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龍王の娘  作者: 瑞佳
第二章 白虎国編
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進退





翌朝目を覚ますとチェンさんが心配げにレイカの顔を覗き込んでいた。


「良かった目を覚ましたのね。昨夜から酷い熱が出て大変だったのよ」


そう言い濡れた手拭で顔の汗を拭いてくれる。


「熱?」


そう言えば体が重くて熱い


「レイカちゃん 体を起こせる? お薬を飲んで欲しいんだけど」


コクリと頷くとチェンさんが手を借りて体を起こすとハクが膝に乗って甘えてくる。


「キュ~ キュ~」


「ゴメンね、ハクに心配ばかりかけて」


ハクの頭を優しく撫でると気持ちよさそうに目を細める


「仲が良いのね」


「ハクはレイカの妹なの」


そう言うとチェンさんは目を細めて微笑ましそうにレイカとハクを見る。


「そうなの、それじゃーお姉さんなんだから苦いお薬でも我慢できるわね」


そう言ってどろりとした緑色の薬を匙ですく口元に差しだして来る。


「えっ…」


苦い薬をそれから二匙も飲まされ口の中が苦くて大変な状態になり水を飲んだけど吐きそう…


「偉いわね。 それじゃあ御褒美にお口を開けて」


言われるまま口を開けると甘い味が広がる。何か丸い小さな玉のような物で舐めていると徐々に融けて無くなる。


「美味しい! これなあに?」


「飴玉よ。初めてなの」


「うん」


「そう、いい子にしてたら後であげるからもう少し寝てなさい」


そう言いチェンさんはレイカを横たえさせ布団を掛けてくれ、頭を冷やす手拭を額に乗せてくれる、また後で来るからと言い残し部屋を出て行った。


ハクは相変わらずへばり付いている。


熱はそんなに高くないけど体がだるい


早く体を治して働かなくっちゃ


母様が家で待っている。


何時も当り前のように居た母様が側にいないのがこんなに寂しくて心細いなんて


ハクが居なかったらもっと寂しくて堪らなかっただろう


「ハクずっと一緒だよ」


「ウッキ―」


薬の所為かまた眠くなる。








「どうでしたかチェンさん」


「やっぱり金色でした」


「そうですか… 益々ややっこしい子供だ」


「でもとても可愛い子だわ」


可愛い?


昨日見た顔はお世辞でも可愛いとは思えなかったが


「今話を聞いても大丈夫でしょうか?」


「まだ少し熱がありますから、夕方なら大丈夫ですよ」


「分かりました」


チェンさんの助言通りに夕方また訪れる事にするがあんな小さな女の子をどう扱えばいいのか分からない


全くフォンフー様も厄介な物を拾って来るから困ったものだ、いい加減こんな田舎から出て早く王都に戻って欲しいが


王宮には御兄弟が大勢いらしゃるから煩わしいらしいが、何れは国政に携わる要職に就いて欲しいのだがどちらかと言うと軍属を希望しているらしく剣術ばかりに熱を入れ勉強には見向きもしない


上の兄皇子達が優秀な所為もある


神力は御兄弟の中でもかなりの上位を示され次期虎王も夢では無いと思うのだが


天帝様に次期虎王に選ばれる為、日々神力を高め切磋琢磨されている兄皇子達を少し見習って欲しい


本人は全くのやる気なし


教育係である私が悪いのかと悩む


ああ……また胃が痛む











お昼に目が覚めるとチェンさんがお昼ご飯を持ってきてくれた。それは野菜のスープに麺麭を浮かべた物で、塩味のあっさりした物、丸一日食べていないので消化にいい物にしてくれたらしいけど最後のお薬が苦いので、折角の食事も台無し


