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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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危険な皇子様達 その4






『 痛イヨ…… 痛イヨ…… 痛イヨ…… 』


最初は空耳かと思った。


目の前を第3皇子様が通り過ぎるのを間近で見ていたら聞こえて来た。


悲痛な声が頭の中に響いてくる


だれ? 


第三皇子の纏う気が酷く不快で気持ち悪い… 何かドロドロとした物が皇子様の周囲を取り囲んでいるよう


そして第三皇子様が王様の前に行き光り輝く神核を取り出した時


脳裏に残酷な映像が映しだ去られる。


それは白い大きな狼に似た美しい獣が腹を裂かれ神核が取り出されている姿、美しい白い毛が血で真っ赤に染められ痛々しく、気高い白い獣は痛みにのたうつが悲鳴を漏さないまま息絶えてしまった


そして神核を掴み取るのは第三皇子の冷酷で慈悲の心すら無い顔で歪んだ笑みを浮かべている。



『 許サナイ! オ前を許サナイ… 我ガ魂ヲ穢スモノヨ…… 呪ワレロ! 』


ひぃーーー  怖い……


まるで白い獣の憎しみが私に向けられているようだった。


そして次に感じたのは悲しみだった


『 消エテシマウ…… イキタイ 生キタイ…… 死ニタクナイ…… 生… 』



王様が神核を飲み込んだと同時に声が喪失すると同時に訳が分からなくなった









第三皇子が体を真っ赤に染め次々に巨大な獣を切り捨てて行く、その中には産まれたばかりの小さな子供も混ざっており、子供を守ろうとする親も皇子にかすり傷一つ負わす事出来ず己の血を大地に流すだけだった。


《 止めて!!  殺さないで! 罪もない無垢な命を狩らないで!! 》


私は必死に皇子を止めようとするけど凶行を止められない


次々と意味もなく奪われて行く命


皇子に付き従う者達も力を求めるように聖なる獣達の血を浴びて行った。


《 何故こんな酷い事をするの!? この子達は此処で静の暮らしているだなのにーーーーーー 》


悲しみが胸を切り刻む言うに痛い


《 許さない! お前を許さない! 私利私欲の為に清らかに命を奪うお前を許さないーーーー!!! 》


無残に命を奪われた神獣達の怒りと悲しみが私に伝染するようだった。そして黒い闇が私を覆うとしていた。


『 レイカ イケナイ 憎シミダケニ 囚ワレナイデ 』


突然ハクの声が呼び掛けて来た。


《 無理よハク あいつは何の罪もない者達の命を無残に奪っている。 許すなんて出来ない! あいつを許せばこれ以上の多くの命が失われる 》


『 駄目! 今ノレイカデハ アノ者ト同ジ道ヲ歩ンデシマウ アオイ 悲しシム 』


《 母様が…? 母様が悲しむのは嫌… 母様が泣くのは耐えられないよ…… どうしたらいいの? でも泣いているあの子達が可哀そう…… 》


『 憎シミニ 囚ワレナイ 強イ心ヲ持ッテ 』


《 強い心? 》


『 ソウ アオイノヨウニ 強ク 』


《 母様のように 私は母様のように優しい人間になりたい…… 》


『 レイカハ アオイノ娘 レイカハ優シイ子 』


ハクの言葉のお陰で聖なる獣達の声は聞こえなくなり優しい母様の姿が映し出される。


( レイカ 私の大事な娘 常に人を許せる優しい子になってね…… )


『 でもあの皇子は自分の私欲の為だけに命を奪うんだよ! 許せないよ!! 》


( 同じ様にその皇子の命を奪えばレイカも同じだよ )


『 違う! レイカはあの皇子と違う! 』


( どんな命でも奪うと言う行為は同じ レイカよく考えて )


母様の姿が段々と遠のいていく


『 母様 行かないで! レイカの側に居て…… 』







パッシ!パッシ!


両頬に痛みを感じ目を覚ますとフォンフー様とインフー様の心配そうな顔が見えた。


「あれ…… どうしたんです二人とも?」


ガツン!


