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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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王都からの使者






虎王が後宮に引き籠られ二年近くの年月が過ぎ去ろうとしていた。公式的には王の体調が優れず公務を成せないとされてる。幾つかの内乱も起こり国内は混乱したが第三皇子の力で直ぐさま平静を取りもどし実質第三皇子イェンファフーが国の政務を全て執り行い、国民達はそのまま虎王に就くものだと思っていた。


そしてとうとうイェンファフーが王位を譲位され戴冠式が行われると公式に発表され王都は沸き立っていたが、王宮内はそれに反し静寂が包んでおり働く人々の顔も何処か重苦しい


何故なら王宮の人々はこの戴冠式が偽王をたてる物であり、天帝の意に沿わない物だ。嘗て隣国の青龍国でも偽王が玉座に座り残虐非道な行いをしているのを知っていた。当時白虎国でも龍王が偽王だったと知らず、新龍王ルェイロンが玉座についた時、前王エイシャンロンは偽王だと公式に発表しその名を抹消したのでそれを知た。


偽王が玉座に座るなど嘗ての青龍国のてつを踏むのではないかと心ある家臣は第三皇子に時期を待つよう進言したがその場で斬首されその後誰も戴冠式を取り止めるよう進言する者はいなくなってしまう


第三皇子イェンファフーは変わった。


以前の穏やかな眼差しも冷酷なものに変わり別人のようだった、人々は変わったのか仮面を脱ぎ棄てだけなのか誰も判断出来ないが、圧倒的な力を持つイェンファフーに畏怖するしかない。


せめてもの救いは政務は通常通りに行われ国民に悪政を強いる事は無かった。


既に王宮で皇子に逆らえる者などおらず、王宮内で一言異を漏らせば何処かで聞きつけるのかイェンファフー直属の近衛師団が駆けつけ牢に入れられそのまま戻ってくる者はいなく、ただイェンファフーの命に従い恐怖に耐えるしかなく徐々に王宮内の人々もイェンファフーの毒に犯されて行くかのように変わって行ったのだった。



そしてイェンファフー命を受けて、フォンフーが住む屋敷に迎えに十人の近衛師団員が王都の使者として向かったのだった。








レイカは十二歳になり身長も急激に伸び日々女らしい体つきになり、まだ咲ききらない蕾でありながら益々美しい少女になり見馴れた屋敷の者たちですらその美しさに目を伏せてしまう程だった。


そしてフォンフーもまたレイカと競うように体を成長させ僅か身長をうわまり体つきも筋肉が付いて男らしく成長させ、何処か少女めいた華奢な体から脱却していたのだった。


そんなフォンフーの着替えを手伝いながらレイカは悔しくなる。


「どうして急に体が大きくなるんです! 先月まで私が勝っていたのに」


「お前みたいなガキより背が低いなど耐えれないからな。根性で伸ばした」


折角フォンフー様を見降ろせて気分が良かったのに根性で背を伸ばすなんて信じられない!


