一人でニヤついてる奴って正直引くよな
曲がりくねった迷路のような道を、進藤と共に歩く。
一周目では覚えるのに苦労した。
「さっきから何唸ってるんだ?」
進藤を横目で見れば、たまり場を出てから今だに唸っている。
どうしたんだ?
「んー、なぁ望。俺達って前に何処かで会ったことないか?」
「俺をナンパして得があるのか?」
「へっ⁈ちょ違うってば。結構真面目に聞いてるんだ。なんか上手く言えないけど、妙に馴染む感じがするんだよな」
予想外な進藤の言葉にギクリとなる。平常心、俺、平常心。
「そう言われてもなあ。塾でなら何度か会ってるが、そういうことじゃないんだろ?」
「うん。なんだろ」
そしてまた唸り始める。
馴染む、か。
「ありがとう」
「え、何が?」
「それだけ親しみ感じてくれてるんだろ」
嬉しいなと笑えば、進藤はそれで納得したのか無邪気に笑う。
駅に着きまた塾でと言いかけ、その時メアド交換してないのに、互いに気づいてまた笑い合った。
現代人が何忘れてるんだよーって。
駅に入り、今日一日の出来事を思い返す。
流石に逆行なんて思いつきさえしないだろうが、用心に越したことはない。
仲間達の様子からも俺は怪しまれる要素は、ボロは出していない。
俺の欲しいものの為には、絶対まだ、気づかれるわけにはいかないんだ。
大丈夫。計画は順調、家に帰ったらすぐにこれからについて、もう一度計画を見直そう。
これから先が楽しみで仕方ないな。
ニヤリと笑うチシャ猫
三章 終