フォンフー様のゲンコツが容赦なく飛ぶ


「痛い!!」


「このバカ娘、人にあまり心配かけるな!」


「ホへ?? 私どうしたんですか?」


インフー様が私を抱き起こし抱きしめる。


「祝賀会でレイカが倒れてから1日経っているのです…… 私もフォンフー様も気が気ではありませんでした」


インフー様の言葉を聞いて驚かされてしまう……丸1日も寝ているなんて信じられない!?

一体何があったの??


「私どうしたんでしょう?」


「俺が知るか! 父王の誕生祝賀会で第三皇子が現れて直ぐ気を失ったんだ。 一体どういう事だ?」


第三皇子と聞いて全てを思い出した。


「声が聞こえたの」


「声だと?」


「第三皇子が狩った神獣達の声…… 皆、訳も分からず苦しんで死んでいった声 」


「何だと!?」


「あの子達の声に引きずられて真っ暗な世界に落ちそうになったのをハクと母様が助けてくれた」


「そうか……」


「そう言えばハクはどこ?」


「ハクはレイカが離れの屋敷に運び込まれて直ぐレイカの側を離れず一緒に眠っていましたよ」


インフー様に言われ目線を下に落とすと枕元に丸まった白い毛の丸まった姿


私と違い今だ眠っていた。


「ありがとうハク、 また私を守ってくれたんだね」


眠るハクの頭をそっと撫でてあげる。


「それよりフォンフー様何故レイカは神核に宿る神獣の残留思念に同調してしまったんでしょう」


「レイカが只の人間では無いからだろう」


「レイカが? 私には人間の気しか感じませんが」


「この際言っておく。レイカは龍族として目覚めつつある……レイカ、あの龍石を出せ」


私はフォンフー様に言われるままに首に下げられた龍石の首飾りを取り出しインフー様に見せると、黒く真珠化している部分は以前より面積が増えており3分の1に迫っていた。

初めは訝しげに眺めたが龍石の変化に気が付き驚く


「これはどういう事ですか!?」


「レイカが生まれた時に手に握っていた龍石が徐々に光を取り戻し龍核が活性化し始めているらし……何れレイカは龍族として目覚める」


「そんな話聞いた事がありません!!」


インフー様は声を荒げる。


「レイカが龍族ですって、信じれはず無いでしょ!」


「思い出せ、レイカに神力が効かない事を、人間にあるべきへそが何故無い」


「そんな話聞きたくありません!」


インフー様はそう言い捨て部屋を出て行ってしまうがフォンフー様は止めようともしない

あまり声を荒げない静かなインフー様の怒りように驚いてしまう…私が龍族になるのが嫌なの?


「私…インフー様に嫌われてしまったの……」


ゴッツ!


