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龍王の娘  作者: 瑞佳
第三章 日本編
54/78

尚吾の不安







コンビニで食糧を購入してホテルの庭園に急ぐがハクが何処に行ったのか見当たらない


恐らく久しぶりの外ではしゃいでいるのだろう


賢い子なので迷子になる心配もないと思うのだが


仕方なくライトアップされた庭を散策していると人のざわめきが聞こえてくる方を見れば白い大理石のテラスに会話を楽しむ人々が見え広間でパーティーでも催されているようだ

「まさか……あそこに紛れ込んでないでしょうね」


少し嫌な予感がして近ずく


1m程高いテラスを伺うが男女が各々いい雰囲気で話しあって騒ぎが起こっている気配は無く安心していると白い影が上の方から降って来る。


『 ユンロン ユンロン! 』


ハクが慌てた様子で跳び付き肩に乗り耳元で喚きだす。


「そんなに慌てて、余程お腹が空いたんですか」


『 レイカ ジャナイ レイカ ガ イタ!! 』


「皇女じゃない皇女?? 何を言ってるのですか」


『 顔ガ 違ウ デモ 匂イ ト 声ガ レイカ 』


「顔が違うなら別人でしょ」


『 ハク 間違ワナイ!!  デモ変……顔ガ アオイ 何故??? 』


「アオイ様の顔とはどういう事です?」


『 レイカ アオイ ニ ナッテイタ 』


「どういう事です…詳しく話して下さい」


ハクはユンロンにパーティーでの出来事をたどたどしく話す。









「それではその少女はアオイ様そっくりでしかもアオイと呼ばれてたんですか」


『 ウン 』


「しかもハクの名前を知っていた』


『 ウン 』


「でもハクの事を良く覚えていなさそうだったと」


『 ソウ… 』


ハクはこの世界の言葉をあまり理解していない。何しろ言語が雑多で次々と国を渡って行ったので無理もないのだ


ハクは皇女だと確信しているらしいが人間の皇女が神力も無くどうやって姿を変えらるのかと疑わしいが取敢えず胸元にある龍核を取り出してみるが矢張り何の反応もない


「近くにいるなら龍核が反応していますよ」


ハクに龍核を見せる。


『 デモ 絶対 レイカ 』


珍しく頑固に言い張るハク


しかしアオイ様に似ており名前までアオイ


もしかするとアオイ様の血を引く遠縁の娘なのかもしれない。


『 ユンロン! オ願イ レイカ ニ 一度 会ッテ! 』


必死に頼み込むハク


思えばこれが初めての手掛かりらしきもの


長年皇女の側に居たハクの言葉は無視できない


決してアオイ様に似ている少女に興味がある訳ではない


……


「分かりました一度会ってみましょう」


『 ユンロン 有難ウ!! 』


そうと決まればこの恰好ではパーティーに潜り込むのは難しいので一度部屋に戻り着替える事にするのだった。








葵がまた倒れてしまった。


俺が追いつめてしまったせいなのか


思い出すななんて言った所為で


だけど嫌だった……葵が記憶を取り戻し何処かに行ってしまいそうで


倒れた葵を抱え直ぐ親父に言って部屋をとって寝かして貰い付き添っていると心配した爺さんと紫が駆け付ける。


「葵は大丈夫か、一体何をしておるんだ尚吾! 一度ならず二度までも」


「おじい様、声を押えて下さい。葵ちゃんが寝てるんですから。 それより尚吾、葵ちゃんが倒れた時の状況を教えて」


紫に言われ事情を説明する。


葵が有紀にテラスに連れ出されるのを見かけ急いで追いかけると直ぐさま有紀一人が広間に戻って来たが安心できずテラスに出て葵を捜した。直ぐに葵が見つかり駆け付けると葵の腕に居た白い物が驚いたように木に飛び付くのが見え、葵はそれが自分の猿のハクだから捜してと言いだ出したのを止めた。


