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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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危険な皇子様達 その3






王都に来てから既に五日が過ぎその間に第二、三皇子以外の全ての皇子様から昼食やお茶のお誘いを受けて仕方なく出席したけどまるで珍しい動物でもなった気分


そんなに黒い髪と金の瞳が珍しいの?


私にとっては黒も金も馴染み深い色なんだけど皇子様達はいたく此の色がお気に召したようだ。


第五皇子テンカフー様は栗色の巻き毛に青い目の可愛い感じの人で親しみやすく一番まともな王子様で、「レイカは暗闇に輝く金星のようだ」と評し第六皇子ポルフー様は珍しくポッチャリした体型の銀の髪に紫色の瞳で痩せてれば素敵な皇子様で「レイカの髪は黒くて不味そうだけどその瞳は蜂蜜のようで美味しそう~」だった。第七皇子ユンフー様は水色の髪に紫色の瞳の大きな少女のような中性的な皇子様で「なんて綺麗な黒髪なの~ でもこう少し髪を高く結って翠の髪飾りを付けた方が似合うわ」などと言いだし着せ替え人形にされてしまう。


このお三方は比較的フォンフー様と友好的に感じたけど、矢張り何処かよそよそしいく兄弟には思えない


「兄弟と言っても母親は違うしそれぞれ母親の実家や宮廷の派閥も関わってるからこんなようなものだ」


と素っ気なく答えるフォンフー様だった。


それぞれの皇子様は個性的で華やかだけどお茶会や昼食会のお誘いが日切りなしに来るのでうんざり


「フォンフー様一体何時まで此処に居るんですか? いい加減帰りましょ」


「六日後に行われる虎王の誕生祝賀祭が終わるまで我慢しろ。それが終わったら帰る」


まだ六日もこんな所に居るのかと思うとゲンナリするけど、虎王様の誕生祝賀祭なら仕方がないし、街も賑やかになり色んな出し物や店が出店するだろうから楽しそう


だけど皇子様に覚えもめでたい私、嫌な予感がする。


「まさか、私が出席するはずありませんよね」


「安心しろ、インフーの婚約者として招待状が届いている」


「えっえ~~ なんですかそれ!!」


どうやら公的に私とインフー様は婚約していると認知されてしまっていた。


良いんだろうか? インフー様だって私のよな子供が婚約者なんて嫌な気がするんだけど

「すいませんインフー様にもご迷惑をかけてしまって」


「いえ~ 私は大丈夫ですよ!! レイカちゃんの為ならなんだってやります!」


「インフー、そのちゃんずけいい加減止めとけ、何処の世界に婚約者をちゃんずけしている男がいる」


そう言われればそうだし、私もいい加減ちゃんずけは子供っぽくって嫌だった。


「私も呼び捨ての方がいいです」


「そっそうですか……では レイカ /// 」


顔を真っ赤にして私の名前を呼ぶ?? 何故??


「はい、インフー様」


「そっそれではレイカ、/// 今度の祝賀祭に着る衣装は私に用意させてくれませんか、一応婚約者として贈り物をしたいので/// 」


やたらと恥ずかしがるインフー様の突然の申し出に戸惑う


「いいんですか?」


「是非、私に贈らせて下さい」


フォンフー様を見れば受け取れと目で言っている


「それじゃあ、お願いします。 でもそんな高価な物じゃなくて良いですから」


「いえそう言う訳にはいけません。婚約者に贈るからにはそれなりの物を揃えなければ、今から誂えてきますのでフォンフー様少々街に行って来ます」


そう言うや否やインフー様は部屋を飛び出して行ってしまう。


「いいんですかフォンフー様 インフー様にお金を使わしてしまって」


仮にも虎族なのだからお金があるのは分かっているけど、嘘の婚約者に高価な衣装なんて申し訳ないような気がする。


「本人が喜んでやるんだから、快く受け取ってやれ」


「はい」


「それより神力の方はどうだ?」


「皇子様達とそれとなく接触する時に少しづつ貰ってます」


フォンフー様の提案で皇子様達に会う時はコッソリ少しずつ神力を貰っているけど、第五、六、七、の皇子様に限っている。第一~四皇子はかなり高位のため気付かれる可能性があり危険らしい。