飴玉が無ければ乗り越えられない苦さだよ、ハクも匂いを嗅いで逃げて行く


でも薬のお陰で熱がすっかり下がり午後はとても元気になったので明日から働けないかチェンさんに聞こうと考えている。


寝台を抜け出し窓から外を見るとこのお屋敷の塀の向こうには疎らに幾つもの屋根が見えていて、綺麗に整えられた畑が広がっており農村のような所らしい


「お家では周りは森に囲まれてたから変なかんじ」


王都は建物が整然と並んで沢山の人が住んでいたし、貧民街は粗末な家が迷路のように建っていた。


「場所によって色々違うね」


「ウッキ」


どの方角に青龍国はあるんだろうか


空だけはどこから見ても同じなんだな~と思いながら、流れて行く雲を眺める


「あの雲に乗れたら空からお家探せるかな?」


「キッキ?」


母様はなにしてるんだろ?


ファン様やサンおじちゃまも付いてるからきっと大丈夫


母はあの結界の家を出れなので、レイカを捜せないからファン様に捜すようお願いしてるはずだけど、国内を捜してるだろう


まさかレイカが隣国にいるなんて思わないだろうからどうしよう


知らせないと



「そうだ!手紙を書けばいいんだ」


そうすれば迎えにも来て貰える。


王都に行くお金を貯めるよりそっちの方が断然早い


名案が思い浮かびこれできっと母様が待つ家に帰れると思うと部屋中駆け回りたくなる。

「やった!ハク、レイカ達戻れるかも」


そしてまた母様と暮らせる


母様と二人とハクで暮らせる……


暮らせる?


「あれ!?」


暮らせない!!!!!


大変な事を思い出す。


あの男の事を忘れていた


母様を閉じ込めている紫の髪に金色の目の男


レイカを殺そうとした怖い男の事をすっかり忘れていた


家に帰ればあの男が許さないだろう、母様もまた酷い目に会う


レイカと同じ金色の目


怖かった


雰囲気が普通じゃない、フェンおじちゃま時折怖いと感じる時があったがそれ以上の何かを感じた。


フェンおじちゃまより高位な龍族なの


『そいつの自慢が金色の目で龍王陛下様と同じで国では二人だけだ』


テジャの言葉が蘇る


龍王様なの


レイカの父親は龍王様なの


そんなの嘘だ


信じられない


もし龍王様なら青龍国に戻れない


幾らフェンおじちゃまが大将軍でも龍王様には逆らえないし、レイカを庇えば母様のような目に会うかも知れない


折角見えた希望が消えそうだ


あの男はレイカが生まれた事を知らないようだった


きっと母様はこうなる事が分かって、秘密で育ててたのにレイカが父様の顔を見たいと思ったばっかりにこんな事になちゃった


レイカは王都に戻っちゃダメなの


見つかったら殺されちゃうの


どうしよう


帰ると皆に迷惑をかけちゃうかもしれないなんて思いもよらなかった。


『まっ諦めろ。 母親が秘密にするならそれなりの身分の龍族だ。詮索するとお前だけじゃなく母親も酷い目に遭うぞ』


あの時のテジャの言う事は正しかったのに、素直に聞いとけば良かったと後悔ばかりが湧く


帰れない……


折角腫れが引いた顔にまた涙が伝う


今さらどうする事も出来ない


もしかしたらレイカがいない方が上手く行くのかもしれない


そんな思いに傾く心を戻す事は出来なかった。







どれくらい泣いたのだろ


長い時間ハクを抱きしめ静かに涙を流し泣いていた、ハクは静かに寄り添ってくれ本当にいい子


「大丈夫っですか……」


突然声を掛けられ驚いて顔をあげると、涙でぼやけた目に銀色の髪の人間が飛び込んでくる。


銀の髪!


「サンおじちゃま!!」


その人物に思わず飛びつく


サンおじちゃまが迎えに来てくれたんだと単純に思ってしまった。


「母様のとこに連れて行って! レイカ二度と我儘を言わない! 父様なんていらない!お願い」


泣きながらサンおじちゃまに訴えるが何の反応も返ってこない?