悔しがっているとインフー様が種明かしをしてくれる。


「レイカ、虎族の成長は人それぞれで徐々に成長する者と成長を止め一気に成長したりと一定では無いのです。フォンフー様は丁度急激に成長期が来ただけですよ」


「それじゃあこれからもっと大きくなるんですか?!」


「恐らく人間で言うと一気に十七,八歳近くまで成長するんじゃないでしょうか?」


「そんなに大きくなっちゃうんですか~」


思わずガッカリとしてしまう。


「そんなに俺より大きく成りたかったのか」


「だってフォンフー様を見降ろせるなんて気分がいいじゃないですか」


「相変わらず生意気だ」


そう言うとフォンフー様が私のおでこをピンと撥ねる。


「痛い~」


「フォンフー様、レイカは私の婚約者なので無暗に叩かないで下さい」


インフー様は私を引き寄せその体に閉じ込める。


最近のインフー様は特にスキンシップが激しいので戸惑ってしまう……嫌では無いのだけど少し恥ずかしい


「少し小突いただけだろう。あんまり甘やかすとつけあがるだけだぞ」


そして突然窓ガラスが突風を受けたようにガタガタと震え庭に巨大な影が幾つも舞い降りの見える。


「一体何事だ!!」


「レイカは自分の部屋に居て下さい」


二人は慌てて廊下に出て外に飛び出して行った。 私は好奇心に負け窓から外を見降ろすと十羽の仙鳥が庭に羽を休めており虎族らしい兵士が降り立とうとしていた。


「王都からの使者かしら」


いよいよ第三皇子がフォンフー様を迎えに来たのだろう。


とうとうここでの生活が終わりを告げようとしている……第三皇子がフォンフー様を何時までも放っておくはずもなく、溺愛する弟を手元に戻す為に差し向けて来たのだろう。


「フォンフー様も大変なお方に好かれちゃってるのね。 でもフォンフー様のどこが良いんだろう??」


性格は良いとは言い難いし、他の皇子様に比べ群を抜いて美しい訳でもないのに


しかも御兄弟で男同士!!


フォンフー様は殺意を抱く程嫌っているのに歪んでいるとしか言いようが無い


愛ってなんなんだろう?


こんな私にも一応仮初だけどインフー様と言う素敵な婚約者がいる…


インフー様の事も好きだけどこの感情が愛なんだろうか……カヤさんとヤヤさんに聞いてみるとレイカには早すぎるわよって言われた。


カヤさん達曰くその人を愛しく感じ体を許し全て差し出してもいいと思った瞬間だって、確かに子供の私にはまだ無理かも ///


二人は夫婦間のそう言う事をあけすけもなく教えてくれるので私もそれなりの知識が今ではあるのだけど男の人とそう言う事をするのは怖い


インフー様も私とそう言う事をしたいんだろうか……


如何しようなどと考えているとお屋敷から二人が出て来たのが見える。


二人が兵士達の前に出て行くと兵士達の中で一番偉そうな人がフォンフー様に進み出て話し掛けているのを見て、これから起こる事を考えると気が重くなるのだった。


フォンフー様の話によると王宮は今大変らしい


「あいつはどうやら崋山の邪神を体に取り込んでいるらしい、崋山の神達は音信が途絶えてしまって当てにならん! こうなったらお前の神力を上げる為にもインフーを巻き込むぞ」


「インフー様にも神力を貰うんですか……」


「嫌なのか?」


嫌というよりか私の力を知られるのが怖かった。神力を吸い取るなんて異常だ


もしインフー様に嫌われると思うと怖かったけど事態は深刻な様でフォンフー様は問答無用で話してしまう……この時は本気でフォンフー様の神力を全部食い尽してやろうかと思ったけどインフー様は少し驚いた顔をしただけで優しく受け入れてくれ、それから毎日欠かさず神力を分けてくれるようになった


でも、インフー様はこんな私をどう思っているんだろう。


ある時神力を貰った後聞いてみた。


「インフー様は私が怖くないんですか」


「私がレイカを恐れるなんてあり得ないですよ。こんな綺麗な少女を」


チュッ!


そう言って初めて唇に口付をされた


「 /// !! 」


「嫌でしたか?」


私は顔を真っ赤にさせ顔を振り否定するとインフー様は私を引き寄せ抱きしめる。


「それより私はレイカが龍族になってしまうのが恐ろしい……自分勝手だが本当は人間のままいて欲しいんだ」


「インフー様 だけど私は……」


切なげに微笑むインフー様


「いいんだよ……私はレイカが望むなら何でもしてあげたい。例え私の手の届かない存在になる手助けでも」


「インフー様」


それから神力を貰う度に口付を交わしている。だけどそれは唇を合わせるだけの優しい物だった。


インフー様の優しさに何も応えられないのが悲しい


私はこんなに優しいインフー様より母様を迷う事無く選んでしまう自分が少し嫌になる。


そしている内に、こんな田舎にも第三皇子様の戴冠式の噂が届く。


フォンフー様はこの戴冠式が第三皇子様を討つ良い機会だと考えているらしい、何故なら各国の王が参列するからだ。


戴冠式の最中に第三皇子の崋山での悪行をばらし王達の助力を乞い打ち倒すようだけどそんなに巧く行くのかしら?


