あれ?これってゲームみたいに、引き継ぎ機能なんてないはずだよな
「残り三十分。とにかく行くしかないですね」
俺の言葉に茨木さんが心配そうな顔をし、口を開こうとしたが先に皇城さんが話し出した。
「そうだな。居場所がわからなかった獲物は釣れたし。噂からも例の双子は嫌われ者らしいからな、仲間ぞろぞろ引き連れてる可能性は低いだろ。いざって時は逃げろ、以上行って来い」
もうこの話はおしまいとばかりに、煙草を吸い出す。
余談だが、皇城さん愛用のジッポは久木手作りで、なんと火がハート型にでる代物。
一見渋い外見をしてる皇城さんには不似合いな気がするのに、実際目にすれば、違和感がないのは久木への愛ゆえか。
「ちょっと待って。相手はずる賢い手を使う上に、知能犯で有名なのよ。望ちゃんが行くのは危ないわ」
茨木さん!その気遣いに感動します。
焦って早口になっているのが、本当に心配してるのがにじみ出てて、さらに嬉しいです。
もっともである茨木さんの主張。皇城さんは椅子にふんぞり返り自信満々で答えた。
「あほ。だからだろぉが。そういう相手なら尚望が行く方が良い」
悪知恵働くようだしなー、なんて当たり前のよう言われても正直、違和感しか俺にはない。
何時の間にそんな信じられてたんだ?
いくらなんでも、おかしくないか?
だって、会ってまだ一週間も立たないんだぞ。
しかし、皇城さんと目があった瞬間そんな考えは拡散し、自分が何をするべきか理解した。
先程の進藤よろしく、椅子を倒す勢いで立ち上がり歩きだす。
「ちょ、ちょっと望ちゃん⁈」
「望?」
俺の突然の行動に動揺してる、茨木さんと進藤に振り向き言う。
「後二十分、走ってもぎりぎりだ。先に行く」
扉を開け走る。
後ろで慌ただしい音と共に二人が来るのを確認し、俺はさらに走る。
望達がいなくなり、居るのは三人だけになった溜まり場。
開けっぱなしになってる扉を閉め、内原は変わらず微笑んで口を開く。
「ふふふ、忘れ去られてしまった依頼人の方には僕から丁重に、同行の断りを入れておきますね」
久木から「あっ」と滅多に出さない声が上がった。
完璧に忘れていたのがわかる。
「今回の事件希一はどこまで推測ついてるんですか」
机に並んでいる食器を片づけつつ、なんでもないように聞く。
「多分俺よりあいつの方が推測ついてるさ。詳しいことはあいつに聞け」
ピタリと片づけをしていた手が止まる。
内原はゆっくり顔を上げ珍しく、眉を下げ困惑している表情になった。
「ずいぶん彼を信用されてるみたいですね」
「俺だけじゃないだろ」
それだけ言って静かに立ち上がるのを、久木が見つめる。
「俺もこれから仕事なんでな。部屋戻るわ。後頼むぞ」
「まったく、仕事って何ですか?」
ため息をはく内原に、皇城は振り向き依頼人が初めて訪れた時と同じく、ほくそ笑む。
「依頼報酬について・・・な」
三人が話してる内容など知らず、望達は走り続ける。
フィナーレに向けて。
第六章 終
作者「おかしい。おかしいよ」
望 「そうだな。いくらなんでも信用されすぎだ」
作者「ちがーう!そうじゃなくて、本来ならこの時点でもう双子とは決着ついてる予定だったの。 なのに、なのになんでまだ双子再登場すらしてないの⁈」
望 「知らん」
作者「反抗期⁈!」