白蛇さんと同居生活スタートです
慌てて駆け込んだ動物病院で白い蛇を見てもらったところ大事にはいたっていないようで、胴体を結ばれていたのをといてもらい、血を拭き取り全身に軽く薬を塗ってもらって終わりだった。
「では、お大事にー」
「あ、はい、ありがとうございました」
ナース?というか受付のお姉さんから、白い蛇の入ったカゴを渡され、薬も手渡された。
蛇は大人しくとぐろを巻いており、カゴのなかでこちらを見ていた。
「よし、帰ろう・・・っと、すいません、蛇って何を食べるんですかね」
「ペットショップに行かれた方がいいですよー、ここはあくまでも動物病院ですし、蛇ってあんまり診ないので、私わからないんですよー」
「はぁ、わかりました、では」ペコッ
お姉さんは動物病院の受付なのに蛇の食べ物を知らないと言い放ち、そのまま苦笑いで会釈された。
仕方なく私は、ふぅ、と一つだけため息というか深呼吸をして、動物病院を後にした。
結果として、ペットショップには行かず、我が家へと戻ってきた。
なぜならペットショップに向かいつつ、文明の理器である携帯でポチポチと検索していると、蛇の食事について記載があり、わざわざ出歩かずともネットショッピングで済ませればいいと気付いたからだ。
ただし、与える餌はピンクマウスとかカエルとか、のようで、蛇を飼ったことがない私に世話が出来るのか、とても不安ではある。
「どうしようかー、名前とかつけた方がいいんかな」
蛇がおとなしい事を良いことに、カゴを目の高さまで持ち上げて顔を覗き込む。
先ほどは血まみれの赤黒い蛇としてしか見えなかったが、淡い白色の・・・パールホワイトとでもいうのか、滑らかな鱗をもつ愛らしい蛇であった。
目の色は美しいエメラルドグリーンで、虹彩がチラチラと光って見える。
「白い蛇だから、白ちゃんとか?」
うーんと唸り、蛇の瞳を見つめる。
蛇はフリフリと首を振り、ビタンっとしっぽを不機嫌そうにたたき付けた。
んもう、わがままなんだから。
「これはと思う名前の時に、意思表示してよ?」
蛇はコクンと頷くと、ジィッと見つめてきた。
そんな可愛いらしい様子にニヨニヨ笑いつつ、改めて名前をつけはじめる。
「真珠、パール、ホワイト、エメラルド、みどり、」
見た目から思いついた単語をつらつらと言うが、蛇は全く動かない。
心なしか冷たい目線でジトーと見てくる始末。
「サラザール、スネーク、グリーン、翡翠、翠玉」
翡翠と言った時に蛇が鎌首をあげ、翠玉と言った時に思い切り首を縦に振った。
「あー、エメラルドの和名がいいの?翠玉より、翠っていうのも可愛いけど」
翠と言った時、蛇の瞳が嬉しそうに細められたように見えた。
しかし、まさか蛇がこんなにも感情豊かだとは思わなかったのだが、最近の蛇って奥が深い。
「じゃあ、翠よろしくね」
にっこり笑って挨拶したものの、蛇の食事やお家の準備など、やることがたくさんあって、その笑いは引き攣っていた、かもしれない。
そんなこんなで、同居生活はスタートしました。
.