残念神(自称)と名無しの俺
と、言われましても。
キョトンとする俺に、真っ白な歯を剥く男が、
「知ってるぞ〜、その手のネット小説ばかり読んでいるのだろ?」
言い切ると犬歯がキランと光る。なんだか苦手だな、この人。
「人ではな〜い! 神である。さあ、何か一つ能力を決めるのだ、青年!」
能力って? ネット小説、神、能力を授ける……異世界転生?
「ふん、分かりきった事を、だが今回は異世界転移だ! さあ、何が望みだ?」
一つだけ能力と言われれば……離れて戦える魔法は使いたいし、接近戦闘にも対処したいし、食料と水は確保したいし、鑑定能力は欲しいし、それから、それから……
「一個だけだ! あと五秒で決めろ! 何を望む、青年!」
と言うと、男の口が光りはじめた。ご、五秒! やばい、じゃあ……
「べっ便利な物下さい! ゆ、指輪……」
パニックになった俺が訳の分からない事を口走った時、カッと光った口に吸い込まれると意識を失った。
「ふう、全く。何だ? 便利な指輪って。能力を決めろと言ったのに……ププッ、だが面白い! 青年、気に入ったぞ。便利な指輪か、その願い聞き届けよう。お前の能力は〝便利な指輪を使える〟だ」
腰元から瓢箪を取り出した男は、お神酒を一滴口にすると、モゴモゴと口の中で転がしてから、飲み込んだ。
万物創造の宝具である瓢箪、その力を受け継ぐお神酒は、飲み込まれた青年の魂と混ざると、肉体の一部となって、異世界へと送り出された。
皆さんならどんな能力が欲しいでしょうか? 五秒以内に答えよ。感想欄は閉じている、念話で送ってくれ給え(´・Д・)」