「祝賀祭には大勢の虎族が集まって来るから接触して来る奴からは神力を奪って行くんだ、だが第一から第四皇子はなるべく近ずくな」


「は~い アレ……そう言えば第二皇子様にはお会いした事ありませんけど、どんなお方ですか?」


「知らん、俺もあった事が無く存在自体も疑われている謎の皇子だ。かなりの神力を持っているらしいが自分の宮殿に引き籠って出ようとしないらしいから気にするな」


引き籠りの皇子様、本当に色んなタイプの皇子様が揃っている。


「へー 」


「それよりお前はダンスは踊れるのか?」


「ダンスって何ですか??」


「虎族のパーティでは男女の対になって踊りを楽しむんだが……。よし!今から教えてやるから覚えろ。そして踊りを申し込んだ虎族と片っ端から踊れば神力を奪うのに持ってこいな方法だ」


フォンフー様の勝手さは身にしみているけど、私を道具のように扱うのは流石にムカつ


「なんですかそれ!!」


「今から特訓だ!死ぬ気で覚えろ、これはお前自身の為にもなるんだぞ」


確かに早く神力を集めたいけど、ムカつく


引きずられるように腕を引かれ、玄関ホールでフォンフー様に怒鳴られながらダンスの特訓が始まる。


そして少しフォンフー様の足を踏もうものなら、容赦なくゲンコツが跳んでくる。


「フォンフー様なんか大っ嫌い!!」


「煩い! そんな事よりステップを覚えろ」


問答無用で練習は始まり、完璧に覚えるまで祝賀祭の前日まで練習は続けられたのだった。









虎王様の誕生祝賀祭は盛大に執り行われ、午前中は虎王様が馬車に乗って国民から盛大な祝福を受けていていた。そして夜には国中から集まる虎族達が宮殿の大広間に集まり祝賀会が模様される。


私はインフー様に贈られた赤い衣装で少し大人っぽく胸が少し開いており、スカート部分がふわりとたっぷり布が使われ、踊ると広がって綺麗に見えるらしい。髪は両脇を上で結いあげて大きな赤い造花が飾られて耳にはルビーの耳飾り、そしてお化粧もして貰っている。


