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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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神力の兆し






「痛い……」


「キィ~」


私のほっぺは凄い事になってしまった。まるで林檎が張りついた様に腫れあがり歯が折れなかったのが不思議な位


水で濡らした冷たい布を自分で当てながら自室に籠っていた。


チェンさんに第三皇子様にこの顔を見せるのは失礼だと言われたので部屋から一歩も出ないように言い含められてしまい、楽しみにしていた皇子様を見れなくなってしまった。


「フォンフー様の馬鹿! こんなに酷く打たなくてもいいのにー 」


喋るだけでも痛みを伴い頬の熱が体全体に広がって行くようで体も熱っぽくだるくなって来たので寝台で横になる。


こうなったのも私がフォンフー様の神力を全て食べちゃったせいだけど……


私は、フォンフー様の虎核を感じた時欲しいと思った途端意識が飛んで頬を打たれ正気に戻った。


自分でも訳が分からない???


「キュウ~」


「ハクは外で遊んでおいで」


何時もは外で遊んでいるハクも何処で知ったのか私が部屋に戻されると直ぐ戻って来て久しぶりにベッタリと心配げに側を離れない


なんだか熱が上って来たようで頭がボーっとしてくる…小さい頃熱を出す度、心配げに看病する母様を思い出す。私より辛そうな表情で側に付いてなんだか母様が倒れてしまいそうで早く良く成らなきゃと小さいながらに思ったっけ…


母様はどうしてるだろう?


私の事を忘れてないよね……


早く帰りたいけど、今のままじゃまだ無理


あの男がいる限り母様を苦しめてしまう


力が欲しい


力が……









『レイカ……』


「母様?」


母様の手には石の玉の付いた金の鎖の首飾りを持っていた。


『いい? これはレイカが生まれた時に手に握っていたの、だからもしかしたらレイカは本当は龍族として生まれたのかもしれない』


どうやら私は籠の中で寝かされているようで、母様は悲しげに私の顔を覗き込んでいる。


『ゴメンね、人間に産んでしまって…… 私はレイカと同じ時を生きられない』


母様は泣きながら私の首に石の玉に金の鎖を掛けてくれる。私はその玉を手に取るが自分でも驚くくらい小さくて動かしずらく、なかなか上手に玉を持てない。


多分私が赤ちゃんの時なんだろうか?


『ファン様はこれは龍石だって仰っているから大事にするんだよ。 何時か龍核になってレイカが龍族になったらいいのに…… 」


母様は赤ちゃんの私を抱き上げ優しく抱っこしてくれると、母様の心音と温かい温もりに包まれる。


『この石を肌身離さず大事にしてね』


「母様大好き、もっと抱っこして」


『レイカ…… 私の愛しい子』


「母様…… 」


『さあ、お昼寝しましょ。お唄を歌ってあげるよ』


母様は小さい頃よく歌ってくれた子守り唄を歌ってくれるが、私はもっと話がしたい!


「母様! レイカとお話しして、目が覚める前に一杯お話しがしたい!」


だけど母様に一生懸命話し掛けるのに聞こえていないようだ


それならせめてこのまま母様の胸に抱かれずっと側にいたい


……そうこれは夢なんだ


母様の声が段々小さくなって行く……  きっと赤ちゃんの私が寝ようとしているんだろうか


久しぶりに見た母様の綺麗な黒い瞳は涙で濡れていた 


何時も微笑んで優しい母様しか知らなかったけど、もしかして私の知らない時にこうやって泣いてたのかしれない


泣かないで母様


私はきっと力を得て戻るから











額に冷たい物が乗せられた感触で目を覚ますとカヤさんが心配そうに顔を覗き込んでいた。


「気が付いたレイカ? 凄い熱でビックリしたんだよー」


「カヤさん?」


「お母さんだとでも思ったんでしょ~」


「えっ?」


「熱にうなされて母様て何度も言ってたわよ」


「母様の夢を見てたの……」


カヤさんは氷の入った革袋を差し出し頬に当ててくれ気持ちいい


「レイカはまだ十歳だもんね、私も家を離れたのは十二歳の時だけどヤヤが一緒だから寂しく無かったけど、レイカは五歳からここに居るんだもんね……」


「母様に会いたい」


熱のせいか弱音をこぼしてしまう


「それじゃー、この野菜スープと薬を飲んで 元気になって一杯働いてお金を貯めなきゃ! 」


お盆に載っていたのはあの苦い薬


嫌な顔をするとカヤさんが笑い出す


「プッーー アハハハハハ~ 酷い顔だよレイカ、すっごい不細工!!」


「酷い!」


相変わらずハッキリ言うカヤさん、頬を膨らませたかったが頬が痛くて出来ない。一体今はどんな顔をしてるの私?


