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龍王の娘  作者: 瑞佳
第三章 日本編
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すれ違う心






皇女様の態度に釈然としないまま大沢グループの会長宅に着く


そこは高級住宅地が集まる区域のようで高い塀で取り囲まれた屋敷が点在しており大沢邸もそんな家の一つ。


「皇女はさほど御苦労をされていなかった御様子」


運良く良い方に助けて貰い安心する。


なにしろ皇女の美貌はこの世界では毒


最悪何処かの男に囲われ酷い目に会っていないか気が気ではなかったのだが無駄な心配だったようだ


青龍国の皇女を穢され黙っている訳にはいかずそれなりの報復はする心算だったが


何故あのようなお姿になったのかは分からないがアオイ様の顔になられていたお陰がで日本ですんなりと受け入れられたのだろう


しかし先程、皇女に口付をしていた少年は恋人なのだろうか


口付を怒ってはいたがそんなに嫌がっている様子ではなかった皇女


あの少年が居るから迎えに来た私を拒絶したのか


そう思うと言い知れぬ怒りが沸く


そんな事は許せない


皇女には青龍国に戻りアオイ様を目覚めさせて貰わねばならないのだ


例えあの少年を愛していたとし……


そこでハッとする。


愛し合う二人を引き裂く


あまりの皇女の意志を無視している自分勝手な考えに唖然とする。


「だがアオイ様は皇女の母君 一旦は戻って貰わねば……」


先ずはハクと会い事情を聞くのが先決


辺りには人っ子一人おらず屋敷の裏の塀を飛び越えて庭に飛び込む。


良く手入れされた庭は広く、取敢えず木の陰から屋敷を伺う。


大きなガラス張りのテラスが見えるが人の気配があまりせず静か


目を瞑りハクの気配を探る。


神力は封じられているがハクとは常に側にいて心話で意思疎通をしていた為に出来る事


ハクを直ぐに感じ思念を送る。


『 ハク その屋敷に居るのは分かってます。 出て来なさい 』


『 ユンロン!!!! 』


驚いて飛び跳ねたような反応が直ぐに返って来る。


『 突然いなくなり心配しましたよ 』


『 ゴメンナサイ デモ レイカ イッショ 大丈夫! 』


嬉しそうに言うハクに苦笑するしかない


『 それより 外に出られますか? 』


『 ウン! 』


間もなくすると2階の屋根を伝い白い影が庭に降りて来るのが見え木の陰から手を振る。

「ハク、こちらです」


白い猿は人を気にする事無く真直ぐにこちらに来ると肩に飛び乗る。


『 ユンロン 来たよ 』


「それでは皇女様のご様子を教えてくれませんか」」


『 レイカ ハク ノ 事 思イダシタ! 』


私の肩で飛び跳ね嬉しそうに報告するのを聞き矢張りかと思う


「記憶を全部思いだしたのですね」


『 ソウ ダケド レイカ ユンロン 会イタクナイ 言ウ ダカラ 帰レナイ 』


会いたくない!?


ハクの言葉に激しく動揺してしまう


どうして……私は皇女様に嫌われていたのか


何故?


