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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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異国での再会






盛大な宴が繰り広げられる中私はテジャを捜そうとするが次々と話しかけられたり踊りに誘われるなど取り囲まれ身動きが出来ない。フォンフー様は王に呼ばれ王達の席に侍らされており動けない。


仕方なく踊りの相手をしながら広間を見渡しているとテジャがテラスに出るのを見つけるが、踊っている最中。


「申し訳ありませんが疲れたのでお放し下さい」


「曲が終わるまでは放しませんよ」


相手は虎族、人間の私は強くは出れないのであの手を使う使う


ゆっくりと相手の神力を奪う


「どうしたんだ…… 体が……」


虎族の男は踊りを止め立ち止まる。


「まー大変 あちらに行って休みましょう」


テラスの方に男を誘導して壁にある椅子に座らせてからもう一度神力を動けなくなるまで奪うと虎族の男は椅子に座ったまま動かなくなるのを見てから辺りを見渡すと私に注意している者がいないのを確認してテジャの後を追う為にテラスに出る。







コッソリとテラスを抜け出すとそこには人影も無く衛兵も見当たらなかった。


「テジャは確かにこっちに来たのに?」


バルコニーの手すりから身を乗り出して下を見ると数人の衛兵が立っており急いで身を戻し、もう一度広いテラスを見渡すと木の上に人影を見つける。


その木の側に駆け寄り声を掛けてみる。


「こんばんわ 貴方は青龍国の人でしょう」


すると人影は私の方を見降ろす。


「そうだが……貴女は何方ですか」


男の声は低く子供のテジャの声とは全く違う。


「私はレイカと申します。貴方のお名前は」


「!!」


男は私の声を聞くと木から飛び降り私の目の前に立つと明かりの方に私の顔を向けさせる。


「本当にレイカだ……!?」


男は唖然として私を見つめるとそう呟いた。


「テジャ! やっぱりテジャだったのね!!」


私は嬉しさのあまりテジャの首に飛び付くとすっかり大人になってしまって首に抱きついた所為でぶら下がってしまっている。


「大きくなったのねテジャ」


「お前は相変わらず警戒心が無いな」


「へっ?」


感動の再会なのに不機嫌そうな顔をしてテジャは私の腰に手を掛けて下に降ろす。


「青龍国の人間のはずのお前が何故この国に居るんだ? …奴隷として売られたか?」


奴隷!? 


相変わらずシビアな見方をする。


「違うわ、今は第八皇子様の侍女をしているの。それよりテジャ凄い出世をしたのね!丞相様の御供なんて」


「まあな…当然の結果だ」


ニヤリと笑う顔は悪役のようでとても丞相府に務める若き官吏官には見えない


「それより俺をこんな所まで追って来るとは…俺を誘ってるのか」


「誘う???」


テジャは私の腰を抱き寄せると顎に手を掛けて来るとテジャの顔がそのまま迫って来る。

口付をされると思い慌ててテジャの体を押しのけようとするがビックともしない


「止めてテジャ! 」


思いっきり睨みつけるとテジャは案外あっさりと放してくれる。


「無暗に男に近ずくからだ。ガキの頃から言ったろ…お前は警戒心が無さ過ぎる。しかもその容姿、神族すら魅了させるんじゃないのか、学問所に現れなくなったと思えば案の定人攫いにあって売られたんだろうが、人の忠告を聞かないからだ。 母親は如何した…一緒に売られたのか?」


まるで父親が駄目な子供に説教をするかのよう…テジャの中では私は売られたと決めつけられている?


