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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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迷走する少女






フォンフー様の宮に戻るとインフー様が迎え入れてくれるが第二皇子様がその背後に張り付いているように立っているのが気に食わないがハクが見当たらない。


「ハクは戻りませんでしたか」


「それが捜してみたのですが何処へ行ったのか見当たらず、トルチェンフー様も見かけなかったそうです」


「そうですか……」


ハクがこんなに側を離れて居るなんて初めての事で不安が益々募る。


「崋山の神仙共が動き出したのかもしれん」


「ハクが神仙の言いなりになってるの」


「分からんがその可能性は高い」


ハクが何か危ない目に遭っていないか心配で捜しに出ようとするがフォンフー様に止められる。


「こんな夜更けに危険だ。それに神仙が動き出したのならば益々奴が追い込まれている事になる。ハクは放っておけ」


「でも……」


「フォンフー様の言う通りです。夜は危険なので明日の朝にでも私と捜しましょう」


「はいインフー様」


もしかすると朝には戻って来るかも知れないと自分に言い聞かせてその場は納得した。


「それより明日はいよいよ奴の運命が決まる日、各国の王も動き神仙も動いているようだがまだ油断は出来ない。何より不気味なのは宮中の虎族どもだ、まるで奴の操り人形のように動いている気がする。第四皇子が俺の顔を見ても睨みも嫌みも言わないなどあり得ん… 一体どんな手を使ってくるのか」


「俺も闇夜に紛れ王宮中を見て回って来たが兵舎が倍近く増やされ中には兵士がぎっしり詰まっていたぞ。本気で戦を考えているようだな。それと後宮に居る父王に会ってきた。ご無事だったが様子が尋常では無かったな」


「どのようなご様子ですか」


「まるで神核を抜かれ人形のように動かなく寝ていた。だ俺が呼び掛けても目を虚ろに開けてるだけ… 後宮は特に黒い気が満ちて側室や侍女達も精気が無かった。そして実際俺も後宮に留まっていると徐々気分が悪くなりまるで神力を吸い取られてるよな気がしたので早々に後にした」


「奴はレイカと同じだと言う事ですか!?」


「少し違う気もするが王達も父王のようにならなければ良いが」


軽そうな第二皇子も珍しく慎重そうに言う。四神国の王の中でも神力が弱い虎王とはいえ王を腑抜けにしてしまう力には空恐ろしい物を感じたようだ。


そして話し合った結果インフー様も第二皇子様も私の血を入れた宝石を体に取り込む事にした。私の血にどれ程の効果が期待できるのかは自分自身疑問


大丈夫なのかな?


明日に備えて各自の部屋で寝る事にした。屋敷全体は既に黒い気を取り去りインフー様が軽い結界を張っているのだった。









寝台に横になるが中々寝つけずハクの事や明日の事を思うと寝つけずにいた。しかも時折思い出すのは青龍国の丞相様の私を睨む顔を思い出し溜息が出る。


何故こんなに気になるのか自分でも分からなかった。


「ハクが居ないと寝れない…」


不安な時でもハクの温もりを感じて何時の間にか寝る事が出来たのに


寝台を抜け出し普段着に着替えて窓から抜け出しハクを捜す事にする。インフー様は朝まで待つように言われたけどハクが酷い目に遭っている様な気がしていても立ってもいられなかったのだ。


窓の鍵を開け外を伺うと衛兵はおらず抜け出せそう。


王宮の中なのだから滅多な目には遭わないだろうという甘い考えがあった。テジャが知れば確実に説教されただろうがこの時の私にはハクの事しか頭に無かった。


王宮の方に向かいハクがいないか庭園を歩きまわるが居るのは時々警護に回る衛兵ばかりで本宮殿に近づく程に衛兵の数が増えて行くので仕方なく諦める事にする。もし相手が虎族ならば神力を奪い逃げれるが人間相手ではその手は効かない。


