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龍王の娘  作者: 瑞佳
第三章 日本編
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秘められた想い






漸くパーティーから解放されて部屋に戻れる。


アオイと言う少女の事は大沢社長から情報が引き出せたのだが


二年前に大沢会長が海岸で助けた記憶喪失の少女だそうで葵と名をつけ身元引き受け人として引き取って生活しており


パーティーに参加していたが途中気分が悪くなり会場を出たらしい


二年前


皇女様に符合するが容姿が違う


だがアオイ様とそっくりな顔と名前―――出来過ぎている。


記憶喪失といい



ハクは皇女様だと言い張っていたのを疑っていたが本当に皇女様なのかもしれない


なにしろ皇女様は不思議な力をお持ちになっている。


人間ながら何らかの力がおありになるのかもしれない。


「アオイ様 必ず皇女様をお連れします……お待ち下さい」


もう少しでアオイ様を目覚めさせられるかと思うと気がうわつく


皇女様をお連れし一目お会いしたい


アオイ様は陛下の伴侶なれど未練を今だ引き摺る自分


どんな美しい女や男を見てもアオイ様を忘れられない


あの方の何がこんなに私を魅了するのだろう


皇女様同様に不思議なアオイ様


「アオイ様…」


アオイ様を想うと体が熱くなり


久しぶりに一肌寂しく誰かを抱きたくなるがハクが待っているのでそうもいかなかった。

部屋に前に行きカードキーを差し入れて真っ暗な室内に入る。


「ハク 戻りましたよ」


直ぐに飛び出して来ると思ったが部屋は静寂に満ちていた。


「寝てしまったんですかハク」


闇に中で寝室やクローゼットを調べるが居ない


ユンロンは漸くハクが部屋から居なくなっているのに気が付く


「まさか皇女を捜しに」


否…私が捜しに行っているのに無謀な事をする子ではない


「どういう事だ……ハクは皇女を見付けたのか?」


一体どこへ行ってしまったのだろう


エレベーターはカードキーが無い限り降りれない


すると同じフロア―となるが


その時、エレベーターを同乗した青年大沢尚吾を思い出した。


彼は何故パーティーの最中にこの最上階に居た?


