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ここら辺最強の魔獣

 サバ姉の声音の深刻さから、冗談では済まされないと気が引き締まる。真っ黒な頭部に特徴的な長いまつ毛。その下には炎のような暗い光が揺れていた。


 それを見つけたサンダー・バードが、焦ったように方向転換する。同時に水面を走る速度を上げた死告鳥は、ポーン、ポーン、ポーンッと高跳びして、数十メートル上空のサンダー・バードに飛び移ると、長い足爪で首筋を掴んだ。


 落下するサンダー・バードを足場に、つぎのサンダー・バードに飛びつく。その時に発生した雷の直撃をうけたが、平気な様子でもう一匹も足爪の餌食にした。


 その下から、激しく発光した雷魚竜が飛び込んでくる。轟音とともに、青い稲光りが死告鳥の体表を撃つが、真っ黒な羽の表面を滑るのみ。


 涼し気な死告鳥は短い羽を広げると、空中で体勢を変えて、雷魚竜をくちばしで突いた。

 軽い一撃は、なんらダメージを与えたようには見えなかったが、その一点から黒い沁みが広がると、あっという間に全身を黒く染め上げ、力を失った雷魚竜は地面に叩きつけられた。


「クエ〜〜ッ」


 と一鳴きしてから、真っ黒になった雷魚竜をついばみ出す。残りのサンダー・バードは、ヒモの切れた凧のように、フワフワと飛び去って行った。


 地面に落下した時の飛沫しぶきが、俺にも降りかかってきた。


 こ、こえぇぇ〜っ。


 決して雑魚敵とは思えない雷魚竜を、アッサリと屠って食べるとか、戦って勝てる気がしない。


 〝当たり前よ、あれはここら辺では最強レベルの魔獣よ。肉をついばんでいる内に、さっさと逃げなさい〟


 サバ姉の声も、若干強張っている。こりゃ本気でヤバイ奴だ。俺は物音を立てないように気をつけながら、移動を始めた。だがこんな時に限って、泥にめり込んだ足が「グポッ」と大きな音を立てる。


 俺は生きた心地がしなかったが、どうやら目の前の大きな獲物に満足らしく、こちらには見向きもしない。


 〝ああいった強者は、内包する魔石が目当てだからね、普通はお前みたいな雑魚は相手にしないのさ。雷魚竜もついつい告死鳥の膨大な魔力に目が眩んで、己の力を見誤ったんだろう? あんたも気をつけな〟


 そうか〜、弱くて良かった……って、何か複雑な気分だな。じゃあ俺もレベルアップを繰り返したら……


 〝当然狙われるようになるね。人間の場合は脳みそを狙われるよ。人の多い場所にはそれ専門の、脳みそ吸いってモンスターが居るからね〟


 ひえぇ〜っ、脳みそ吸い。そのおぞましい名前から、昆虫のようなモンスターを想像して、そいつが夜な夜な耳から管を入れて、脳みそをすする図を思い浮かべた。


 〝そんなんじゃないよ、吸血鬼って分かるだろ? あれの脳吸い版さ。まあどっちにしても気持ち良い奴じゃないね〟


 そうなんだ、でも人型は人型で怖いな。まあ当面は人里離れた場所だから、そっちの心配は無用だが。


 〝全くだよ、ほれ、そろそろ植生が変わるよ、という事は?〟


 モンスターも変わる?


 〝ご名答、湿地帯も残りわずか、気を引き締めな〟


 サバ姉に言われなくても、もうすでに俺の気は引き締めまくってるよーーと、こんな事考えてる時点でフラグは立っているんだなぁ。

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