *食料

 *魔法

 *武器

 *薬


 メッセージの後にある♡がピンクに瞬く。まるでココ、ココ、と急かすようだ。


 意識したとたんに*が六方に散って、男の声が頭に響く。


「青年! 無事着いたか青年! お前の望みだ、便利な指輪を受け取れ。一気に言うから良く聞け、一度しか言わんぞ」


 ここで少しの間が空く。俺の喉がゴクリとなった。


「この指輪には五種類の物品が収納できる。消費されたら消えるから、先ずはメッセージ分の空きができたな。一種につき五つのものが入れられるから、五つに五つ、合計25個収納可能だ、分かりやすいだろう? 種別はおおざっぱだから、使いながら考えろ、青年。念じると指輪をはめた手に収納できるし、同じく具現化するぞ。消費しなければ何度でも収納できる。ここまでは良いか? 青年」


 うおお、理解……なんとか理解した、か? 男の声は俺に構わず続く。


「私は親切だからな、食料と薬はすでに五個づつ詰めておいたぞ、感謝しろ。後はここが肝だが、薬や魔法など、必要な時には自動的に中の物が消費されるからな。これの便利さは後から分かるであろう。後は入れた物はその状態が保存される。そして生き物は入れられん、微生物くらいは良しだ! まあそこら辺は分かるだろ? 適当だ。以上! さらばだ青年」


 と言うと、まてど暮らせど、それ以上のメッセージは無かった。


 混乱……それしかないな。そこに再び訪れる静寂ーーその中で、指輪に触れながら*食料を意識すると、


【リンゴ、五穀米、イカ、柿、キッシュ】


 とあった。おいおい、しりとりかよ。収納にそんな縛りがあるのか? 単なる神様(自称)の趣味か? そう願いたいが。

 そう思いながら、イカに意識を向けると、左手にヌルリとした生イカが現れた。


 草原に立つ素っ裸の男、その左手には生イカ……


 混乱が混乱を呼ぶ展開に、そっと生イカをしまった。指輪に。


 うん、しまえるな。よかった、良かったよ。


 次に*魔法を意識すると、


【】


 うん、何も無いな。*武器も同じく。次に*薬を意識すると、


【ポーション(赤)(青)(緑)(黄)(黒)】


 とある。うん、わからん。試しに(赤)を具現化しても、瓶に詰まった赤い薬品が出るだけだった。

 同じくガラスっぽい物でできた蓋をとって、匂いを嗅ぐと……!!


 うくっ、とても飲める気がしない。敢えて例えるならば、タバスコの中にハバネロと酒と火薬とアンモニアを混ぜたような……とにかくヤバイ臭いがした。


 これもそっとリングにしまう。と、やる事が無くなった。


 おい、何が便利な指輪だ? コンビニエントのコの字も無いぞ? これで異世界を生き抜け? ふざけてるのか? と思っていると、


「あと一つ、オプションとして、地面に埋めといた物がある。これが無いとすぐ死ぬから、早く掘り返せ」


 という神様(自称)の声の後、今度こそ何かが途絶えた感じがした。それは例えるなら、電話の電源が落ちたような感覚。今度こそ一人取り残されたのだ、異世界に、たぶん。


 俺は最後の言葉を理解すると、すぐさま地面を掘りだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