「売られたんじゃないわ」


「では何故白虎国に居る?」


本当に父親に問い詰められている様な気分で誤魔化しても直ぐ見破られそうなので正直に言う。


「……父様に捨てられた」


「何……」


「テジャの言う事を無視して父様がやって来る夜にコッソリ家に戻ったの…そしたら見つかってしまって…殺されそうになって…気が付いたら妖獣の森に捨てられていて…それから第八皇子様に助けられて侍女にして貰ったの」


途切れ途切れに説明をし終えるとテジャは私の耳を摘む。


ムギュ~


「むぐぅ……」


「俺は言ったはずだ詮索するなと、この耳は飾りものか!」


「ひぃ~ん ゴメンなさい……」


私の様な綺麗な女の子にぞんざいな扱いをするのはフォンフー様とテジャぐらいだ


「ま… してしまった物はしょうが無い。 このまま白虎国で暮らすのか」


「何れ帰る心算だけど今はまだ帰れない。 それよりサン先生の事が聞きたかったの!どうしてるか知らない!」


「サン先生か、最後に会ったのは官吏の試験に合格した時に挨拶に行った時だがお元気そうだったぞ。だがお前が学問所から消えた時は一月ぐらい学問所を休まれて復帰したての頃はかなり元気が無かった。俺も気になってお前の消息を尋ねたら急に泣き出してアレには困った」


サンおじちゃま……やっぱり酷く心配させてしまったんだ


御免なさい、私が父様に会おうと思わなければこんな事にならなかったのに


すると母様やファン様、サンおじちゃまの顔が次々思い出されて目から涙が零れとうとう泣いてしまう


「ううっーー うえぇ…ん うっうう~~ 母様に会いたい…… 」


呆れながらもテジャは私を軽く抱きしめて子供をあやすように背中を撫でてくれる。


昔は意地悪だったのに


「テジャ… ヒック  優しくなったね… ヒック 」


「全くお前は… 俺も何時までもガキじゃない。それに綺麗な女に泣きつかれれば男として慰めるだろ」


ギック!


思わず身を固くする。


「安心しろ、お前の様な面倒な女を襲う心算は無い」


「むぅ~ 何よそれ」


「お前自分が普通だと思っているのか? その容姿に金の瞳 しかも他国に捨てられて運良く皇子に拾われた上にこの高位の虎族しか出席できない夜会で俺と会うなどどれだけ幸運なのだ。お前に付き合っていると確実に俺の運が吸い取られる気がするぞ」