「痛い! フォンフー様叩きすぎ」


「その反対だ、お前は鈍すぎる。十歳のガキだからこんなもんなのか?」


訳知りな口調にムッとするがインフー様に嫌われた訳では無さそうなので安心する。


「インフーにもお前との婚約が仮初のものだとハッキリさせておかないと、本気で婚姻を結びそうだからな」


「私とインフー様が結婚!!」


「いい加減気が付け、インフーはお前を恋愛対象として見ている」


「でっでもー 私はまだ十歳です」


「今はまだ子供だがあと五年すれば人間なら婚期を迎える。言わばインフーは大人になったお前に恋してるのかもな……」


「 /// インフー様が私を好き!!??」


初めて男の人から好意に戸惑いと恥ずかしさで顔に血が昇り、アタフタしてしまう。


頭が逆上せどうすればいいのか分からないでいると


「お前もインフーが好きなのか?」



「急にそんな事を言われても分かりません」


「これだけは言っとくが他種神族の婚姻は許されていない。だからインフーに恋をするな」


「そうなんですか?」


「天帝がきつく戒めている。それを破る者は天帝の死の裁定を承る。。だからインフーはお前が龍族と知って慌てていたんだ」


それを聞きインフー様が本気で私を好きなんだとしる。


「インフー様……」


インフー様は好きだけど、この好きが恋は分からない……


「お前が悩んでも仕方がない。どちらにしろお前達は結ばれない。もしインフーとの恋をとるなら人間でいるしかないぞ」


「えっ」


私が龍族になるのを諦める…そんな事出来ない。


母様を助けるのが私の一番


「そんなの無理、私は龍族になる」


決意を新たに言い切る私を見てフォンフー様は嬉しそうに笑う


「それでこそレイカだ。 恋だ愛など薄ら寒いだけ、何の意味もない」


恋愛に嫌悪の情をはきだす。


そうだろうか……フォンフー様の言う事も極端のような気がするけどフォンフー様は恋をした事があるんだろうか…見た目は私ぐらいだけど実質四十年以上生きているのだから初恋もまだなんてあり得ないから、きっと何か苦い思い出でもあるのかもと勘ぐってしまう


それよりこれからインフー様と如何接すればいいんだろう


フォンフー様に聞いても普段通りに接しろだった。


変に意識してしまっている今は難しく明日の朝に顔を合わせるのも恥ずかしい


やっぱりこういう事は田舎に帰ってカヤさんに相談しようと思うのだった。








フォンフー様の言葉を聞き絶望が襲う


レイカが龍族


仮初ではあるがレイカと婚約者となり喜びで我が春を味わっていた…虎王様や皇子様達も婚約を信じこのまま本当に婚姻を結べると思っていた矢先のこの事実


あの美しい少女が自分の妻に出来るななら自分の命の半部を分かちあっても良かった


レイカは今だ幼く恋を知らないだろう


美しい皇子達を目にしても心を動かさない事からも分かっていた。


だから私を兄のように慕ってくれている心につけ込みこのまま婚姻に持って行こうと考えていた卑怯な私だったがそれで良いと思っていたのに


レイカが龍族になる?!?


直ぐには信じられないがレイカが龍族として目覚めたら私が虎族である限り決して結ばれない


五年間見守り続けた少女


諦めきれない……


離れを飛び出し何時の間にか池のほとりのに建てられた東屋に来ており、美しい金色に輝く月が庭園を仄かに照らし出し池の水面にも満月映っており月が二つあるようだ


まるでレイカの瞳のようだ


私は月に恋した愚かな男だ


僅か十歳あまりの少女に本気で恋をしている滑稽さに今さらに気付かされる。


否…私だけでなく皇子達や昨夜レイカに踊りを申し込んだ男達も一時でも目と心を奪われたに違いない


このままレイカが人間のままなら問題はないのだ


あの龍石!


アレをレイカから奪い、壊してしまえばいいのではないかと思いつく


「駄目だ、そんな事をすればレイカは私を憎んでしまう」


嫌われたくない、泣かせたくない


レイカが龍族になる事を望むなら私は見守るしかないのだ


適うならレイカが私を望んでくれるならどんなにいいだろう…まだ時間はあるのだからレイカの心を私に向けさせればいいのだが美しい皇子達にも見向きもしない少女の心を掴むなど出来るだろうか


レイカが私を選んでくれるよう月に願わずはいられない










「レイカ……」


どれだけ月を眺めていたのだろう…何時の間にか頬に涙が伝っていた。


十歳の少女を想って泣くなど自分でも情けない


「綺麗な涙だ」


「!!」


突然、真横から声を掛けられ驚く。


そして右隣りには何時の間にか男が立っていた…こんなに間近に来られたのを声をかけられるまで気付かないなんて。しかも涙まで見られ恥ずかしい


急いで涙を拭おうとすると男がその手を阻み、手首を掴まれたと思った瞬間頬を濡れた感触


ぺロッ


今この男は私に何をしたんだ?????


有り得ない程近くにある男の涼やかな美しい目は緑色


「 う~ん お前の涙は甘いんだ 」


「はっ放せ!!」


漸くこの男に涙を舐められた事に気が付き慌てて離れようとするが、あっと言う間に引き寄せられ腰に手を回され捕まってしまう。


「無礼者、私は虎族…今なら見逃すから放しなさい」


月明かりに現れた男は目の覚めるような美丈夫で何処となく第三皇子様に似ているが、瞳は緑で髪も茶色で服装も庶民が着る様な簡素な物で明らかに人間


人間が虎族に無礼を働けばその場で討ち首にされても誰も咎めない


そもそも人間と虎族では力が違うのだ


「放せ! 聞いてるのか!」


しかし男を睨みつけ逃れようとするがその体はビクともせず反対の頬まで舐められる。


べロン!