「だってこんな時しかレイカに不細工なんて言える機会なんてないんだもの」


意地悪そうにニヤリと笑う


「本当、虎族の血が引いているだけあって益々綺麗になってくるから一緒に居る私は嫌んなるよー」


「むう~?」


「今日いらっしゃった第三皇子様も凄い美形よ! インフー様も目じゃないわ、 一目見ただけだけど目が潰れうかと思った」


目をキラキラさせて言うカヤさん


「いいな~ レイカも見たかった……」


「不細工はゆっくり休んでて、私が確り見て置いてあげるから」


意地悪い言い方だけどカヤさんなりに気を使って言ってくれている。 夜に又話してあげると言って部屋を出て行く。 忙しいのにレイカの様子を見に来てくれたのだろう


部屋を出て行く時に「ありがとう」と言うと耳が赤いのが見えたので案外照れ屋さんなのだ。


カヤさんが出て行くと痛いのを我慢してスープを飲んでから苦い薬を飲み込む。


「苦い~」


「キッキ」


扉を上手に開けてハクが入ってくる。


「ハク、何処行ってたのご飯食べたの?」


「ウッキー」


膝に跳び乗ってくる。


「母様の夢を見ちゃったハク……母様泣いていた……」


首に下げている金の鎖を取り出すと先には丸い石が付いている。夢で母様はこれは龍石だと言って大事にするよう言っていたけど…フォンフー様の虎核に比べかなり小さい気がする


久しぶりにマジマジと見てみると矢張りただの石だけど


……!!


「アレ?  この部分だけ黒くなってる!?」


灰色の石肌の一部だけ染みのように黒くなっており不思議な光沢…まるで黒い真珠のように色が変わっていた。


「何時からこうなったのかな、ハク知ってた?」


ハクに見せると何故か嬉しそうに興奮して鳴きだす。


「ウッキ~、ウッキ~ ウッキ~キ~ 」


「ハクどうしたの? これの意味知ってるの?」


ハクはおもむろに首飾りの石を握る。


『 レイカ、モット モット シンリキ アツメル 』


「エエッ!! 」


突然知らない女の子の声が聞こへ、驚いて辺りを見渡すが誰もいない…ハクと私しかいるはずがない……


恐る恐るハクを見て聞いてみる。


「今話したのはハク?」


『 そう ハク 』


驚愕のため頬の痛みすら忘れてしまう……普通の猿よりかなり賢いのが分かってたけど会話も出来るなんて


「何時から話せるようになちゃったの!!」


『 ハナス チガウ ココロ デ ハナス  リュウセキ ノ チカラ 』


龍石ってこの石の力? ハクは何でそんな事を知ってるの?? ハクは特別な猿何だろうか


『 チガウ レイカ チ モラッタ チ オシエテクレタ 』


「私の血?!」


そう言えばハクを助けた時指を噛まれて血を吸ったのを思い出す……私の血は確かに龍族の血を引いてるけど人間、血それだけでも特別な力があるの?


『 レイカ ニンゲン チガウ 』


「えっ? 私の心が読めるの!! 」


『 ココロ ツナガッテイル 』


つまり、声を出さなくても話が出来るの……試しに心で話してみる。


私は人間じゃ無かったら龍族なの?心でハクに問いかけてみる。


『 マダ チガウ リュウセキ チカラ ミタス 』


本当に通じた!!!


この石に? そうすれば私は龍族になれるの!!


