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龍王の娘  作者: 瑞佳
第三章 日本編
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初登校







それから私はクラスの女子の殆どから無視に遭うという初歩的な虐めが始まるけど気にしないで淡々と授業を受けて昼食は尚吾さんが来るのが予想でき急いで校舎裏のひっそりとした場所に逃げ込む。


「ドラマや小説だとヤンキ―と言う人種の溜まり場らしいけど居ないのね」


日蔭の校舎裏は狭くてヘンス沿いに木が植えられているだけで煙草の吸殻は無いしゴミ一つ落ちておらず拍子抜け


どうやら現実とドラマは少し違うようだけどこれなら誰に気兼ねする事もなく静かにお弁当を食べられそうだと雑然と置かれている石の一つに座り家政婦の佳代さんが作ってくれた美味しそうなお弁当を食べ始めようとするが


「本来なら友達と机を寄せて楽しく食べる予定だったのに」


あの一方的に想いを押し付ける男の所為で独りぼっちだ


私を好きだと言うならもう少し私の立場を考えてくれるはず!


尚吾さんの事を考えるとムカついて、なんだか食欲が無くなりお弁当の蓋を閉めるが残して帰ると佳代さんが心配するだろうか


思い直してもう一度開けようとすると何時の間にか現れた遠目で私を伺う金髪頭の男子と視線が合う


「あっ ヤンキ― 」


途端に嫌な顔をして私を睨んで来るが別段怖くは無い


でも初対面でヤンキ―は失礼よね


「ゴメンなさい。初めて本物を見たから思わず言っちゃいました」


立ち上がって頭を下げると変な物でも見るように私を見詰めるヤンキー青年


呆れたように溜息をつき踵を返して校舎裏から立ち退くとするので呼び止める。


「私は大沢葵って言うんだけど少しお弁当に付き合って欲しいの。駄目かな」


一人だと食欲がわかないけど二人なら食べれそう


ヤンキ―は振り返って更に私を訝しそうに私を見ると二ヤリと口を歪めて私に近づいて来る。


良く見ればかなりの身長に眼つきはは鋭いが結構な美形で尚吾さんとは全く逆のタイプ


そんな綺麗な顔が何時の間にか私の目の間に迫って来て今にも唇に触れそうになっているので驚いて思わずしゃがみ込みそのままヤンキ―の鳩尾に頭突きを食らわしてやると尻もちを着いて倒れてしまう


「この糞女何しやがる」


糞女……なんだか懐かしい響き???


地面に座り込み私を威嚇するように睨みつけるのを私は仁王立ちになて見降ろす。


「私に変な事をしようとするからでしょ」


ヤンキ―は突然腕を伸ばして長い三つ編みを掴むと自分の方にひっぱるのでバランスを崩しヤンキ―に倒れ込んでしまう。


「キャッ!!」


すると私がヤンキ―を押し倒している体制になってしまい慌てて跳び起きようとするが三つ編みをグイっと更にひっぱられと同時に唇に何かが触れたと思うと美形のドアップ


もしかしてキスされてる!!!!


しかも舌が割って入ろうとするのを阻止しつつ私の膝をヤンキ―の股間に強く押し付けて体重を乗せる


グッリり


「×*@!!!」


声に成らない悲鳴を上げ三つ編みから手を離し股間を押えて痛みにジッと耐えるように動かなくなった。矢張り女の私には理解できない痛みだけどか弱い少女の身ではこうするしかなかった。


「ヤンキ―じゃ無くて痴漢だったのね。犯罪は割に遭わないから欲求不満なら風俗に行た方がいいよ」


そう忠告してあげる。


「バカヤロー 法令で風俗は18歳未満が入店できるか!」


「へー そうなんだ知らなかったわ」


一般常識に自信が無く主に雑誌や小説とテレビから得た知識が多いから今度法律関係の本も読んだ方がいいのかもと思い当り図書室に行こうと思い立つ。


「図書室は何処にあるの」


「何故そこで図書室だ?」


「少し法律を勉強しようと思って」


「……3号棟の2階」


信じられない物でも見るように私を見ながらも親切に教えてくれる。


「有難う。お礼に私のお弁当あげるから、放課後に2のAの教室に返しに来て」


何故か茫然としているヤンキ―にお弁当を押し付けて私は図書室に向かうのだった。










早速図書室で司書の先生からのアドバイスで日本国憲法と民法を初心者向けに解説した本を数冊借りてから教室に戻ると女子には無視され男子はチラチラと好奇心で私を見て来た。