「私ほど不幸な少女はいなと思うんだけど…」


「そんな綺麗な衣装を着て何処が不幸だ」


相変わらずテジャに適わないの悔しい


それから少しお互いの当り障りのない近況を話して過ごす。


「ソロソロ戻った方が良いんじゃないのか」


「うん… そうだけど戻りたくないかも… 男の人が一杯寄って来るんだもん」


「贅沢な女だ。皇子の側に居ればいいだろ」


「皇子様は虎王様が放さないから近寄れない…そうだ! テジャが一緒に居て」


「まっぴら御免だ。お前といては虎族の男共に睨まれて恨まれそうだ。人間の俺はさっき以上に居ずらくなるだろ」


やっぱりと言おうか神族ばかりの宴ではテジャは肩身が狭いのだろう


「テジャも苦労してるんだね……」


「当然だ」


そこへテジャを呼びに青龍国の御供の人が来る。


「テジャ、ユンロン様が戻るようにとのご指示だ」


「分かりました。今戻ります。どうやら息抜きはお終いのようだ……」


テジャはそう返事をして広間に戻ろうとするが振り返る。


「レイカも中に戻れ、こんな所に居たら襲おてくれと言っているのと同じで中の方が安全だ」


そう言われ頷いてテジャの後に続いて広間に戻るのだった。








広間に入ると話す者、ダンスを楽しんだり酒を飲む人々で賑わっており、王達の席に目をやるとフォンフー様が見当たらず会場を見まわしていると背後から肩に手を掛けられる。

「きゃっ!」


「何がきゃっだ、一体どこに行っていたんだ」


「フォンフー様 良かった…」


「ミユキ様がお呼びだ、ついて来い」


「まさかあの席に行けと!!」


「国賓の希望は最大限叶えるしかなかろう」


問答無用でフォンフー様に連れられて王達の貴賓席に連れていかれてしまう


その席は正に美が溢れており眩いばかり


その中である意味ミユキ様が一番目立っていた。


私が近ずくと一斉に皆の視線が私を見やり思わずフォンフー様の背後に隠れるが


「レイカちゃん! 良く来たわ、待っていたのよ~」


ミユキ様が立ち上がり私をフォンフー様の背後から引きずり出して抱きついて来る。


ミユキ様止めて下さいと叫びたかったがグっと我慢する。


「キャ~ レイカちゃん素敵! 此処に座って一緒に話しましょう」


王達と同席なんてとんでもない!!


「ほー これが亀王妃が話していた少女か確かに美しい。どうだ我が後宮に入らぬか、黒い髪の側室はまだおらぬのでな」


後宮!! しかも理由が黒髪なんて本気とは思えない


そんなとんでもない事を言ったのは鳳凰国の朱雀王で値踏みするように私をみる


「朱雀王! 目を付けたのは私が先です。レイカちゃんは我が国の後宮に入って貰うんですから」


「ええっ!!」


そう言って私を更にきつく抱きしめるとミユキ様からはお酒の匂いがプンプン臭っており、かなり酔っているのが伺える。


「ミユキ… 少々飲みすぎたのでは? 先に戻って休むがよい。 レイカ済まぬがミユキを部屋まで送ってくれぬか」


有り難い提案に直ぐに飛びつく


「はい亀王様、喜んで」


「レイカだけでは心許ないので私も付いて参ります」


フォンフー様もそれに便乗するようだ


「頼もう」


「フォンフー ミユキ様をお贈りしたら直ぐに戻って来なさい」


しかし虎王がそう易々フォンフー様を手放すが筈がない


「分かりました陛下」


フォンフー様は嫌そうな顔一つせず唯々諾々と言う。


そして私とフォンフー様でミユキ様を支えるようにその場を立ち去ろうと青龍国の丞相様の横を通ろうとした時つい好奇心で視線をそちらに向ける。


「!!」


見なければ良かったと後悔する。


何故なら青龍国の丞相様は私を冷たい眼差しで見ており恐かった。


もしかして私が龍王の娘だと気付いたの??!!


相手は龍王に近い人間で私の存在を聞いていたのかも


ドキドキしながら通り過ぎそのまま広間を抜け出し近衛兵を二名を付き従えて亀王の泊る宮殿へ急ぐのだったが、先程の丞相様の眼差しが忘れられない


あの目を思い出すだけで心が切りつけられるような痛みを感じるのだった。


ミユキ様の部屋に着くと流石に近衛兵は立ち去って行き、扉を侍女が開け迎え入れてくれる。


「お疲れ様ですミユキ様 フォンフー様もレイカ様もどうぞお入りください」


「ただいまウー 疲れたよ~ お茶入れて」


ミユキ様は侍女に抱きつくが侍女の方は慣れているようでミユキ様を支えながら椅子に座らす。


「お二人もどうぞ御座りください。今お茶を淹れて参りますので」


侍女に促され二人一緒に席に着くとミユキ様が私を見る。


「どうしたのレイカちゃん? 浮かない顔をしてるけどさっきの朱雀王の事なら心配ないのよ。私があんな男追い払ってあげるから」


「いえ… その事では無く……」


「何か気になるの? 何でもお姉さんに相談していいのよ」


「はい…実は青龍国の丞相様が私を睨んでいたのが気になってしまって」


「お前の気のせいでは無いか、丞相様は穏やかな方のようにお見受けしたが」


「チッチッチ 分かっていないわねフォンフー君。 ああいう一見して優しげで聖女のように振る舞っているけど腹の底は冷酷で無駄な物はすべて切り捨てる完全主義者よ絶対。丞相の仮面は君の被っている猫とは年季が違う。でも理由も無くレイカちゃんを睨むタイプにも見えないし、人間嫌いなら側近に人間を連れて来ないだろうし、女嫌い?? 以前会った事は?」


