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再び起きた

 最初に感じたのは濃い土の臭い。次に感じたのは、硬い地面に押し付けられた顔の痛みだった。


 身じろぎしようとして、上手く体が動かせない事に焦る。これはどうした事か? 腕や足が動かない上に、感覚すら無い。サバ姉、どうなってる? と問いかけても、返事が無い。まさかもうナイフに仕込まれた魔力が尽きたのか? それにしては唐突過ぎるだろう。


 指輪に意識を向けると、


 *食料【リンゴ、五穀米、柿、シユロ(10)、シユロ(6)】

 *魔法【雷撃】

 *武器【南風鞭+、死告嘴しこくし(呪)】

 *薬【病気治癒1/2、傷治癒、怪力、シユロ灰汁あく(4)】



 ちゃんと反応があった。だけど何度かサバ姉に呼びかけても返事が無い。ど、どうしよう? すっげぇ不安。サバ姉の声が返って来ない事が、この状況とあいまって心を乱した。


 手足を動かそうとしても、相変わらず痺れているし、それ以上に物理的に縛られている? しかし辺りは真っ暗で、何も見えない。星明かりすら見えないここはどこだ?


 縛られた口からよだれがしたたる。猿ぐつわを噛まされているらしい。乾いた口についた土すら払いのけられないとは……情けなくて泣きたくなった時、ガラガラと何かを引きずる音がした。


 何か居る! と身を硬くする。心臓がうるさいほど拍動した。落ち着け、落ち着け。まだ雷撃の魔法もある、*武器にある死告嘴しこくしって何だ? 死告鳥のくちばし? そういえば死告鳥を倒した時に、左手に折った嘴を握っていたな。いざという時は武器になるのだろうか? (呪)ってのが気になるが。


 頭が痛くなるほど、めまぐるしく生き残る算段をしていると、土を踏む足音が聞こえてきた。近くで止まったそれが、扉に手をかけると、重苦しい音で横開きに引かれていく。


 差し込む灯りに身構える。とはいえ、手足は相変わらず動かない。格子状の影は、牢屋のようなものに閉じ込められているという事か? その隙間から覗き込んでくるのは人間のようだ。訳の分からない怪物とかじゃなくて、取り敢えずホッとする。


「こちらの言っている事は分かるか?」


 と言う声は少し低めだが、明らかに女性のものだ。よく見ると逆光に影を作るそのシルエットも、女性的な丸みを帯びている。


 猿ぐつわによって、しゃべる事もできない俺は、一生懸命うんうんと頷く。文化が違えば、この方法で意思が伝わるとは限らないが。


「そちらに向かう、敵意はない。分かるか?」


 という言葉に、またもうんうんと頷く。さてどうしようか? こいつが入って来た時点で一対一、雷撃でもみまって、脱出しようか? と考えていると、


「この牢屋は封印結界が何重にも張られている。魔法で抵抗しようと思わぬ事だ。下手すると魔力反射で死ぬぞ。そして少しでもおかしな真似をすれば」


 と腰元から剣鉈を抜くと、首を掻き切るように横に滑らせる。


 ……そ、そうですか、もちろんおとなしくしますよ。ええ、何でもおっしゃって下さい、言う通りにします。

 心が折れまくりの俺は、文字通り地を舐めながら、相手の動向を伺った。

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