席に座ると三沢君は参考書と格闘しており私にも気付かない無いようで横からこっそり覗いてみると指数不等式の問題


「底3は1より大だから 2x+2 > 4 だよ」


「あっそうか……エッ!!」


驚いたように私を見た途端に真っ赤になり俯いてしまい、つい可愛いと思ってしまう。


朝から尚吾さんやヤンキ―を相手にしてるから癒される。


そうか、これが癒し系かと納得


「ねー 昼休みに大沢先輩が教室に来た」


「うん でも大沢さんが居ないと直ぐに立ち去ったみたい」


目も合わせず小さい声ながらチャンと答えてくれる。


それに意外な事に乃ノ華が話しかけて来てくれる。


「葵はお昼休みどこに行ってたの」


「図書室よ。 それより私と話しても大丈夫」


「平気よ 私は葵から大沢先輩の情報を引き出すスパイだから」


「成程、それじゃあ情報料として放課後付き合って」


「OK 何をするの」


「校舎と部活を見て回りたいの。三沢君も一緒にお願い」


「えっ 僕も?」


「先生に頼まれてたでしょ」


こうして放課後三人で校舎を案内して貰う約束をするのだった。








そして放課後になり三人で教室を出ようとすると廊下に金髪のヤンキ―が立っており、下校中の生徒は一様に彼を避けるように足早に通り過ぎていく。


ヤンキ―君は私を見つけると手に持っていたお弁当を私に投げつけるので慌ててキャッチ

「葵 美味かったぜ」


「食べてくれて有難う」


そのまま素っ気なく踵を返して帰って行くと周囲は呆気にとられた様に私を見てからヒソヒソと話ながら通り過ぎていった。


どうやら新たな話題を提供してしまたようだけど普通を諦めた私にはどうでも良かった。

「ね…… 一年の矢崎と知り合い」


「一年! 年下に呼び捨てにされた」


「……その様子じゃ知らないらしいけど彼にはあまり近づかない方がいいよ」


「ヤンキ―だから」


「ただのヤンキ―じゃ無くって矢崎組ていう暴力団の跡取り息子なの。下手に関わると危ないわよ」


暴力団!つまりヤクザ!