インフー様も否定的だ 


「しかしフォンフー様、各国の王は他国の内政に干渉は許されてませんが」


「自分に危害が及べばそんな事を言っていられるかな」


意味ありげにうそぶく


「まさか、イェンファフー様は王達に何か仕掛けるつもりなのですか!?」


「わからないが、あいつが態々戴冠式を行うなどあり得ん。 そもそも天帝がいない今王位など就けるはずもないが敢て王を幽閉して偽王として玉座に就く必要性が分からん。何れ天帝が戻れば簡単に王位に就けるのになぜ急ぐ?」


「まさか天帝様の不在を狙って!」


「多分あいつは何時戻るか分からない天帝を恐れ、事を急いているんだろう」


「何を狙っているのでしょうか?」


「俺が知るか、後は王宮に入って探る」


「そんな危険な場所にレイカを連れて行くのですか」


「仕方あるまい。レイカが一番対抗出来る戦力だ、このまま奴が力を増せば白虎国の戦力を引き連れ崋山に攻め込むかもしれん」


「まさか……天帝様への反逆に同意する虎族がいるでしょうか」


「それを知る為にも王宮に行くしかない……それより崋山の方はどうなっているレイカ」」


「ハクも崋山とは連絡が取れないみたいだけどあまり気にしてないみたい」


「ふ~ん そうか…… 」


ハクを気にしているようだったけどそれ以上何も言わなかった。


それより私は他国の王様達が白虎国にやってくると聞き内心ドキドキしている。何故なら青龍国の龍王様もこの国に来る事になり、もしかすると王宮で会う可能性があり……もし龍王様が私の父様なら此処で見付ければ殺されるかも


その前に龍王様の神力を奪い尽してしまえば良いのだろうけど第三皇子様の件もあり如何すればいいのか混乱している。


フォンフー様に話した方がいいのかどうか迷っている内に迎えの使者が来てしまい、今に至っているのだけど、王宮で待ち受ける巨大な敵が二人もいるかもしれないなんてとても話せない。


取敢えず王宮に行くしかないと腹を括るしかなかった。











突然空か舞い降りて来た虎族達は矢張りあいつからの迎えだった。


しかも使者として来たらしい虎族達はどう見ても俺が抵抗した時の為の軍からの護送官だ、俺が素直に従うとは考えなかったのだろう。


「お初にお目にかかります。私は近衛師団長を務めますザッカフー、 陛下の命によりフォンフー様をお迎えに上がりました」


「陛下とは父王の事か」


一応確認の為聞いてみるとギロリと睨みつけてくる。


「いいえ、現虎王はイェンファフー様であらせます。 今直ぐ王都へ御同行お願いします」


あまりの性急さに驚く


「今直ぐだと! 此方にも用意がある」


「それではご用意の為一時待ちましょう」


後ろの兵士ともども圧力を掛けるように視線を俺に集中させる。


「ちっ! 随行者は許されているのか」


「フォンフー様だけと命を受けておりますが、穏便に出来るならなるべく貴方様の意に沿うようにとは申し遣っております」


「ならば他二名を随行させる。もし拒否するならそこに居る二,三人は犠牲になる事を覚悟しろ」


数では不利だがこの中で神力は俺が一番、お互い無傷では済まないだろう


「…… 分かりました。二人の供を許しましょう 」


許すだと…一応王弟であるはず俺に許可を下すとはムカつく!一体俺はどういう扱いなんだろうか。


「お前達は此処で待機し屋敷に入るな。 インフー支度だ!」


「はいフォンフー様」


兵士達は無言でうなずきそのまま屋敷の周囲を取り囲む様に配置され逃亡を阻止する構えで、まさか犯罪者扱いではないかと疑ってしまう。


苛つく奴らだ


屋敷に入りレイカに直ぐ出立する事を教え用意をさせなければならない。女の支度は長いからな


「インフー、レイカに最低限だけの荷物を用意させろ。俺の支度は何もないから暫らく一人にしてくれ」


「はい分かりました」


インフーを下がらせ自分の部屋に戻り、窓からあいつらを眺めるた後に寝台に横になるが、これからの事を考えても気が重くなるばかりだ。


崋山の神共は一向に動かないで静観する心算か?