「俺はこれ以上記憶を取り戻して欲しく無くって辛い記憶なんか思い出すなって言ったんだ……そしたら真っ青になって悲鳴を上げて倒れた。 俺の所為だ…… 」


「……本当に白い猿はいたのか」


爺さんが鋭い目つきで聞いて来る。


「白い小さな影しか見てませんが猫じゃなかったです」


「でもこのホテルの敷地に猿が居るなんて変ね。宿泊客の誰かが持ち込んだのかしら……おじい様調べましょうか」


紫の提案に爺さんは苦い顔で考えるが


「……否 葵をこれ以上辛い思いをさせたくない。 暫らく葵に付いていてくれ、わしは会場に戻らねばならん」


「はい分かりました。おじい様」


そう言って送り出す。


「邪魔よ」


紫は俺を押し退けて葵の枕もとの側に座り顔をしげしげと眺める。


「なんて可愛い寝顔 その上賢いし私が男なら絶対お嫁さんにしちゃうのに。 この際葵ちゃんが男でもいいわ」


うっとりと見詰める目は本気が伺える。


「バカ言うな。葵は俺が嫁さんにするんだ」


「脛っ齧りのガキが生意気よ。 葵ちゃんが私の妹になるから協力するけど本来は尚吾なんか近づけたくもないんだから」


「俺の何処が悪いんだ」


成績だって今回一番とったし顔だってイケてるし将来も約束された俺の何処が駄目なんだ


「おバカだし、女にだらしが無い。 有紀より少しましなだけよ」


「今は葵一筋だし、あんな無節操と一緒にするなよ」


「でも将人さんに引き続き有紀まで興味を持っちゃったから拙いわね」


「将人さんが? 紫の勘違いだろ」


将人さんは何時も連れ歩くのは派手な美人、しかも葵とは十歳近く年が離れてる。


「あの男はおじい様とおじ様の血を確実に引いてるの。 女性の好みが一緒なのよね……優しげなたおやかな雰囲気の女性が好きなのよ。伯母様って葵ちゃんとイメージが被るでしょ」


確かに伯母さんは清楚な細身の体で静かな女性で艶やかな美人ではないが上品な綺麗な人で葵も外見はそうだが中身は結構ハッキリした性格で容赦がないが優しい女の子だ。


「でも将人さん葵に嫌味ばっかり言ってるぞ」


「プップップ~ あいつは好きな子を虐めちゃうお子様なの。 昔からそれで好きな子に嫌われて寄って来るのは派手な女ばっかりという可哀想な男なの。 さっきだって私に尚吾と葵ちゃんが付き合ってるのとかしつこく聞くんだから笑っちゃう~」


必死に笑いを堪える紫をみて少し将人さんに同情するが俺のライバルではなさそうだ


それよりもっと厄介な問題がある。


「葵は記憶を取り戻したらどうなるんだろう」


「人それぞれ見たいよ。過去を思い出して新しい記憶を忘れてしまったり、両方とも覚えている人もいるみたい」


目を覚まして記憶を取り戻していたら… そう考えると恐い


「葵に忘れられたら俺どうしよう」


「バカね~ もう一度最初から始めればいいのよ。 でもおじい様も尚吾と同じで葵ちゃんにこのままでいて欲しい見たい」


「本当の孫以上に可愛いみたいだしな」


「だけど白い猿の飼い主が葵ちゃんの過去を知っている可能性があるんだけどどうしよう?」


小悪魔のように唇を上げて俺を伺う


「調べるのか」


思わず紫を睨む


「そんな怖い顔しないの~それは葵ちゃんが決める事よ。それより尚吾はパーティーに戻ってお父さんに付いてなさい。うかうかしてると従兄に葵ちゃんを奪われちゃうかも」


爺さんのお気に入りの葵


あの二人も葵を狙って何かしらの行動をして来るかも知れないし、爺さんはそれなりの男じゃないと結婚なんて許してくれなさそうだ


「ぐっ 葵が目を覚ましたら連絡くれよ」


「分かったわ」


仕方なく紫に葵を預けてパーティー会場に向かう事にするのだった。








エレベーターの前に行くと丁度一人の客が乗り込もうとしていた。


「すいません!」


先客は待ってくれ、急いで乗り込む。


「有難うございます」


「いいえ」


礼をいいながら同乗者を見るとギョッとしてしまう。


背は俺より高いぐらいだがスタイルが抜群によく足の長さが半端無い


顔はサングラスで隠されているが間違いなく美形


細身のスーツをきめ普通ならホストぽくなりがちだがこの人はエレガントに着こなし別格

同じ人間というより精巧につくられた生きたマネキンのようだ


「何階ですか?」


涼やかな声が耳に入りハッとする。


「あっ! 二階をお願いします… /// 」


初めて男に見惚れてしまっていた。


それから直ぐに二階に着き何故か男も一緒に降りてそのままパーティー会場まで同行者のように着いて来る。


その時は招待客だったのかと漠然と思っただけだった。










運良くパーティー会場に行く青年と一緒になり会場の入り口も顔パスで疑われる事無く潜入出来た。後はアオイと言う少女を捜すだけだがアオイ様の顔を捜すなどいとも容易いと考えていたのだが思ったより人が多い


しかも引っ切り無しに声を掛けられ、女性に取り囲まれてしまう。


「あのお名前を教えて下さい」


「メール交換お願いします」


この世界の女性は積極的で物おじしない


流石に亀王妃様の故郷と言ったところだろうか


「申し訳ありませんが人を探してますので」


そう言って振りきるが後を着いて来るので益々目立ち会場がざわつき始めてしまう


そこにホテルのスタッフに目を付けられてしまい呼び止められてしまう


「お客様、申し訳ありませんが招待状をお見せ願えませんでしょうか」


此処は観念するしかないだろう


サングラスを外し勝手に入って来た事を謝り退参し、フロントでチェックして行くしかないだろう


「すいません。 知り合いがこの会場に入って行ったのを見かけ悪いと思ったのですが無断でお邪魔してしまいました」


その途端更に会場がざわめく


「きゃーー ユンよ!」


「何でユンが居るの!?」


「本物!」


「サイン!」


「写メ! 誰か写メ撮って!」


女性達が凄い勢いで押し掛けてくるので流石のユンロンもギョッとする。


なにしろ青龍国ではこのようにあからさまに女性が寄って来るなどあり得ず、しかも集団に取り囲まれるなど初めての経験


なっつなんですか… この女性達は!!