本当に存在するんだと学校生活と言うのもかなり刺激的なんだと知る。


「でも親がヤクザでも矢崎君はただのヤンキ―高校生なんじゃない」


「葵は変わってるのね 普通の反応はこれよ」


そう言って三沢君を見ると廊下に座り込み真っ青だったし乃ノ華の顔も少し引き攣っている。


此処は私立の進学校だから矢沢君はかなり異質なのだろう


どうやら腰の抜けている三沢君に手を差し出す。


「さあ 立って、早く案内して欲しんだけど」


ここでグズグズして尚吾さんに遭いたくない


おずおずと私の手を恥ずかしそうに握り顔は真っ赤になる三沢君を引っ張りあげる


「乃ノ華 これも普通の反応?」


「委員長の場合女の子に免疫の無いチェリー君だから、今時手ぐらいで赤面するのは珍しいわ」


チェリー君? どういう意味か聞きたいけど止めておく


なんだか聞いてはいけない様な気がするし、乃ノ華の言葉により一層顔を赤らめているのであまり良い意味で無いのが分かる。


それから放課後の校舎を三沢君に案内して貰いながら乃ノ華はもっぱら私と尚吾さんの事を色々聞いて来る。


「大沢先輩とは従兄じゃないの」


「遠縁に当たるけど殆ど他人で知り合ったのも最近よ」


「大沢先輩が告ったて話は本当」


「本当だけど断ったわ」


「え~~ 勿体ない。あんな高物件滅多にいないのに」


「私は自己中男は嫌いなの。 どちらかと言うと三沢君の方がタイプ」


「「 えっえーーー 」」


「だって可愛いし、だから乃ノ華も好き」


「それって愛玩動物扱いなんじゃ無い」


冷たい眼差しで私を見る乃ノ華に僕ってペット?と呟く三沢君


「そんな心算は無いけど二人とも友達として宜しくね」


最低でも二人の友達を確保したい私はニッコリ微笑んで内心は必死


「まあいいよ~ 葵って面白いから」


「僕で良ければ」


「有難う!」


私より背の低い二人を嬉しさのあまり一遍に抱き付くと三沢君は顔を真っ赤にさせて今にも倒れそうになるので確り抱きとめてあげる。


そして憧れのメアドを交換する為に携帯の電源を入れて見れば尚吾さんからのメールが一〇通と不在着信の行列


それを覗きこむ乃ノ華


「すごっく執着されてるね」


「メールアドレス欲しい?」


「遠慮しとく。なんだか大沢先輩ってイメージと違うみたい」


どうやらファンが一人減ったよう


一応三沢君にも聞くと大きく顔を横に振って拒否


私も着信拒否を設定して一歩ずつ尚吾さんへの反旗を示してあげるのだった。










大沢老人は夕方になると玄関でウロウロとしている


「旦那様、その様に心配しなくても葵さんは確りしたお嬢様ですから座ってお待ち下さい」


「そうだな……   矢張り車を出して……」


「そんな事をしたら嫌われますよ」


そう言われ老人は諦めた様にリビングに戻って行く姿を呆れながら見送る。


今朝も葵がバスで登校すると言うのに初日だから心配だと車を出すほど葵に対して過保護で昔から仕える使用人たちは変われば変わるものだと驚いていた。


今は一線を退き息子達に経営を任せているが、昔は仕事一筋でここまで大沢グループを大きくしてきた男、側近達には常に厳しく目を光らせて一瞬も気が抜けず恐れられていた。


子供の教育に熱心ではあったが過保護では無くどちらかと言うと厳しかった。


孫に対してもそれなりに可愛がっていたが葵に対する程の愛情は示さないのでまるで老いらくの恋ではと疑うほど


しかし長年勤めている佳代は死んだ奥様が良く愚痴っていた話を覚えている。


『 信じれるあの人は昔の初恋の藍て娘を今でも捜してるのよ。本当に男ってバカね……そんなあの人を愛してしまった私も大馬鹿だわ 』


恐らく葵さんは旦那様の初恋の娘に似ておいでなのだろう


その面影を重ねているのは確かなようだがあくまで肉親への愛情に留まっている。


「それにしても少し遅いかしら」


旦那様の事を過保護と思いながらも五〇代の佳代も葵を孫のように可愛がっている一人であり、少し外を見て来ようと玄関の扉を開けようとすると丁度葵が帰って来る。


「ただいまー 佳代さん!」


元気に明るい葵が玄関に入って来るだけで屋敷中が華やぐように明るく感じる。


「葵さん お帰りなさい。 旦那様が心配そうにお待ちですよ」


「分かったわ。直ぐ御挨拶して学校の話を聞いて貰おうっと」


そう言って慌ただしくリビングに入って行く。


きっと旦那様は今頃新聞を読む振りをして何気なく演じているのが思い浮かびクスッと微笑んでしまう。


「このまま葵さんがズーッと旦那様の側に居て欲しいものだわ」


奥様を五年前にガンで亡くし一人寂しくこの屋敷に住んでいるが笑う事ない侘しい生活が一人の少女が来て以来一転してしまった。


記憶喪失の身元不明の不思議な少女を住まわせると聞いた時は不安だったが葵さんを知るにつれ可愛くて仕方が無くなっている自分


旦那様も同じなのだろう


この温かな幸せが続く事を切に願うのだった。










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