カッコつけておいて、こけると恥ずかしいよな
日曜日の午後五時五十分、俺は昨日進藤時正と出会った、駅から少し距離がある広場にいた。
兄から助けたあの後、彼から「お礼がしたいから、明日またこの場所で待っていてほしい」と言われたからだ。
心臓が高鳴る。早くみんなに会いたい。
きっと誰も俺のことを覚えてない、いや知らないだろうけど。
実は俺が逆行してしまったのは、今から二ヶ月程前。
状況を理解してから半月。
塾がまだ始まっていなかったので、進藤時正に会うのは諦め、もう一人の仲間に既に会いに行っている。
街の大通りにあるコンビニで働いている人なので、簡単にみつかった。
もしかしたら、なんて期待を持ち会いに行く。だがやはりというか、仲間は全く俺を知らなかった。
目が合っても普通にそらされた。
まぁ、同じように逆行してたら連絡くらいくれるよな、そのことに気づいたのは店を出て少したってから。
そして進藤時正も同じ。塾での始めての対面時、こちらも似たような反応だった。
・・・今更だが本名なのにすごい違和感つーか、「進藤時正」彼を俺はずっと白兎を音読みにして、「ハクト」と呼んでいたからだろうな。
懐かしく感じる。逆行前はそれが当たり前だったのに。
もどかしい、けれど今その名で呼んだら十中八九変人扱いだ。
せめて心の中でくらいハクトと呼びたいが、うっかり声にだしてしまいそうだし。
まだその時ではない。
いきなり後ろから肩を叩かれた。
「ごめん、待たせちゃたよな」
「いや全然」
反射的に速答する。
俺の後ろ、そこにはいつのまにかハクトが来ていた。
正直に言おう。「ハクト⁉」って声にださなかった俺すごい。さっきとは違う意味で心臓高鳴ってるよ。
まだその時ではない。なんてカッコつけておいて・・・。
恥ずくなってきた。
ハクトいや、進藤はなら良かったと、笑いながら駅の入り口を指差す。
「深井君カラフルだから、あそこからでもすぐわかったよ」
そうだろうな。見つけやすいように、昨日の色違い、しかもワントーン明るいのを着てきたからな。
自覚はある。だかそんなことより、鳥肌がやばい。君ってなに。
「望でお願いします」
「いいの?つかなんで敬語?」
「気にするな」
「んーよくわかんないけど、わかった」
この正直なとこは相変わらずだな。それと、
「後服がカラフルだから、と言ってくれ。まるで俺が頭染めまくってる、不良みたいに聞こえるから」
誤解を生む言い方も。
変わっていない、俺の知ってるハク・・・進藤、進藤時正であることに、安心と喜びに顔が緩みそうなのを、気力で抑える。