双子って設定だけでおいしいよな
「どういうことか、説明してくれないかしら」
重たい空気が漂う部屋は、茨木さんの柔らかい音色で打ち消される。
少しの間が立ち、やがて彼女は意を決し話しだす。
「実はこの人を探してるのは私じゃなく、友人なんです」
そう語り始めた話しを要約すれば、その友人が写真を渡すなり、突然「一週間以内で探してくれ」だけ言い残し去ったそうだ。
もちろん彼女はその後友人に何度も連絡した。
だが、何度電話をしようが留守番電話に繋がり、メールをしても返事は来ず。
彼女は困り果て街をうろついてる時、情報通で何でも屋の進藤の話しが耳に入り、朝から進藤を駅で待ち伏せをして今に至る。
「そういうことですね?」
俺に彼女はただ黙って頷く。
「それで後何日あるの?」
進藤が聞けば彼女は小さな声で「三日」と呟く。
普通なら「なんだそれ。ふざけるな」でお終いだろう。
俺たちはそんなたまではない。
「その友人とやらの情報を全部話せ。それから深井」
皇城さんが急に俺の方を向く。
「お前はこいつに心当たりはないんだな?」
人差し指で写真を叩き、質問ではなく確認で聞いているのが声からわかる。
さすが。俺の表情・態度からわかるか。
「はい。兄弟は兄一人ですし、親戚にも心当たりはありません」
「そうか。ならこれから三日間お前は極力街には来るな。外出するなら、帽子や眼鏡で顔隠せ。いいな」
無難だな。
情報収集の際そっくりな俺がいれば、捜査の邪魔になる。
例えば、誰かに聞き込みをしても、俺の目撃情報になってしまう確率が高いから。
現状がわからず、ついていけてない依頼人の彼女。
「依頼受けてやるってんだ。さっさと無責任な友人について話せ」
皇城さんの言葉を理解した彼女は、絶望に近い暗かった顔がみるみる希望で明るくなる。
お礼と共に口から出た友人の情報。
赤髪の双子の兄弟。
名前は兄がティール 弟がトォール。
何処かは知らないがハーフ。
街によくいるのだが、最近はいないらしい。
年は俺や進藤より二つ年上。
今回の悪戯を仕掛けた人物。
癪だが今はお前等の玩具になってやろう。
俺の欲っするものを手に入れる為に、必要だから。