矢張り初めてお会いした時に真珠の髪飾りの事で大人げなく詰め寄ってしまったせいだろうか


最後には目の前で皇女様をむざむざ攫われ救えなかったのを恨んでらっしゃるのかもしれない


思えば情けない姿ばかりを晒してしまっている……


私がお迎えに上るべきではなかったのかもしれない


『 ユンロン 元気ナイ? 』


「他に私の事を何か仰っておられませんでしたか…」


『 会イタクナイ ダケ ………泣イテイタ ユンロン レイカ 虐メタ? 』


「 ……… 」


皇女様を泣かせてしまったのか私は……


想像外の事を言われ思考が固まる。


先程お会いした時の反応といい本当に嫌われているのだと知った今、皇女様にお会いするのははばかれるが このままでは連れて帰れない


暫らくどうすればいいか考える。


ポケットから手帳を取り出し自分の携帯番号を書き電話してくれるよう書き添えるとそれをハクに渡す。


「これを皇女様の部屋の分かりやすい場所に置いて来て下さい」


『 イイヨ 』


ハクはメモを受け取りヒョイと肩から飛び降りるとそのまま植え木を伝い屋根に登り消えて行くが暫らくすると戻って来る。


『 置イテ来タ 』


「御苦労さま。それではお礼に甘い物でも御馳走しますよ」


『 本当! 』


「ええ…… 少し遠い所ですがとても美味しいですよ」


『 デモ レイカ 心配スル 』


「帰りは車で送りますから大丈夫」


『 ナラ 行ク 』


そう言って私の腕に抱きつく


ハクには悪いが私と来て貰わねばならない、皇女様が私を避けるのなら無視出来ないようにハクを連れ去り自ら接触していただく


皇女様とハクの繋がりは深い


今以上に嫌われてしまうだろうと思うと胸が痛むが仕方ないだろう…アオイ様を 陛下をお救いしたい この不幸な連鎖を打ち切るのだ。


その為にも私が悪者になろうと決意する。










『 ユンロン! ハク 帰ル!! 』


「駄目です。皇女様から連絡が無い限り帰れません」


『 ユンロン ノ バカ 意地悪 嘘ツキ 嫌イ 』


ホテルに戻り甘いケーキを沢山食べたハクは満腹で直ぐに昼寝をし2時間程で目覚めるが帰れないと知ると怒りだす。


「何を言っても無駄、皇女様には青龍国に戻って戴かねばならないのです」


『 レイカ 泣ク ハク 戻ル 』


「あまり騒ぐと体を縛るしかありませんよ」


そう脅すと漸く黙るが反対に一言も話さなくなり、この小さな友にも嫌われてしまったようだ


少々切ないが皇女様を説得する為


力ずくで連れ去るのは避けたい


そして静かなホテルの一室で静かにベッドに横たわり皇女様の連絡を待っていると携帯の着信音が鳴り響く


ピリリリィー ピリリリィー ピリリリィー


相手の表示は非通知


皇女様だと思うと緊張しながら携帯を取り通話ボタンを押す。


ピッ


「私は大沢紫と申します。貴方はユンさんですか」


皇女ではない


それは知らない女性の声だと知ると何故か安心してしまう


大沢紫――確か大沢会長の孫娘で皇女様と親交があると聞いていた。


「―――そうですが何か御用でしょうか」


「葵ちゃんの事です…… 貴方にはレイカちゃんと言えば分りますよね」


「ええ」


「葵ちゃんは今酷く動揺してますので私が勝手にユンさんに電話しているのを分って下さい」


「皇女様は私に会いたくないと言っているのをハクから聞きましたが本当でしょうか」


「ええ でもその理由は私からは話せません」


先手を打たれてしまう


「皇女様にお会いしたいのですが」


「今は無理です。でも今は向こうに帰る決心をしている最中なので次の連絡があるまで静観して欲しく連絡しました」


「貴女は私達の事情を知っているのですか」


「葵ちゃんからはあらまし程度ですが教えて貰いました」


皇女様が話されたなら信用置ける女性なのだろう


「分かりました…… 貴女を信じ待ちましょう」


「有難うございます。 それと出来ればハクちゃんを返して欲しいんですけど」


「皇女とお会い出来るまでハクは返せません」


「……分かりました」


「それより貴女とは会えないでしょうか」


少しでも皇女様の気持ちを知る為にこの娘を籠絡してもいい


「ユンさんは魅力的過ぎるのでお会いするのは危険ですから遠慮しますわ」


素っ気なく返事をしそのままプッりと通話を切られてしまう


どうやら中々手強いお嬢様のようだ


「いいでしょう……私は待つ事にしますがそんなに気は長くないですよ」


手の携帯をポケットに突っ込みラウンジで酒を飲む事にする


こんな時は酒でも飲みたい気分だ


「ハク 今夜は帰らないかもしれませんがイイ子にお留守番してて下さいね」


『 …… ユンロン ノ エッチ  』


私の言葉で察しているらしい


「男はそう言う生き物ですよ」


『 ユンロン 嫌イ 』


「私はハクが大好きですよ」


そう言い残し部屋を出る。


幾らハクでもここから都会の雑踏を抜けてあの屋敷に帰るのは無理だとわかっているだろう。部屋には高級フルーツも沢山置いてあるので心おきなく酒を飲む事にし、久しぶりに女性でも抱かねばやっていられない


皇女様に疎まれているかと思うとやるせない


出来ればもう一度最初からやり直したいくらいだ


今夜だけで全てを忘れタガを外そう思うのだった。









最近一話一話が短めです。

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