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起きた

 〜いつぞやの天界にて〜


「ここまで消費が激しいとは、今後のハードモード展開を生き延びられるかのう? かなり便利機能で優遇してやったのに、勝手にピンチを招きすぎではないか? 青年は」


 男の声に、女が反論する。


「裸にしたり、与える食料をしりとりにしたり、遊び過ぎです。彼は普通の青年なんですから、あれでも良くやっている方です」


「ハッハッハッ! レベルアップは精神面も鍛えるからのう、青年もあれくらいできて当然じゃよ」


 笑い飛ばす男を睨みつける女、豪快な笑顔もだんだんと凍りついていく。


「ま、まあなんだな、ここまでわしが目を付けてやっとるんだ。死ぬ事はあるまい?」


「それは保証できません。あの世界はそんなに甘くないですから。でも良いですわ、私が彼を育てます。もはや貴方様の命令は離れましたから、そのつもりでいて下さい」


「おお、なんと、青年はお前を味方にしてしまったか。これは楽しくなってきたぞ! 幸運が続くことを祈るガーッハッハッハッ、ウグッ、で、では後は頼んだぞ」


 女の冷眼に喉を詰まらせた男は、尊大な態度をなんとか維持しつつ、その場を足早に去っていった。


「全く、この環境では支援にも限りがあるわ……あとは本人の頑張り次第ね。あの世界で生き延びられるように、早く一人前にしないと」


 悩ましげに頭に手を添えると、女もその場を去っていった。






 *****






 体が痛い、そして重い。寝返りをうつと、ペリペリという、なにか乾いてこびりついたものが剥がれる音がした。


「ううん」


 人知れず出した声が、自分のものとは思えないほどカサついている。喉が張り付くように乾いて、唾を飲み込もうとしても、うまく飲み込めない。


 〝丸一日寝てたからね〟


 おお、この声はサバ姉、そうか、南風の効果切れと薬の使用で、丸一日寝てたんだな。


 俺はズキズキと痛む頭を抱えながら、膝を立てて座り込んだ。で、ポーションの言語とやらは効果を発揮したのだろうか?


 〝ええ、それも最高の形でね。南風の効果がプラスに働いて、全世界言語の習得、並びに異種族言語が少し理解できるとか、優秀すぎよ〟


 少し自慢気なサバ姉の声に、あんたの手柄じゃないだろ、とツッコミつつも、俺も嬉しい。これで異世界転移ならではの労苦の一つである、コミュニケーション障害からは、逃れられた訳だ。


 異種族言語って全世界言語に含まれない訳?


 〝全世界言語は、確立された人型種の言葉を指すわ。それに対して異種族言語は、コミュニケーション機能として何とか成立するレベルの、例えば犬の吠え声とかの事ね。何とか意思くらいは伝わるっていう認識でいたら良いわ〟


 なるほど、それはかなり便利だなあ。と感心していると、


 〝状態が変わればサッサと指輪の確認、これは日常化しときなさい〟


 浮かれる俺を、サバ姉がすかさず叱咤する。それに従い確認すると、


 *食料【リンゴ、五穀米、柿、シユロ(10)、シユロ(7)】

 *魔法【硬化泥弾、雷撃】

 *武器【南風鞭+】

 *薬【病気治癒1/2、傷治癒、怪力、シユロ灰汁あく(3)】


 となっている。さすがに心許ないな、シユロも三つ分消費していて、灰汁が薬に入ってる。


 〝水分が大量に含まれてるからね、栄養というより、そっちの意味で消費されているよ〟


 そうか。どうでも良いけど、素肌にじかに着ている鎧服の中がかゆいな、特に足の痒さがひどい。


 〝もう少ししたら硬化泥弾の効果時間が切れるからね、それまでは身を休めなさい。その後は何時休めるか……もしかしたら数日は動きっぱなしかもよ?〟


 おおう、そりゃあ痒みどころじゃないな。俺は身を丸めると、万一唐突に魔法が切れても良いように、枝の根元付近にすり寄っておいた。

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