ハクが皇女だと言う少女の葵が皇女だと仮定出来れば繋がる。


「ハク 皇女を見付けたんですね」


仮定は確信に変わる。


「待ってて下さい皇女様 近い内にお迎えに上がります……」


ユンロンは暗闇の中で悠然と微笑むのだった。








―――大沢邸―――


私達が屋敷に戻り暫らくするとおじい様も後を追って帰宅して来たので慌てて葵ちゃんをベッドで寝た振りをして貰う


微かなノックと共に入って来たおじい様は着替えもしないまま様子を見に来たようだ。


「葵はどうだ?」


「はい、さっきまで情緒不安定でしたけどホットミルクを飲んで寝かしつけた所です」


「そうか…」


「おじい様、今夜は葵ちゃんに付き添ってもいいですか」


「そうしてくれ」


そう言い静かに部屋を出て行ったがその後ろ姿は苦悩に満ちているように感じた。


それから小一時間ばかりして現れたのが尚吾


ノックもせずに女の子の部屋に飛び込んでくる。


入る前からドタドタとした足音で分かっていたので葵ちゃんを急いでベッドに潜り込ませていた。


「紫! 何で葵と帰った事を知らせないんだ」


「お姉様でしょう、尚吾。 葵ちゃんが目を覚ましたらどうするの……さっきまで怯えてたのよ」


「!… ゴメン 」


途端に意気消沈するおバカな弟


「もう少し相手を気遣う繊細さは無いのかしら~ こんな自己中だと葵ちゃんも愛想尽かすわね」


「うっ……」


「それより葵ちゃんは私が付いてるから、尚吾は帰りなさい」


異世界の話を色々聞いてた途中なので邪魔をされ少し不機嫌な私


「少し話があるんだけど」


珍しく私に綴る様にみる尚吾


久しぶりにそんな目で見られ少し不気味


小さい頃なら可愛かったけど立派な体格の弟にそんな目をされてもキモいとしか言いようがない。


お姉様にそんな表情は効かないが葵ちゃんに失恋決定かと思うと少し憐れ


「いいわ、廊下で話しましょ」


尚吾を廊下に連れ出して話を聞く


「モデルのユンが来たんだ」


「!? どういう事」


ユンの名前が出され驚く


「パーティー会場に紛れ込んで二年前に行方不明のアオイを捜してるって… これってやっぱり葵だよな… 葵はどっか行っちまうのか!」


尚吾は葵ちゃんが居なくなる事ばかりに気を取られているよう


「なんて答えたの」


「知らないって」


やっぱりこの子はバカだ


会場にはおじ様達も居るのにユンが葵ちゃんの事を聞けば一発で嘘だと分かり不信がられ一層注意を引いてしまう、しかもハクちゃんが居なくなった今葵ちゃんに辺りをつけたかもしれない


こんなに早くばれるのは想定外


だけど顔が違うし記憶喪失だと押し切れば誤魔化すのは容易


葵ちゃんがユンに会いたくない乙女心は良く理解できる。


自分の母親を好きだった男が好きになっちゃうなんて不毛かも、葵ちゃんの顔はその母親そっくりなんだからその心境は複雑だろう


本当の自分では無く母親を重ねて視られるのは凄く残酷よね


取敢えず葵ちゃんが本来の姿に戻る事が大事だけど本人もどうすればいいのか分からないらしい


葵ちゃんの心が落ち着くまで


それまでユンを会わせないように邪魔しなくっちゃ


「確かにユンは葵ちゃんの関係者かも。 周囲に気をつけた方がよさそうね」


「やっぱりそうなのか…」


悲壮な顔をする尚吾


明らかにユンに適わないと顔に出ている。


「確りしなさい尚吾。 葵ちゃんの記憶が戻ってないからユンが知り合いか分からないでしょ、それより今は葵ちゃんにあまり刺激したくないから怪しい人物を近づけないよう気をつけるのよ」


「そうだ。葵を守らないと!」


私の一言で奮起し始める。


単純すぎて本当に私の弟かと疑ってしまう。


あまり当てにはならないけど居ないよりはましよね


それからサッサと弟を追い返して部屋に戻ると葵ちゃんがハクちゃんを抱き締め心配げ


ああ~ なんて可愛い!


一層の事尚吾とトレードしたい


「紫さん 尚吾さんどうしたんですか」


「それがパーティー会場にユンが現れて葵ちゃんを捜してたみたい」


「ユンロン様が…」


真っ青な顔になる葵ちゃん


「会う前からそんなに動揺しちゃ駄目」


「そんなの無理です。まだ会いたくない……」


フルフルと頭を振る。


「でも何時までも逃げる訳にわいかないのよ。 二年間も葵ちゃんを捜してくれた人なんだから」


「でもこんな姿では嫌」


とうとう泣きだしてしまう葵ちゃん


こんな弱々しい葵ちゃんは初めて…恋は人を臆病にするって言うけど


強かな女ならその顔を使い好きな男に迫ればと思うだろう


「それじゃあ取敢えず外出せず、学校も車で送り迎えして貰うようおじい様に頼みましょう。ユンは今は日本で一番有名人の一人で一般の女子高生においそれと近づけれないと思うから少しは時間があるわ」


「はい…」


「う~ん… こればかりは葵ちゃんが強くなるしか無いんじゃない。私も応援するからどうすればいいか考えよ」


「有難うございます紫さん」


そう言って抱き付いて来る葵ちゃんの背中をさすり、こんな妹が欲しかったとつくづく思うのだった。


それから夜が明けるまで葵ちゃんの生まれた世界の話を聞く


此処とは違い神様が実在しており葵ちゃんのお父さんは龍王でお母さんは異世界の人間の男性!しかも葵ちゃんは卵から生まれるのでお臍が無いのだと納得


「もしかしてお母さんのアオイさんてこの世界の人なんじゃなあい」


「紫さんもそう思いますか 私もそうじゃないかと考えてたんです」


「アオイもレイカも日本人の名前よ。お母さんの名字が分かれば親族も捜せたんだけど残念」


「母様の」


どういう理由でアオイさんは異世界に渡ったんだろう?


狭い結界に閉じ込められているとか父親に殺されそうになる話を聞く限り幸せとは言えない


そんなアオイさんと娘の葵ちゃん


過酷な運命に流されている二人


何とか幸せになって欲しいと願わずには居られなかった。








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