運命的な出会いとは、と問い詰めてやりたい。
止めどなく汗が額に流れ落ち、手の甲で幾度となく拭いながら目的の店まで歩くものの、ジリジリと焼け付くような日差しがアスファルトに照り返して、人より少ない体力を容赦なく体力を奪っていく。
記録的猛暑を連日のように記録していく8月の半ば、私はゼィゼィと息を荒げて全身汗まみれになりながらも歩き続ける。
今日発売される予定の、漫画を買うために。
私の名前は丸井 淳美、ようやく今年就職したばかりの20才で職業は栄養士。
好きなことは食べること、料理すること、漫画や本を買って読むことで、好きなことを仕事にしたくて、栄養士になってみた。
ちなみに栄養士だからといって、自己管理が出来るなんてことはない。不摂生や日頃の食習慣が祟って、ぽちゃぽちゃ体型の垢抜けない栄養士である。
短い脚を必死で動かし、なけなしの体力を振り絞り、私は本屋へ急ぐ。
周りからみれば何をドスドスと歩いているのだという感じだろうが、こっちは発売日に目的の新刊を手に入れる為に必死こいてんだ、すっこんでろ!という気持ちである。
だが、そんな私のことを神様は嫌いなご様子で、こんな暑い日中の店前・・・しかも目的の本屋の前で、たむろしている数人のヤンキー達。
通れなくはない、しかし、通り抜けるのに勇気がとても必要で。
目と鼻の先には目的の新刊が両手を広げて待っているというのに、なんてことだ!
「でさー、俺がやってやったんだよ!キモい蛇を結んでビニールにいれて投げ飛ばしてやったぜ、ヘヘッ」
「お、スゲーじゃん、死んだかその蛇」
「後で見に行こうぜ、死んでなけりゃ踏み潰したらいいっしょ」
わかった、わかった、すごいのはわかった、頭が悪そうで動物虐待大好きなのも十分に理解出来たので、良かったら我が愛しの楽園(本屋)から立ち去ってほしい。
しばし眺めていたが立ち去る様子もないので、強行突破するしか道はないようだ。
「ふひっ、しゅみませんけど、のののののいてくれましぇんか?」
「うっせーデブ!くせーし、デケェし、キモいんだよ!!!!」
「テメエが退けよブーーーース」バシャッ
「デブスの方がよっぽど邪魔になんだよ、くそが」ゲシッ
ヤンキー達に怒鳴られ、飲みかけの缶ジュースをぶっかけられ、足で蹴り倒されてしまった。
そんな様子にこの本屋の店員は気づいてるくせに、見て見ぬ振りですか、そうですか。
なあんて落ち込んでる私にヤンキー達は何やら白いビニール袋をこっちに蹴り飛ばしてきた。
宙を飛びビニール袋から出て来たのは・・・血まみれになって何故か結ばれた白い蛇で。
「うぐっ、うげえええええええっ」
それが私の顔面にグチャリと音を立てて当たり、血や色んな液体がヌルリと張り付く。
吐き気を催し思わずえづいてしまう私を、ヤンキー達はげらげらと笑いながら見て去っていく。
暑さと気持ちの悪さからフラリと倒れかける私の前には、その白い蛇がいた。
小さくうねっている、そのひ弱な存在が今の私に似ていて、かわいそうになってきた。
相変わらず吐き気もあるし、気持ち悪いし、倒れて何もかも放り投げたいが、震える手を白い蛇にのばして、そっと抱き上げた。
噛み付く力もないのか大人しい様子の白い蛇に、蛇に対する恐怖も薄れてきたので、ふらつく身体を何とか立て直し、動物病院へと足を向けた。
どうかこの小さな命が助かるようにと、祈るような気持ちで、私は走った。
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同名の小説を書いていて、行き詰まりました
こちらをある程度書いたら、向こうは消します