『 ハク ヨク ワカラナイ デモ シンリキ アツメル チ イウ 』


私の血が


ハクは突然フニャリと膝に寝転がる。


『 ツカレタ ネル …… 』


「ハク、ちょっと待って! もう少し詳しく……」


ハクは私の膝に丸まって既に眠りについている、もしかして私と話すにも力を使ってるのかもしれない


神力をもっと集めろとハクは言った。


この五年間フォンフー様が神力を与え続けてくれたお陰でこの龍石が変化したの?


だったらこの龍石を全て満たすとしたら十年以上は掛かる事になるのでそんなに待てない

もっとてっとり早く神力を集める方法は無いだろうか


今度フォンフー様に相談してみよう……そう言えばフォンフー様どうしてるんだろう?


カヤさんに聞くのを忘れていたが何も言っていなかったので大丈夫だったんだろう。


石の首飾りをもう一度見てから大事に服の中に戻す。


これで母様の元に少し近づいたようで嬉しかった。









その晩仕事を終えたカヤさんは大騒ぎで入って来る。


「フォンフー様がお屋敷を飛び出して何処かへ行ってしまわれたようよ!」


私の熱は少し治まったけど頭がボーっとしていたけど、カヤさんの言葉で目が見開く


「ヘッ? どうして?!」


「何でも御兄弟喧嘩をして、拗ねたフォンフー様が窓から跳び出したらしく、それを聞いたインフー様が慌てて捜そうとしたんだけど第三皇子様に止められたみたい」


「兄弟喧嘩! 原因はなんなの?」


フォンフー様は第三皇子様をかなり毛嫌いしてたから……でも何で捜さないんだろ


第三皇子様もフォンフー様が嫌いなんだろうか


「何でも王都に帰るかどうかで揉めたみたい」


「王都に! フォンフー様は王都にお戻りになるの!」


「其処までは分かんないけどまだ先なんじゃない? 第三皇子様は明日の昼前には王都にお戻りになるらしいから」


「良かったー急な話で驚いちゃった」


「レイカはフォンフー様が王都に戻られる時は一緒に付いて行くの?」


「うん、そのつもり カヤさんは?」


「まさか付いて行く訳無いでしょ。私みたいな田舎の人間が王宮なんかで働けないし、この土地が好きだから離れられないよ」


「そっか……」


折角お屋敷の皆と仲良くやっているの離れ離れになるのは寂しい……、ずっと一緒には居られないんだと初めて気付いた。


「そんなにションボリしないの、まだ先のことよ……まだ熱があるみたいだから早く寝なさい不細工レイカ」


「ブ――  お休みなさい」


カヤさんは私をの寝台に横たわらせ布団掛けてくれ、冷たい水で濡らした布を頭に乗せてくれる。


カヤさんの優しい毒舌も慣れたが、結婚相手にもこんなんだろうか? 少々行き遅れ気味だがすっかり大人の女性になり綺麗になり恋をしているせいなんだろうか?


私はどんな人と恋をするんだろう?


だけど今は恋より母様


私の一番は母様だった。


枕元にはハクがアレからずーっと寝ていて起きない、心で話すのはそんなに疲れるのかも、そんなにしょっちゅう話せそうもないけど、これから話せると思うと楽しみだ


王都に行けば虎族が大勢いいるから神力が一杯集まる?


だけどその前に自分の力を自由に操れないと集められないので話しにならない


レイカが龍族になったら母様は喜んでくれる。


ズーッと一緒に生きる事が出来て、母様を悲しませないで済むんだ


ハクのお陰で自分の事が少し分かり、矢張りハクはレイカに幸運を運んでくれる。


ファン様の言う通りハクは吉祥の白い獣


白いふわふわのハクの毛に顔を擦りつけ抱きしめる。


「ありがとう…ハク」


そう言えば、フォンフー様の色はハクに似ているかも


フォンフー様にこんな事言ったら又怒られて打たれそうだけど、フォンフー様も私にとって幸運を運んでくれた人


私にある力に気付いて引き出そうとしてくれている。


多分フォンフー様には違う目的があるみたいだけどお世話になっているから、少しは恩返しで協力はしたいけど、第三皇子様の暗殺だけは遠慮したい


目的はそれっぽい気がするんだけど


ドロドロの兄弟喧嘩に巻き込まれそうな予感をひしひしと感じるのだった。











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