「綺麗ですよレイカ/// きっと今日集まった虎族の姫の中でも一番です!」


そんなに言われると流石に照れてしまう


「ありがとうございます。/// 」


「インフー お前でもおべんちゃらが言えるようになったんだな」


「心から言ってます!」


「それじゃあ面倒くさいが行くぞ」


フォンフー様は先頭を歩き私はインフー様に手をとられて会場に向かうと、大広間は既に煌びやかな衣装をまとった人々が集まっている。


私達が入って行くと一斉に視線が集まるが、フォンフー様は気にする事無く突き進むと人々は道を開け会釈して行く


普段が普段なので、矢張りフォンフー様も皇子様だったんだと改めて知った気がする。


そしてフォンフー様の後ろを付いて行くと人々の不躾な視線が私に注がれるがインフー様がさり気無く体を引き寄せなるべく人々から隠すようにさり気無く気遣ってくれる。


フォンフー様は一段上でどっしりと玉座に座る虎王様に挨拶する。


「父王様 お誕生日をお祝い申し上げます」


「おおー フォンフーか、そなたに祝って貰うのは久しぶりだの~」


「不義理を致しまして申し訳ありません」


「まあ~よいよい。ところで後ろに居るのがそなたが連れて来た少女か」


「はい、レイカとその婚約者のインフーです」


「ほっほ~~ 婚約者の~ レイカとやらもうちっと近くに」


フォンフー様が行けと目で言うので王様の前に進み出る。私のような人間がまさか王様の近くに行けるとは考えもしなかったので緊張してしまう


良いんだろうか? 私なんかがご挨拶して


王様は白髪の柔和な感じのおじいちゃんで横には王妃様もいてにこやかに笑った綺麗で優しそうな女性だ


「噂にたがわず美しい娘じゃ~ 十年後なら後宮に召したいの~」


フォンフー様の言う通り女好きらしいけど、子供の私になにを言うんだろ


「オホッホホホホ~ 陛下オイタはいけませ。レイカには既に婚約者がいるのですから、幾ら王でも人妻を奪ってはなりません」


「仕方ないの~ 諦めるしかないか。 その代わり毎年わしの誕生祭には顔を見せるのじゃ、分かったな」


王妃様が王様を窘めてくれたげっど気に入られてしまった?


多分、孫を可愛がるようなお気持ちなんだろう


「はい陛下」


「それでは父王、後がつかえている様なので我々はこれで」


「おお、後は好きに楽しむが良い」


結構呆気なく王様の下を辞して広間の隅に行くが視線を向けられても話しかけようとする者はいないがその内音楽が流れ出し人々が踊りだすと、インフー様が手を差し出す。


「踊って下さいますかレイカ」


「喜んでインフー様」


インフー様と私では身長差があるから踊りにくいけどインフー様が上手くリードしてくれる。真っ赤な衣装が花のように広がり綺麗で本当にお姫様気分。インフー様も何時もよりかっこよく見える。


側では同じ様に女の人達の衣装が花が広がっていて、まるで大広間に色とりどりの花が咲き誇っているようだった。


一曲終わると突然違う手が私をの手を引く


「綺麗な花を独り占めはずるいぞ、私と代われ」


「ユンフー様!」


インフー様は少し驚いた顔をするが私の手をユンフー様の手に渡し少し落ち込んだように下がって行った。


次の曲が始まりユンフー様と踊り始める。ユンフー様は私より頭一つ分大きいだけなので踊るには丁度良い相手で、リードも優雅でお上手だ。


「レイカの婚約者にしては冴えない男だな」


「インフー様はカッコいいしとっても優しいです」


「服は婚約者からのだろ…趣味はあまり良いとは言えないね。上から下まで真っ赤なんて下品だよ」


「そうですか?」


「今度私がレイカに似合う服を送ってあげる」


「婚約者がいるので、それに近々田舎に戻る予定ですから」


「えー もう少し王都に居ればいいのに」


どうもこの皇子様とは女友達のような不思議な関係になっており、私も割かし気さくに話せる。


踊りながら話しているので皇子様の足を踏まないかひやひやしたけど無事一曲踊り終える間際に神力を掌から吸い取る。いまいち加減が分からないのでフォンフー様で色々試してみたのでばれない自信はあった。


曲の終わりの礼をすると知らない虎族の青年から手が差し出される。


「一曲お願いします」


人間で言うと十七,八ぐらいの紺の髪に紫色の目のカッコいい青年だ


「今の内にレイカも色んな男と踊りなさい。結婚したら他の男とは踊れないからね」


第七皇子様がそう言って去って行ったのでその人の手をとると目を見張るように私を見て顔を赤くする。曲が始まっても終始無言で一言も話さないまま終わると次々に手が差し出され休む暇もなかった。







インフーがレイカの踊り続ける姿を心配げに眺め続けている姿は笑える。


「レイカは引く手あまただなー 婚約者として心配だろ」


「フォンフー様からかわないで下さい」


しかし、レイカが次々と相手を替えながら踊って行く姿はある意味滑稽だ


先ず大人と子供ではバランスが不自然、しかも男どもはレイカの美貌に見惚れ神力を盗まれているのにも気がつきもしない……考えてみれば恐ろしく化け物じみている行為だ。


何時か自分も食われるのではないかと言う恐怖が無きにしも非ず


今は利害の一致で協力しあっているが、もしレイカが龍族として目覚めたら直ぐさま青龍国に戻ってしまいかねない


あいつの目的は母親を助けだす事だからな


そう言えば自分の母親に会うのを忘れていたのを思い出し、側室が座る席を見るとその姿は無い。こういう大勢が集まる場所が苦手な人だからそうそうに部屋に帰ってしまったのだろう。後宮は皇子であろうと母親に面会に行くのにも一々手続きが必要なので面倒だったので此処で済ましかったが諦めよう。


