場を制するのって快感だよな
同じ格好。ほぼ同じ背丈。これだけで、依頼の話にでた双子だと予想はつく。
ここはやはり知らないフリをするべき。怪しすぎるし、自分ではどうにも出来ない。
素知らぬ顔で校門を突破しよう。
一周目の自分が思い、実行した選択。
しかし、今の俺はそれが意味をなさないのを知っている。
前回とは違う。新しい未来への一歩、踏み出してやろうじゃないか。
校門まで迷いなく向かい、二人の前に躊躇なく立つ。
「初めまして。お待たせしてすいません」
双子にこちら側から声をかける。
するとよほど想定外だったのだろう。
帽子でちゃんとは見えないが、両方揃って目が見開いてる。
「・・・初めましてぇ~。望君、だよね?」
先に口を開いたのは、弟のトォール。
こいつ等は一卵性双子。
顔や声は同じで見分けるのは難しい。
だが、性格・身長までは同じではない。
弟の方が兄より僅かに小さいし、性格に至っては悪質なのは同じでも、種類が違う。
兄が直接的なら弟は間接的に、人を傷つけるタイプ。
大方今回の悪行も弟が持ち出した計画。
で、焦れた兄が待ちきれず学校に来た感じだと思う。
だいたい兄のティールはこんな喋り方しない。
まぁ、初めて会う人は同じ顔に注目してしまい、わからないだろうな。
目の前にいる奴らに口角をあげ、ニヤリと笑う。
「はい、そうです。お二人は俺に何か用事があるんでしょう。学校では目立つんで、何処か適当に歩きませんか?」
先手必勝。
相手が言おうとしてたのを先に俺から提案する。
双子は互いに顔を見合わせ困惑中。
本来は逆だったはず。俺が困惑し、双子が楽しそうに笑みを浮かべてる。双子の予定ではな。
簡単に遊ばれてなんかやらない。
「そうですねぇ」
俺の空気に呑まれてる内に、わざとらしく拳を顎につけ考えるフリをする。
そしてさらに、提案になっていない有無言わせぬ声で言う。
「俺この後友人と街で待ち合わせしてるので、そっち方面にしましょう」
返事など待たずに勝手に歩き出せば、後ろから怒鳴り声と間伸びした声で静止するよう聞こえるが、知らん。
残念だったな。お前達が連れて行こうとしてた「アリス」は、なんでも知っててなんにも知らない「チシャ猫」なのだから。
今の森をチシャ猫は知りつくしている。
もうお前等の知る森ではない。
どうする、どちらに進む?
おとなしく帰るか?強硬手段に出るか?
どちらにせよ無駄である。
未来と言う名の森。
地図もなくただ、チシャ猫に着いて行ってる。
どうする?次は右?左?そうして奥へと進んで行く。
迷い込んだ森の中
五章 終
次で戦闘入れる予定なのでR15に設定変えます