第二話
俺は精一杯頑張った。
けど解けなかったんだ。
「わかりません」
クラスの皆がいる前で恥ずかしかったが、頑張って言ったんだ。
なのに、なのに……。
「こんな問題もわからんのか! お前、教師になりたいんだってな。そんなんじゃ無理だぞ。ったく、もっと勉強しろ」
教室中がざわついた。
俺が教師になりたいということは誰も知らない。
馬鹿にされると思い、誰にも言えなかった。
しかし、クラスの皆の中で夢を言われ、否定までされたのだ。
「あの松尾が教師?」
「無理でしょ!」
「自分の成績見てから言えっつーの!」
笑い声まで聞こえる。
夢を壊された俺は、その日から笑い者だった。
「勉強やってるー? あ、無駄かな?」
「おい、教師になったらなにやりたいんだよ」
「もう現実見えてきた?」
いじめられていたわけじゃないが、俺の心はもうズタズタだった。
なんとか誤魔化してきたが、よく机の下で紙を握りしめていた。
そんな中勉強もうまくいかず、大学は何校も受けたが、ひとつも受からず、高卒となった。
仕事もみつからず、アルバイトをし、ニート状態になり七年。
俺はあいつのことが忘れられなかった。
俺の人生がこんなにめちゃくちゃになったのも全てあいつのせいだ。あいつが皆の前であんなこと言わなければ……。
そう。あいつとは俺の夢を壊した金田信行だ。