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―――――――曰く、学校を休んだことがない生徒がいるらしい。
―――――――曰く、その生徒は屋上から落ちても無傷らしい。
―――――――曰く、その生徒は何年も学校に通っているらしい。
―――――――曰く、この学校には死なない生徒がいるらしい。
そんな噂を聞いたのはいつの事だっただろうか。
この学園に代々伝わる噂らあしいが、今では知っている生徒は極僅かしかいないらしい。
そんなことを何故俺が知っているのかというと、幼馴染が新聞部なるものに所属しており頼んでもいないのに聞かせてくるからだ。
修勇館学園は、大学を併設しているマンモス校だ。長い歴史をもつ学校で過去に著名な人物を幾人も排出してきた名門でもある。
文武両道をモットーとしているため部活動も活発で全国大会優勝なども珍しくない。
そんな学園の中においてひっそりと、しかし確かな伝統をもって存在しているのが新聞部である。
主な活動は月1回の学園新聞の発行と、イベント行事などの広告の作成。
しかし情報インフラが発達した今、学園新聞など読んでいる生徒は小数であり、広告を作っているのが誰かなど気にすることはないので新聞部の知名度は高くなく部員数も少ない。
つまるところその程度の部であり、決して熱心な部活動ではなかった。
――1年半前までは。
俺がこの学園に入学したのが1年半前。家から近く両親共に卒業生であったこともあり、迷いなく進学先に決めた。
もちろん入試は簡単ではなく、中学最後の1年はほぼ潰してのギリギリの合格であったが。
それでも大学までストレートにいける(試験はあるが)うえに、世間での評価も高い学校に入れたことはそれを補って余りあるプラスであると思っている。
そして俺と一緒に入学した人物がいる。幼馴染の望月千である。
彼女はとにかく好奇心旺盛の猪突猛進で、何にでも首を突っ込もうとする。
隣町に新しいスーパーが出来たと聞くと開店と同時に入店し、揉め事があると聞くと突撃していく。そんな彼女に振り回され被害を受けてきたのが俺である。
隣の町まで行って迷子になったときも、人のケンカに首を突っ込んでなぜか一緒にケンカしていたときも巻き込まれて一緒に怒られた。
修勇館学園へ入ることを決めたのも彼女から離れたかったというのも多分にあったのかもしれない。
決して頭のよくなかった彼女ではこの学園への入学は不可能だろうと思っていた。
しかし、俺がこの学園へ進学しようとしていることを聞いた日から猛勉強して俺よりも良い成績で入学してしまった。
高校に入ってからも千の勢いは止まることを知らず、噂や不思議が好きな彼女は新聞部に入り、他の部員を巻き込んで色々な事件に首を突っ込んでいった。もちろん新聞部員でない俺をも巻き込んで…。