だけど諦めきれず引き返しながらもハクを呼びながら捜す内に迷子になってしまった事に気が付く


何故なら辿り着いたのが見た事のない建物でしかも数人の衛兵に守られて厳重に警護されており亀王様の滞在されている建物と同じくらいな厳重さ


もしかすると鳳凰国か青龍国が滞在しているのかもしれな。見つかれば唯では済まないので急いでその場を離れ早くフォンフー様の宮を捜そうと急ぎ足で離れるのだが、益々此処がどこか分からない。


「どうしよ… なんでこんなに広いのよー このままじゃ朝になっちゃう」


いい加減疲れて来たので休憩する場所は無いかと彷徨っていると大きな池の側に出た。そして月の灯りに照らし出された東屋を見付けホッとする。


「あそこなら一晩明かせそう。日が昇れば方向が分かるから戻れるはず」


フォンフー様達が気が付かない内に戻らないと怒られてしまう


東屋には椅子もテーブルも用意されており早速椅子に座りホッとするが心細い


「ハク… 何処に行っちゃたのよ…」


今まで色んな目に遭って来たけどハクが何時も側に居て助けていてくれたので一人がこんなに心細いなんて思いもよらなかった。


ハクを捜すのに夢中だったけど辺りは暗く月明かりだけの庭をよく歩き回っていた物だと今さらながらに感心する。しかも風の音一つしない静寂が辺りを包んでおり恐くなって来るのは致し方ない


「ふえ~ん 私ってどうしてこうなんだろう」


小さい頃から猪突猛進と言おうか考えるより先に体が動いてしまう所為で厄介な目に遭っている。泣きたくなるが我慢をし椅子に凭れながら少しでも寝ようと目を瞑ったのだが、誰かが私の髪を手に取るのを感じたような気がして目を開ける。


すると目の前に人影が立っていた。


「エッ!?」


まさか幽霊!?


影は私の髪を掴んだまま私をジーッと見詰めており恐ろしさのあまり身動きが出来ずガタガタと震えてしまう。


助けて…


「貴女は誰です?」


幽霊が話しかけて来るが恐ろしくて声が出ない。


「誰だと聞いてるのです!!」


「ヒィッ!」


苛立つように声を張り上げるのにビクッり体が動くのをそのまま逃れるため椅子を飛び降り東屋を飛び出して逃げ出すが男は直ぐに前に回り込み前に立ちはだかると月明かりの下男の姿が顕わになる。


「あっ!!」


「逃がしませんよ」


冷たい声が耳に響く


月の光に照らしだされた幽霊だと思った男は水色の美しい髪を煌めかされ青い冷え冷えとした氷の目が私を見降ろしていた。


青龍国の丞相様


何故この人が目の前に居るの??!!


「乱暴な事はしません。只教えて欲しい事があるだけ…あの真珠の髪飾りを何処で手に入れたのですか」


「……真珠 ?」


真珠の髪飾りの事を何故知りたがっっているのか訳が分からなかった。


「あの真珠の髪飾りを返しなさい! アレは私が大事なお方に贈った物だ。何処で手に入れたのです!」


まるで私がその人から盗んだかのように問い詰めるように聞く


「あれは母様の物です。盗ってません!」


私も思わず丞相様を睨んで反論する。


幾ら青龍国の丞相様でも証拠も無く私を盗人扱いするなんて許せない。


「母親!? まさかあのお方の… 確かに同じ黒髪… 否、有り得ない…… 」


丞相様は信じられないように呟きながらも私の手を取りネジあげる


「いっ痛い……」


「返してください。アレは私があの方に贈った大事な物…… あの方以外身に付けるなど認めない!」


あの方と言った時の丞相様の顔は切なげで愛する人の事だと分かるが一転して私を見る目はまるで私の存在を許さない様な冷たい目


父様と同じだこの人は


あの夜に戸の隙間から見た初めて見た父親の顔は母様を愛おしげに見る優しい眼差し


だけど私を見た時の父様の目は私の存在を否定した冷酷な眼差し


丞相様は同じ黒髪と言ったから、母様の事を言っている可能性は大きい


あの真珠の髪飾りは父様では無く丞相様からの贈り物だったのだ……だから母様は寝台の下に隠していたんだと納得する。


そしてこの人も母様を愛しているんだと理解した。


母様は愛され私は疎まれている……そう思うと深い悲しみが襲う


「酷い…… 私は…… いけなかったの……  うっうっうーー 」


目からは涙がハラハラとこぼれ落ちる。


私は生まれなかった方が良かったの母様


私は邪魔者?


