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龍王の娘  作者: 瑞佳
第三章 日本編
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デートの結末






水族館は知識で知っていたけど実際に見ると感動してしまう。


「何この可愛い魚! カクレクマノミ  イソギンチャクが住処なんだ面白い」


色取り取りの熱帯魚が大きな水槽の泳いでいる姿は幻想的で見ていても飽きない


アザラシ館では水中ホールへ楕円型をしたアクリル製水中トンネルを通ると私の周りに6頭のアザラシが寄って来てアクリルガラス越しから反対に此方を観察されている様な錯覚がした。あまりにアザラシが可愛くって1時間近くそこに留まっていると尚吾さんが拗ね出す


「アザラシばかり構って俺が居るの分かってる……」


「だって水族館って魚を鑑賞して楽しむ所でしょ?」


アザラシが拗ねても可愛いけど尚吾さんがすると残念な王子様になってしまう


「うっ そうだけど…… 」


「そうね少し疲れたから冷たい物が飲みたいわ」


そう言い尚吾さんの腕に手を回した途端に機嫌を直してしまい結構扱いが簡単だど初めて知る。


時間を見ればお昼少し前だったので水族館の水上レストランで早めの昼食をとるけどけど此処でも支払いで揉める


「俺が払うから葵は財布をしまえよ」


「駄目よお互い学生なんだから割り勘」


「入館料も割り勘だったろ。此処は俺に払わせろ」


確かにデートは男の側が負担する様だけどお互い脛をかじっている立場


でもあんまりごねるのも雰囲気が悪くなりそうだ


「ここは自分で払うから、その代わり売店にあった可愛いアザラシのヌイグルミ買ってくれる?」


尚吾さんの顔を覗きこむようにお願いすると


「 ///  分かった 」


早速、お土産ショップに行くと可愛い色んな種類が揃っており中くらいの白いアザラシのヌイグルミを手に取ろうとすると尚吾さんが一段上に置いてある大きい方を取るとサッサと会計を済ましそのまま私に渡してくれる。


「初デートの記念」


「ありがとう……」


白いフワフワのヌイグルミを抱き締めるとと何か懐かしい感じがよびおこされ、頭の中に真っ白な愛らし子猿のイメージが浮かびあがる。


「ハク?」


ハク???


「葵 大丈夫か!」


「へっ!?」


「おっ俺の所為か!?」


頬が濡れる感触で漸く自分が涙を流している事に気が付く


「あれ… どうして涙が…」


急いでハンカチを取り出して涙を拭くが止まらず、目の前では尚吾さんがオロオロしていると


「お兄ちゃんがお姉ちゃんを泣かしてるーーー」


「いけません」


小さな女の子がそう叫ぶと母親が急いでその子を抱き上げ離れていく


何しろ周りには家族連れが大勢おり何時の間にか注目の的


二人で慌てふためいてその場を離れて外に出ると何時の間にか涙が止まっていた。


「ゴメン…突然泣いたりして」


「訳を聞いても良いか?」


「このヌイグルミを抱いて白い子猿を思い出したの……多分 記憶を失う前の記憶だと思う」


尚吾さんは驚いた顔をし


「他にも何か思い出したのか」


顔を横に振る。


思い出したのは白い毛のフワフワの子猿で目が赤かった。きっと私の大事な子だったような気がする


名前はハク


だけどそれ以外は何も思い出せない


どうして思い出せないの


頭の中が真っ白になる。


ヌイグルミを抱き締めて言い知れぬ恐怖が襲い体が小刻みに震える。


私は誰なの


知りたいけど知るのも恐い


たった一人でこの知らない世界に放り出された孤独と恐怖がぶり返してくると


その恐怖が止まらなくなる。


怖い 怖い 怖い 母様 怖い 助けて


「嫌 一人は嫌 母様 母様は どこ 私は 私は誰……  」


夢の男が私を殺そうとする姿がフラッシュバックするように思い出さる体が引き攣る


『 余の血を受け継いだ事を呪うがよい 』


『 例え同じ姿に成ろうと貴女は……様には成れない。 愛されなどしない 』


耳にささやかれる嫌な言葉


「葵 確りしろ! 葵」


「助けて……  たす…け……  」


そのまま意識を失う私



誰か教えて



本当の私を……









突然、葵が意識を失う


驚いて体を支えて抱き上げると急いで救護室に運び寝かせて貰う


仕方なく爺さんに電話すると直ぐさまタクシーを使い帰って来るようどやされてしまった。帰るとさらにどやされそう


葵は暫らくすると意識を取り戻して安心する


「気分はどうだ」


買っておいたペットのお茶を渡すと美味しそうに飲む姿は何時もの葵に戻ったように思える。


「ゴメンね心配させて… 記憶が無い所為かストレスがかかると時たまこうなっちゃうの」


無理するかのように微笑む葵


「俺 知らなかった」


葵は何時も楽しそうに笑っているイメージしかなく記憶の無いのを気にしている風には全く見えなかったが実際は違っていたのだ



能天気な俺は学校でも結構葵を振り回してしまった事を今さら反省してしまう


葵は強い女の子じゃない…


「すまない俺の所為だ」


パイプ椅子に座り項垂れる俺の頭に軽い衝撃


ポッカ!