「ありません… しかも二度も睨まれ初めは勘違いかと思ったんですけど」


「レイカちゃんのように国宝級の美少女を睨む男なんて信じらんないわね。 向こうから接触して来ない限り静観したら? 自分から近づかない方が無難よ見かけたら逃げるに限るわ、何かの勘違いで逆恨みって事もあるから」


「はい」


「ああ~でも今夜は眼福だったわ~ でも美形は見馴れていた心算だけど王様クラスとなる本当に凄まじいわね。青龍国の王様も見てみたかったけど残念…話では四神国一の賢王なんでしょ、でもそう言うのって本性を暴きたくならない?」


「「 …… 」」


私とフォンフー様は首を横に振るしか無かった。


父様の本性……


世間一般に言われている龍王様と私が知っている龍王様は全然違う


子供の私を躊躇いも無く切り殺そうとした残酷な人


伴侶である母様を結界に閉じ込めている自分勝手な神なのだ。


でも何で母様は父様を好きなんだろう?


そんな事を考えているとフォンフー様がミユキ様に尋ねる。


「それよりミユキ様、各国との話はどうなっているのでしょう」


「それはもう済んでるから大丈夫。鳳凰国王と青龍国丞相の使節団達が此方に来る前に瞑道で待ち伏せをしてチョンマゲが事情を話したから。やはり各国も今回の戴冠式は胡散臭いと感じてたみたいよ」


ミユキ様の言葉を聞いて珍しく心底ホッとしたように表情を緩める。


「それならば安心です」


「ところでフォンフー君!」


「何でしょう……」


ミユキ様は標的をフォンフー様に狙いを定めるように見詰め


「ズバリお兄さんとはどういう関係!?」


「!!」


「他の兄弟は席に呼びもしない癖にフォンフー君は側から放そうとせず甘~い眼差しで見詰めちゃって溺愛ぶりをヒシヒシ感じちゃった。もしかして禁断の愛!? 生BL!! しかも絶対鬼畜攻めの強気受け 滅多にない好カードだわ! なんて美味しいの~  」


なんとなく意味は分かるけど知らない言葉が多々ある。異世界の言葉なんだろうか?


「なっなんだこの女は……」


フォンフー様も地が出てしまいミユキ様を睨むが一向に気にしないミユキ様は尚も言い続ける。


「お願いフォンフー君。もう犯っちゃってるのかどうか教えて…それが気になってお姉さん今晩寝れ……」


ドッス!


ガックン


突然ミユキ様が衝撃を受け顔をテーブルに突っ伏してしまい背後には侍女が立っていた。


「申し訳ありません。ミユキ様はお酒が過ぎますとお口のたがが外れるようで…ご無礼をお許しください」


侍女は優雅に頭を下げるのをただ驚愕の目で見るしかない。


侍女が王妃を気絶させるなんてあり得ない


普通であれば親族共々死罪を言い渡されても可笑しくない


「ミユキ様は大丈夫ですか」


「何時もの事なのでお気にせず。それよりお茶を持って参りましたのでごゆっくりして行ってください」


侍女はミユキ様を軽々と抱き上げて別室へと移動して行き、代わりに他の侍女がお茶を出してくれたのを有り難く戴いてからその場を辞した。


何だかとんでもない国


それからフォンフー様に送って貰いインフー様の待つ屋敷に戻るがフォンフー様は宮殿へと戻って行くのかと思えばそのまま居るらしい。


「いいんですか? 戻らなくて」


「誰が戻るか、明日には全てが決するのに今さら奴の機嫌を取る必要などなかろう」


確かにその通りで明日、第三皇子様はどうなってしまうんだろう


他国の王達相手では適うはずがなく滅んでしまうだろうが言い知れぬ不安が心から拭えないのだった。










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