「泣いたからと言って許しません。早く返せば酷い目に遭わずに済むのですよ」


丞相様は泣く私にもお構いなしに真珠の髪飾りに固執するが、今手元にあるはずも無く無理だと顔を被り振る。


「なんと強情な娘…」


どうやら丞相様は違う風に受け取ったようで更に私の手を捩じり上げ激痛が襲う


「痛い!!」


一層の事、丞相様から神力を奪いこの場から逃れようかと思うが何故だか躊躇ってしまう

何故?


その時助けが入る。


ひゅーーーーうーーんん


「キャァーー!!」


「くっ…」


だがそこへ一陣の風が起こり私と丞相様を引き離しそのまま誰かが私の体を受け止めてくれる。


「レイカ大丈夫ですか」


インフー様の声を聞き抱きとめた相手が誰か分かりホッと安心して抱きつく


「インフー様…怖かった…」


そのまま優しいインフー様の胸に泣き綴る。


「何が怖かっただ、このバカ女!」


どうやら風で私を助けてくれたのはフォンフー様のようだけどかなりご立腹のようだが私は悲しくて泣くしかない


フォンフー様も私よりもう一人の丞相様に向き直る。


「これは誰かと思えば青龍国の丞相様。私の侍女が何か粗相でも?」


「いえ…私の方が冷静さを失ってその侍女に無礼な事をしてしまった様です…」


さっきとは打って変わり声を抑えて話す。


「レイカが何か?」


「その侍女が宴でしていた真珠の髪飾り、アレは嘗て私が然るお方に贈った大事な品。 アレを返して頂きたかっただけなのですが拒否されてしまい取り乱した次第 申し訳ありません」


「あの髪飾りが!? 勘違いでは」


「あのような品が二つとありましょうか」


「確かに、しかしレイカが五歳の頃より母親の物として大事に持っていた物です」


「五歳」


「はい、レイカは今から七年前に人買いに攫われたの私が助け侍女として引き取った者。決して偽りを言うとは思えません」


「七年前… 七年前と言えば陛下が……  一体何が起こっているのだ…… 」


丞相様もうろたえ黙り込む。


「何やら曰くがあるようですがお互い混乱している様子。 夜分遅く明日の戴冠式も控えておりますので後日改めて話し合いましょう。宜しいでしょうか?」


「……最後に一つ聞いていいでしょうか」


「はい」


「その侍女の母親の名前は」


「……確か アオイ… だったな?」


フォンフー様が私に確認を取るように聞いて来るので頷くと丞相様が息を飲むのがインフー様の胸に顔をうずめていても分かった。


矢張り丞相様が真珠の首飾りを贈った相手は母様なのだと知ると胸が軋む


「それでは失礼させて頂きます」


フォンフー様は慇懃無礼に言葉を掛け踵を返し私を抱き上げるインフー様とその場から離れて行くが顔を上げ丞相様を見る気にはなれずインフー様の胸に顔を押し付けたままだった。そして少し離れた木々の間から第二皇子様が待ちかまえていた。


「全く人騒がせなお譲ちゃんだ…それに何時までインフーにくっついている心算だ」


私の襟元をひっぱりインフー様から引き離そうとするので必死にインフー様にしがみ付く

「お止め下さいトルチェンフー様。レイカは泣いてるのですよ」


「チッ」


忌々しそうに舌打ちをする、私に優しくしてくれるのはインフー様だけ


トルチェンフー様は瞑道を開けると次々に潜るのだった。






そして部屋に着くなりフォンフー様の説教が始まる。


「お前はどうしてそう無謀なんだ! しかも明日の大事の前に厄介事を引き起こすなんて信じられない。インフーが結界を破ったのに気付いたからいい物をあのままだったら丞相に何をされていたか分からんぞ! どうやらお前の母親と因縁がありそうだが青龍国はどうなっている?? 龍王は自国の丞相でお前の母親を取り合っていたのか?」


フォンフー様の言葉に驚く


父様と丞相様が母様を取り合ってたから母様をあの結界の閉じ込めていたのだろうか???


