消費→補充
さてと、何とか雷魚竜の騒乱に巻き込まれずに、赤い植物の元まで辿り着いたぞ。
〝これじゃ細すぎる、あそこにある大木の根元に行って〟
指定されたのは、一番真っ赤に色づく、巨大植物だった。だいぶ足元の水かさも引いてきている。山の麓に近づいて来た証だろうか?
〝じゃあ、この木の根元を掘って、さっきの毒貝や、泥に潜むモンスターに注意しながらね〟
言う通り、周りに気をつけながらサバ姉を突っこむと、粘る泥をゆっくりとかき出す。幸いそんなに硬くも緩くもない泥は、簡単に掘る事ができた。
そうしていくと、植物の根から太い枝葉が伸びているのが分かる。
〝それそれ、それを引っ張ってみな〟
と言われて少しづつ手で掘り出して行くと、大きな塊がポコポコと枝葉についていた。引っ張りだされ、水面に浮き上がったそれは、ドロにまみれた、レンコンのように節のある塊である。
〝こいつはアクが強いが、食用になる根塊だよ。切り取って指輪に収納してみな〟
言われた通り、一つを切り離して左手で持つと、指輪に収納する。*食料の欄を見ると、
【リンゴ、五穀米、柿、シユロ】
とあった。おお! 地味に異世界初食料ゲット! シユロって名前なのか、と浮かれていると、
〝はやく! 限界量まで収穫しな。別の雷魚竜が近づいて来たよ〟
と言われて、慌てて根塊を収穫していく。もっと選べば大きいものもあったかも知れないが、時間がないからと、手当たり次第に収穫すると、
【シユロ(10)】
と表示された。魔法の時もそうだったが、同種は10個まで収納できるんだな。さらにシユロを10個収納すると*食料の中は、
【リンゴ、五穀米、柿、シユロ(10)、シユロ(10)】
となって、これ以上は収納できなくなった。これも一気に消費しないといけないのだろうか? と思っていると、
〝大丈夫、食料は一目盛りづつ消費されていくわ。もちろん出す時はいっぺんにでるけどね〟
おお! さすがは便利な指輪の神対応。あとはアクが強いと言われたが、そのまま消費されて、体を害する事は無いのだろうか?
〝それも、大丈夫よ。もし害のある物が含まれていたら、それだけ集めて、別のアイテム扱いで表示されるから〟
なんと! じゃあ毒のある、例えばフグなんかを収納、消費したら、フグの身だけが栄養になり、毒は*薬の欄に毒薬なんて形でストックされるという事か。
〝ってわけね〟
じゃあ生で食べられない物は?
〝人に吸収可能な状態で体に入るから、心配ないわ〟
超〜便利じゃん! ラッキー。と思っていると、何となく右手から険悪なムードが伝わってくる。おっと緊張感、雷魚竜ね。とサバ姉に気を使って、周囲を警戒した。
新たに出現した雷魚竜は、サンダー・バードを五羽も引き連れていた。こいつは相当な古強者なのだろう。
五羽の目から逃れようとすると、かなり厄介だな。
巨大植物の影にいた俺は、行き場を探して周囲を見た。その時、トットットッと走り来る者に気づく。
沈みもせずに水面を走って来るのは、全身真っ黒で、ダチョウの様な巨鳥。その異様な姿に見入っていると、
〝やばいよ! 死告鳥だ。早く身を隠せ!〟
と焦ったサバ姉が警告を発した。