「尚吾さんは悪くないよ。 それよりアザラシのヌイグルミは?」


「アレは向こうの部屋の隅に置いてある」


「頂戴」


「でも アレの所為で」


あれの所為で記憶の断片を思い出してしまった厄介なヌイグルミ


出来れば2度と見せたくは無い


「もう大丈夫 折角買ってくれたんだもの。 それに気に入っているの」


そう言われて仕方なく救護室の隅に隠したヌイグルミを恐る恐る葵に渡すと嬉しそうにヌイグルミを抱き締める。


「やっぱり可愛い!」


そう言って抱き締める葵の方が余程可愛いくて抱きしめたいが自重するしかない


「それよりイルカショーは何時から、まだ間に合うかな」


思い出したように聞いて来る。


「それが…葵が倒れたから爺さんに電話しちまって、直ぐ帰れとさ…」


「えっえーーー イルカショーが一番見たかったのに!」


「すまん でも葵が心配だから帰ろう」


出来れば見せてやりたいがさっきの真っ青になって倒れた葵を見たら直ぐに連れて帰りたい。


「もうー 皆心配症なんだから。 いいわ帰るけどまた連れて来てくれる」


可愛くおねだりして来る葵に俺はドギマギ


これは期待していいのだろうか


「勿論だ! 今度はここより大きい所に連れてってやる」


「本当! 楽しみ」


暫らくは爺さんの許可が下りないだろうから当分デートはお預けとなると夏休みになるだろう


受験生の自分が恨めしい…出来る姉の所為でそれなりの大学を期待されているので夏休みは夏期講習の合宿に入れられるがお盆は休みだから時間がある。


「なっ… 葵 こんな時にアレだけどもう一回俺と付き合う事を考えてくれないか…」


余裕のない俺はつい口走ってしまう


葵にはもっと大人な自分をアピールしたいのにどうも焦ってしまう


ようは目の前に人参をぶら下げられた馬なのだ


「う~ん…… 取敢えず時折デートする程度ならいいけど、尚吾さんの受験が終わってから真剣に考えてみる」


「それって恋人って事!?」


「ボーイフレンドよ」


今時ボーイフレンド?


ボーイフレンドつまり彼氏なのか?? それってどの辺まで許されるんだろうか


自分の経験で言えばガールフレンドならセックスはOKだったが確かに恋人と言うより彼女


セックスフレンドじゃないのは確か


フレンドだから男友達?


「それって友達レベルか!?」


「もうチョッと上かな… 恋人未満友達以上 駄目?」


そんな心配そうな目で見られると何も言えない


以前よりは立場が向上はしているのであっまり困らせるのはガキ臭い


「取敢えずそれで我慢するけど学校は接近禁止のまま?」


葵は申し訳なさそうにコクリと頷く


俺の所為で葵が女子に虐められるのは避けたいし俺が我慢すればいいのだが寂しい


この時ばかりはモテル自分が嫌になる。


だが葵を手に入れる為なら耐えよう


「それじゃあボーイフレンドとして宜しくお願いします」


大袈裟に頭を下げてお願いするとクスクス笑い手を差し出して来る


「私も宜しく」


ほっそりとした指を握り握手を交わし健全さ100%の付き合いの始まりだったが結構幸せだと思ってしまう俺はどれだけ葵に惚れているか再び認識してしまう。






その後はタクシーを使い爺さんの屋敷に戻ると玄関から爺さんとお手伝いの佳代さんが飛び出して来て俺を睨む


「尚吾 お前が付いていながら何をしておる!」


親父達ですら今だに頭が上がらない爺さんの迫力のある一喝にビビってしまうが葵が俺を庇ってくれる。


「おじい様 尚吾さんは悪くないわ。 発作を起こした私をチャンと介抱してくれたのよ」


介抱…俺的にはもっと別な介抱がしたかった


「旦那様 お小言は後にして取敢えず葵さんを中に」


佳代さんがそう言いつつ俺から葵を引き離すように家に連れて行ってしまい、爺さんは苦虫を潰した様な顔で俺を見ているが勇気を振り絞り声を出す。


「おじい様 タクシー料金の支払いお願いします」


親の脛をかじる俺には数万のタクシー代など払えるほど持ち合わせは無かった。


「良かろう。 お前も中に入って夕食を食べていけ」


「有難うございます」


もう暫らく葵と居られるのは嬉しいが、これから爺さんの尋問が始まるかと思うと憂鬱だ


本当に面倒な女の子を好きになってしまったが後悔はしていない


葵はそれだけの価値がある女の子だ


今までの薄っぺらな恋愛では終わらせない


爺さんにも俺を認めて貰うにもそれなりの大学に入学しないといけないだろう


今夜からより一層受験勉強に勤しむ事のを誓うのだった。












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