「そろそろレイカを休ませてやったらどうだ」


「そうですね!」


俺の言葉を待っていたかのようにレイカを連れ戻しに行くインフー 


ところが、大広間の入り口辺りからざわめきが広がり人だかりの中からあいつが姿を現す。


俺があいつを見ると同時に視線が合いゾクリと背筋が泡立つ


何時の間に音楽も止んでおり、まるで主役が現れたかのようだ、そして大勢の取り巻きの間から忌々しそうに睨む第一皇子。どうやらそうそうにこの場を辞した方がよさそうなのでレイカ達を捜すと丁度奴がレイカの前を通り過ぎるところだったが、黒い髪に少しは関心を持つかと思ったが一瞥もせずそのまま父王の下に行きい跪くのだった。


誰もあいつの優美な姿に見惚れており王に跪く姿は絵のように完璧だ


「陛下、挨拶が遅れ申し訳ありませんでした。今日は陛下の御生誕を祝う品を用意するのに手間取ってしまいました」


「ほ~ それは楽しみじゃの、一体何を用意したんじゃ?」


そしてあいつが差し出したのは光輝く神核だった。


会場が大きなどよめきが起こる。


「「「 おおーーーー 神核だ!」」」


神核は神族の体内にありそれを取り出すのは至難の業、普通は取り出した神核は直ぐに石化してしまい只の石でしかないが、崋山に居る神獣の中で白い色を持つ神獣だけが生きたまま神核を取り出せ、それは光を失う事無くあり続ける。


そして白く光輝くその神核を神族が飲み込めば自分自身の神核と一体となり寿命が延びると言われており貴重品だ


しかし崋山に入山出来る神族は力の強い高位の者しか行けず、しかも特殊な力を持つ白い神獣を狩る事はヘタをすれば反対に返り討ちに遭い生きて崋山を降りる事は出来ない。


そんな事を出来るのは王になる資格を持つのと同等だった。


「おお~ それはそなたが狩ってきたのか!!」


父王は喜色満面の顔でそれを受け取る。


「はい、どうぞ私の陛下への忠誠と親愛の証です」


「うむ、それでは遠慮なく頂こう」


父王は躊躇う事無く神核を一呑みで飲み込んでしまうと、父王と王妃の体が仄かに光り輝く――父王と王妃の神核は結ばれているので同調しているのだ。


会場の虎族達が一斉に声を上げる。



「「「「「「「「虎王様万歳!!」」」」」」」」


「「「「「「「「虎王様万歳!!」」」」」」」」



流石としか言いようがない


奴が王に王位の譲位を願い出たのは公然の秘密として全ての虎族が知るところであり、そして王位は譲られなかった。その事で王宮での奴の地盤は揺らぎ、第一皇子の次期虎王の呼び声が多くなり奴としては許せない状況だ


だが此の事で奴は自分の力を誇示し父王への忠誠心も示した事になる。


これから、本気で第一皇子を蹴り落とし王宮での力を強めていくのだろう


それに奴は少なくとも自分の分を狩って神核を取り入れているはずだ、王との力の差を縮めるはずがない


俺は茫然とその様子を見ていると、人の隙間を掻きわけインフーが戻ってくる。


「フォンフー様大変です。レイカが急に倒れてしまいました」


「なんだと?何があった」


見ればインフーに横抱きされたレイカが顔を真っ青にさせて気を失っていた。


「分かりません! 神核を見て急に涙を流したかと思うと倒れてしまったのです」


「直ぐ離れに戻るぞ」


「はい」


一体レイカに何が起こったのか分からないが、この場に留まるのは良くないと判断し、人々が父王と第三皇子に熱狂する中見られる事無く抜け出すのだった。











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