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ここはどこ?わたしはアイドル(1)

「なんでなんで?!全くなんでアタシがこんな事しなくちゃいけないの!?」

・・・ひめがそうキレる気持ちは十分にわかる。

「ひめちゃん、仕方ないわよ。江口さんから頂いたお仕事なんですもの。」

・・・しま姉がそう答えるのも妥当だ。

・・・自分達のグループ“a-o-i”の命運を握っているのは、支配人補佐であることは分かりきっている。

・・・今、支配人補佐に放り出されたら、アイドルとしての活動は完全に終了すると言っても過言ではない。


・・・それにしても、なぜこんなところを掃除しなければならないのか。

「なんでなんで?!なんで奈落なんて掃除しなくちゃいけないの!!こんなとこ誰も見ないじゃん!!」

・・・ひめの言うとおりだけど、支配人補佐が言うには、前のステージで使った紙吹雪が、どこからか入り込んで奈落の中が大変な事になっているから掃除してほしいとのことだった。

「仕方ないわよ。舞台清掃のアルバイトを雇うお金をカットしてまで、私達に回してくれてるんだから。それにステージの下って来る機会ないからちょっと新鮮な気分。」

「それはそうかもしんないけど!アイドルの下積みってこんな所を掃除することある?!おかしいよ!おかしすぎるよ!みやぎっちもそう思うでしょ?!」

・・・軽く頷いたが、ひめは見てなかった様だ。奈落の中は暗くて、互いの懐中電灯だけが頼りの世界。もっと大きな劇場の奈落なら、仕掛けとかいろいろあって人が待機できるスペースとかもっとしっかり出来ていると思うが、ここはアイドル専用の小劇場。四つんばいで動けるくらいの高さしかない。確かにこんな場所を掃除する必要自体があるとは思えないが、支配人代理の考えがあってのことだろう。紙吹雪を拾いながら、どんな意味があるのかを考えてみたがまったく思いつかなかった。今日はビル前で配るフライヤーもない、ただ午後からはレッスンがある。全員集合と言われて、午前のバイトも休んできたけど、与えられた仕事がこんなこととは。ひめのキレっぷりはいつにも増しているが完全に同意できる。


「あら、これは何かしら?」

「なになに?ちょっと見せて!!」

・・・そういって、ひめがしま姉の手からその“何か”を奪い取り、懐中電灯でそれを照らした。

「きれい・・・」

・・・その瞬間、自分達3人が奇妙な光に包まれた。

「なになに?!えっなに?!」

「変わった光・・・」

・・・「なんかヤバイ気がする・・・」そうつぶやくと同時に自分達は気を失った。



「しま姉!!みやぎっち!!起きて!!」

・・・ひめの騒がしい声で目が覚める。どうやらあの光を見た後に気絶していたらしい。目を開いてもしばらくは目がなれずに回りの様子がわからない。

「う、うーん。こんなところで眠ってしまったのかしら?」

「そんなわけないじゃん!それよりそれより!!!」

・・・いつにも増してひめが騒がしい。ようやく自分が奈落の暗がりにいたことを思い出し、懐中電灯を手探りで探す。ない、ない。おかしい。光を見たときには確かに手に持っていたはずだ。どうやら周囲にはない。「懐中電灯・・・」しま姉に聞いてみる。

「あら、おかしいわ。私の懐中電灯がないわ。」

「ちがうちがう!!おかしいんだってここ!!」

・・・ひめが尋常でないしつこさでわめき散らしている。暗闇に目が慣れてきたようだ。あたりを見回す。そこには、自分達がいた“奈落”ではなくなっていた。

「私達、死んでしまったのかしら?」

「ぎゃーーー!!何で死ぬの?!さっきの光のせい?でもここって絶対地獄じゃん!みたことないけど地獄じゃん!だってこんな赤くて空が黒くて!!!」

「奈落だから地獄なのかしらねえ・・・」

・・・ここはどこだろう。さっきまで居た場所とは明らかに違う。四つんばいでなんとか動けるステージ下の奈落にいたはずなのに。今は、赤色っぽい砂利の上にいて、黒いけど暗くない空の、見たこともない世界。確かにしま姉の言うとおり、“奈落”は“地獄”という意味もある。あの怪しい光を見たことで、死んでしまい地獄に来たんだろうか。天国にしてはあまりにもオドロオドロしい。華やかさがまったくない。自分達は本当に死んでしまったんだろうか。

「あ、ここ、ケータイ使えるよ!!」

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