自分等の失態を俺達に始末させるにしては対抗する為の神器の剣の一本でも寄せと、ハクを通して言おうと思ったが連絡がつかないらしく、幾ら脅しても出来ないの一点張りだ。

最近では俺の側には寄ろうともしない


こうなれば四神国を巻き込んででもあいつをこの世界から滅してやる。


事は俺一人の犠牲で済まないのは確かだ


しかし何故こんなに事態が大事になる!!!


まるで誰かが引っ掻き廻し楽しんでいるように感じ不快感が増すのだった。











インフー様に言われた通りに自分の部屋でハクといるとインフー様が少し青い顔をさせながらやってくる。


「れいか、王都に行く準備をして下さい。衣類はいいですから大事な物だけお願いします」


「まさかこれから直ぐ王都に向かうのですか?」


「はい、後一時しか待てないそうなので急いで用意をして欲しいのです」


あまりの慌ただしさに驚いているとインフー様が私を抱きしめてくれる。


「フォンフー様の今の立場は曖昧で王宮でレイカがどんな目に遭うか心配でなりません。今からでもレイカは此処に残って欲しい」


懇願するようにいうインフー様、私の身を気遣ってくれるのは分かるけど、そんな事フォンフー様が許さないだろうし、私の心も決まっている。


「私は行きます。フォンフー様は意地悪で捻くれているけど御恩がありますから」


「でもレイカはまだ十二歳でフォンフー様に義理だてする必要はない」


「でもインフー様はフォンフー様に付いて行かれるんでしょ」


「そうですが」


「待っているなんて嫌。私は二人とも大好きだから一緒に行きます。いざとなれば私の力を使えば役に立つはず」


「……二人とも…ですか……分かりましたレイカを絶対守ります。私はこれからチェンさん達にこれからの指示をしに行きますから、用意を」


少し寂しそうにそう言い出て行くのを見ているしかなかった。


『 レイカ 王都 行クノ? 』


「そうよハク、王都はどうなっているのかな……第七皇子様はご無事なようだけど」


『 ハク レイカ 守ルカラ 安心シテ 』


「神仙様は何か言ってきた」


『 無イ デモ見テイル 』


「そうなの? 見ているなら助けてくれればいいのに。 それより王都に持って行く物を用意しなくっちゃ」


もしかすと二度とこの屋敷には戻れないかもしれないので、引き出しから大事な物を取り出す。


一つは真珠の母様の大事な髪飾り、カヤさんが結婚したので一人部屋になったのを切っ掛けにインフー様が部屋に鍵を付けてくれ返してくれたのだ。そして母様の組んだ髪紐、一度も使っていないけど時折出しては眺めている。それとインフー様に貰った真珠の耳飾り、こんな田舎では付ける機会が無かったので王都に向かうならと鏡の前で付けてみることにする。


『 レイカ 綺麗 トッテモ綺麗 』


ハクがしきりに誉めてくれると少し照れてしまう


そう言えば母様が付けていた真珠の耳飾りこれより大きな粒で繊細な細工が施されていててとても似合っていた。きっと父様が上げたんだろうけど恥ずかしそうにしながらとてもうれしそうだった。母様はあんなところに閉じ込めている父様を愛してたんだと今なら分かる……二人が見つめ合い口付をしている姿は愛し合っていると子供の私にでさえ分かるほどだった。


それなのに母様を閉じ込めている父様が理解できない


しかも子供の私を母様の目の前で殺そうとまでした。


「第三皇子様みたいに頭が可笑しいのかな?」


それしか無いような気がする。


大人の恋愛は難しくって大変そうだ。


「私はインフー様とどうなるんだろう?」


服の中から首飾りを取り出し見てみると殆ど真珠化している龍石をみる。二人が毎日注いでくれたのでもう少しで龍核になるはずだけど何が起こるのかは誰も分からない


龍族になればインフー様とは婚姻できなくなる。


もし人間のままならばインフー様となら婚姻してもきっと幸せになるだろう。


人間のままでも力を使えるなら此のままでいいような気がする。


母様とインフー様


欲張りな私は二人とも手放す事が出来ないのだった。











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