ホテルスタッフの男達が騒ぎを押えようとするが激流にのまれる木の葉のよう頼り無い


だが


「何をしておる! 創立記念の祝典をなんだと考えておる。 アイドルのコンサート会場ではない! 騒いだものは直ぐに退場させろ!!」


騒然とする会場に老人の一喝が響き渡ると途端に水をうったように静まり返ってしまう


そしてホテルスタッフ達が数人でユンロンを取り囲む女性達を次々会場から出て行くように指示して行くと先程とは打って変わり女性達は顔を青褪めさせ離れて行くのだった。


まさかこんな騒ぎになってしまうとは思わなかった。


これは謝罪だけで済むだろうかと考えているとスタッフの男が近寄り


「お客様、会長がお会いしたいそうです。 御足労願えませんでしょうか」


騒ぎの張本人ながら丁寧な対応だった。


男の後ろに付いて行くと眼光の鋭い老人が立っており此方を睨んでいた。


恐らくこの老人がこのパーティーの主催者なのだろう


自ら老人の前に出て謝罪をする。


「私はユン・緑川と申します。勝手に会場に入り騒ぎを起こし申し訳ありませんでした」

「確かに迷惑だ。早々に引き揚げてもらおう」


「有難うございます」


思いのはか謝罪だけで済み一礼して立ち去ろうとすると


「会長、この方は今話題のモデルのユンさんですよ! 是非このパーティーに参加して貰いましょ」


老人の側にいる男が引きとめて来る。


「モデル?」


「このパーティーに参加してもらえばホテルのPRにもなりますから」


「……よかろう。わしは葵が心配だから後をお前に任せよう」


アオイ!


ハクが言っていた少女だろうか


「分かりました。後は憲明と二人でも大丈夫ですから御安心を」


「うむ」


老人はチラリと私を見るがそのまま会場を後にして行った。


「ユンさん、私はこのホテルの経営者の大沢孝明と言います。こんな有名人に会えるとは光栄ですよ」


「いいえ、私の方こそご迷惑を掛け申し訳ありません」


握手を求められ返すと若干頬を赤らめる男


「しかしポスターの貴方も美しいが実物はそれ以上ですな…女性社員が我を忘れ騒ぐのが分かります」


「男の私美しいなど言葉の浪費、この会場にも美しい女性は沢山おります」


そう言って彼の隣にいる着物を着た美しい婦人の手を取りそこ手に口付をおとす。


「マダムのようなお美しい女性にお会い出来光栄です」


「まぁ… /// 」


それを見てギョッとする大沢氏


「ゴッフォン それは私の妻の蓉子です…」


「それは羨ましい、こんな美しい人を妻に娶るなど」


「いや そんな~ 」


それから色々な人間を紹介されるがハクの言った少女が居ない


大沢氏から子息を紹介されエレベーターで遇った青年も紹介された。彼も大沢グループの創業者家族の一人だったようでそのお陰で顔パスだったようだ。


「先程はどうも…大沢尚吾です」


「此方こそ。少々貴方を利用してしまい申し訳ありません」


「僕もモデルのユンが付いて来るなんて思いませんでした。 でも何故此処に入りたかったんですか?」


見ればまだ若く恐らくアオイという少女と年齢が近くもしかすると知っているかもしれないし老人が言っていたアオイの名もある。


「ある少女が此方に入るのを見かけたので少し強引な事をしてしまいました」


「へー ユンさんの知り合いですか」


「ええ アオイと言う少女なのですが」


「アオイ!?」


「はい。 二年前に行方不明になった知り合いの少女に酷く似た娘を見かけたので確認したかったのです」


青年は少し顔を青褪めさせるが平静さを装うとしていた。


「……知らないな… アオイなんて良くある名前だし」


「そうですね。これだけ会場を見ても見つかりませんでしたし私の勘違いだったようです」


青年は視線をそらしながら


「用事を思い出したんで」


そう言って離れて行く青年は確実に怪しい


アオイと言う名前で容姿は言わなかっが会長である老人がアオイを名を出したのに親族であるあの青年はアオイを知らないと言う。


何故だ?


名前だけなら同じ少女を知っていると言っても良さそうなのに


慌てて人混みに消えて行く青年を追って行きたかったが次から次へと声を掛けられてこの場を抜け出したいが、先程の事を考えると暫らく付き合うしかないと諦める。


しかし少女の手掛かりは得た今じっくり調べようと思うユンロンだった。









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