「そんなの知らない!」


ずっとインフー様に抱きついたままの私はまた泣きはじめる。


父様なんか大っ嫌い


丞相様も嫌い


母様が妬ましく思う自分が嫌い


泣く私を優しく頭を撫ぜて慰めてくれるインフー様にただ甘えた。


そしてハクが戻らないまま夜が明けるのだった。








レイカが部屋から抜け出し外に出ていたのに気付いたが直ぐに追いかけれなかった。


何故なら私はトルチェンフー様に抱かれている最中で事情を話し体を解放して貰うのに手間取ったのだ。


「クソ! あの譲ちゃんは俺の邪魔ばかりをしてくれる!」


急いで身支度をしているとトルチェンフー様が文句を言いながらも自分も服を着て捜すのを手伝ってくれるのだろう


「申し訳ありません。きっとハクを捜しに行ったのでしょう私が夜でも一緒に捜せば良かったのです」


「インフーはお譲ちゃんに甘過ぎる」


そう言うトルチェンフー様は私には甘い


私はトルチェンフー様を利用している…この人に抱かれる事でレイカの対する気持ちを抑え忘れる為にこの体を痛めつけているのだ


一種の自傷行為だ


男に抱かれる私などにレイカを愛する資格など無いのだと


多分そんな私の想いにトルチェンフー様は気付いているのに優しく抱いて気遣ってくれるのが申し訳ない


でもこの方が私に対する想いなど一時の物のはず、私など直ぐに飽きて興味を失くすだろうと思う……何しろトルチェンフー様は次期虎王と言ってもいい程の神力の持ち主


私の様なつまらぬ一介の大して美しくも無い虎族の男など


「インフー フォンを起してサッサと行くぞ」


「有難うございますトルチェンフー様」


ありったけの感謝を込め言うと目を見張るトルチェンフー様


「チッ 後からきっちり返して貰うからな」


照れくさそうにそう言いフォンフー様の寝所に向かい、寝ぎたないフォンフー様を無理やり起こしてレイカを捜しに向かったので結構時間がかかり捜すのに手間取ってしまった。




そしてかなりの時間が経過した時だった。


「向こうから青龍国の丞相の神気を感じる…もしかするとレイカは其処かもしれん」


フォンフー様が突然呟き脱兎の如く駆けだして行き急いで後を追う


何故レイカと青龍国の丞相様がと訝しむが、実際に二人が一緒にいたので驚く


しかも只ならぬ雰囲気でレイカが泣いていた。


フォンフー様が風を起こしレイカを私に渡すと抱きとめる。


「レイカ大丈夫ですか」


急いで声を掛けると誰か分かりホッと安心して抱きついてきて泣き綴る愛しい少女


「インフー様…怖かった…」


諦めようとする心が挫けそうだ


か細い体を私に擦りつけ甘えてくるレイカを突き放すなど出来なかった


そしてレイカの母親の真珠の髪飾りが丞相様より贈られたものだと知り驚かされるが泣き続けるレイカに異和感を感じる。


何時も気丈な少女が丞相様に酷い仕打ちをされたからと言ってこうまで泣くだろうか


言い知れぬ不安が心を過ぎるが今は啼き続ける愛しい少女を慰めるのだった。











8月も後半に入ってしまったけどお話が進まない???

あの二人を出した所為だろうか……8月中に完結は無理なようなので、もう予定は書かないでおこうと思うのでした。ゴメンなさい~

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