「ひぃーーーーーー 変態!!!」


「やっぱり甘い? なんか知らんがお前の事気に入った。どうだ俺と寝ようぜ」


有り得ない誘いと男は腰の手が一方を尻に持って行き撫でまわすので、鳥肌が立つ


「やっ止めろ!! 私は虎族だし、そもそも私に男の趣味などありません」


「それは奇遇だなー 俺も虎族で男の趣味は無かった」


男の言葉で驚く


「貴方が虎族!?」


「見た目はこうだが正真正銘の虎族だ。なんなら力を見せようか」


男はニヤリと笑うと共に池の水が瞬時に噴水のように噴き上ったかと思うと雨のように辺りに降り注ぎしかも魚まで降ってくる始末


ザッザザーーーザザザーーーーーー


私達は東屋に居たので濡れずに済んだ庭は酷い有様


池の水は無くなり地面には魚が飛び跳ねている。


「貴方はなんて事をするんです! 王宮の庭を荒らすなんてどんなお咎めを受けるか分かっているのですか」


「俺の心配をしてくれるのか? 優しんだな~」


しかし男は気にする風でもなく腐った事を言うので呆れてしまう


「私は貴方の心配などしてませんから! それより早く放しなさい!」


耳元で大声で怒鳴ると流石に手を放さずにはいられなかったようで、腕が離れた隙をみて距離を取る。


「く~~ 鼓膜が破れるじゃないか… 酷いな~」


何が酷いんだと文句を言いたかったがあまりこの男と関わりを持ちたく無いので急いでその場を逃げるよう離れ、屋敷に戻ろうとすると背後から声を掛けて来る。


「俺はトルチェンフーだーーー お前の名はーー?」


答える義理もないので、そんな男の問いを無視して足の速度を速める。


男は以外にも追いかけ来ないのでホッとする。


多分あの男には力も神力も適わない


無理やり迫られれば回避するのは難しかった


追いかけて来なかったのは、やはりからかわれただけなのだろうと思い、不快な男の事など忘れるに限る。


その場で男の記憶を頭から消し去る事にするのだった。








屋敷に戻るとフォンフー様が居間で起きて待っていてくれた。


「フォンフー様、先程は取り乱しすみませんでした」


「レイカの事は諦めろ」


これを言う為に待っていたのだと納得する。


私の心配などするはずが無いのだ。


「無理です。 レイカが人間である内に私の方を向いて貰います」


「レイカはお前を選ばんぞ」


「やってみないとそんな事分かりませんから」


「そうか……思ったより諦めが悪かったんだなインフー」


意外な顔をするフォンフー様


「何故フォンフー様が口出しをするのですか、人の事はほっといて置いて下さい」


まさかフォンフー様もレイカに好意を抱いてたのか? その割には扱いがぞんざいだ


「まー 確かにそうだな。 だがレイカが龍族になるのは邪魔するな」


その時初めてフォンフー様がレイカを利用しようとしているのではないかと疑念が湧く


「まさかレイカに何かさせようとしているんですか」


「勘違いするな、お互いの目的は違っても力が欲しいのは同じなだけだ。それにレイカは異質すぎるインフーでは荷が勝ち過ぎている」


「私では釣り合わないと」


「そうじゃない…お前が食われるんだ」


「食われる??」


フォンフー様は意味ありげに哂う


食われるとはどういう事だろう…それにフォンフー様は力を得てどうするつもりだというのだ、王座など望むはずが無い。目的は何だ?


問うても素直に答えてはくれないであろう主を訝しげにみると


「一応忠告だけはしたからな……それじゃあ俺は寝るから後は好きにしろ」


そう言って寝室に下がられる姿を見送るしかない


お会いした時から自分の奥深い心の内を見せない主


一体レイカを使い何をしようとしてるんだろう


愛しい少女を危険な目に会わすのはフォンフー様でも許す事は出来ない


絶対に


これからは二人を監視しようと心に決意するのだった。














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