「あの~ 人違いをなされているようですが……」


「えっ?!」


抱き付いた相手の困った声を聞きその人の顔を見る。


そこには銀色の髪のカッコいいお兄さんがいた。


サンおじちゃまと同じ銀色の髪だがこの人のは真直ぐで横の髪そのままにして後を三つ編みにして、目も緑では無く空のような水色で肌の色も少し茶色がかった少し垂れ目気味の優しい風貌の人だった。


「だあれ?!」


ここに来て初めて会う人だ


「私はインフーと言いますが、貴女はレイカちゃんでいいのですか」


コクリと頷きながら何しに来たんだろうと見詰める。


すると何故か顔を赤らめるインフーさん


「このお屋敷の御主人様?」


名前にフーがつくのは虎族だと習った覚えがある。ちなみに龍族はロン、亀甲族はグゥイ鳳凰族はフォンが付けるのが習わしみたい


「いっいいえ違います。ここの主はフォンフー様と仰います」


そう言いながら手巾で涙を拭いてくれる。


「何か御用ですか……」


「レイカちゃんの事を色々聞きたかったんですが、気分がすぐれないなら明日でもいいですよ」


優しく微笑みなが聞いてくれる。どうやら優しい人のようにみえる


「もう大丈夫」


母様の所に戻れないならここで働いて置いて貰わないと知らないこの国で生きていけない

貧民街でボロをまといお腹の虫を鳴らしながら来ていた子供達


ここを追い出されたらレイカもそうなるだろう


泣いていても現実は変わらない


「色々聞いてもいいかな?」


「はい」


「レイカちゃんは青龍国の王都から来たんだね」


コクリと頷く


「ご両親の名前はわかる」


「母様はアオイ、父様の名前は知らない」


「お母さんは名前からすると人間だけど、お父さんは龍族なのかな」


「龍族だよ」


それもとびっきりの龍族、龍王様かもしれない


「レイカちゃんのような龍族の子が妖獣の森にいたのは、誰かに攫われたの?」


「違う…多分父様に捨てられたんだと思う……レイカを秘密で産んだ母様が父様に内緒にしていたの……だけどレイカが父様の顔を見たくてコッソリ覗いたら見つかって……それから……それから……」


言葉がつまりまた涙が溢れる。


最後に見た母様が斬られる姿を思い出しまう


「辛いならもう言わなくていいだよ…」


オロオロしたインフーさん、だけどここまで話して止めるのも嫌だから泣くのを我慢しながら俯いて続ける


「それから、レイカを見た父様が驚いてレイカを殺そうとしたけど母様が庇って斬られたの……そこまでしか覚えてない……目を覚ましたらあのハクとあの森にいたの……だから父様がいらないレイカを捨てたんだと思う……」


インフーさんは絶句していた。


「そ…それは大変な目に……」


「レイカはどうすればいいの……お家に戻っても殺されるかもしれない」


自分で考えてもどうしていいか分からないのでインフーさんに聞いてみるが返事が返ってこない


「インフーさん?」


顔を上げてインフーさんを見上げると


「イッ!!」


目を真っ赤にさせ泣いている


多分、声を我慢しているの下唇をかみしめ真一文字に引き結びかなり情けない顔


思わずインフーさんの手巾で涙を拭きが返してあげる。


「ずっずみましぇん~~ うっうう……」


男の人が泣くのを初めて見るので驚いてしまい、レイカの涙が引っ込んでしまう


こう言う場合どうすればいいの??


仕方ないのでインフーさんが落ち付くのを待つしかない










チェンさんの話では熱もさがりかなり元気になったようなので夕方前にあの子共部屋を訪れる事にしたが


扉の中から聞こえてくるのは微かな泣き声


通常の人間なら聞き取れないだろうが虎族の私には意識を集中すれば聞き取れてしまうから厄介だ、このまま知らない振りをして通り過ぎたかったが小さい女の子が声を押し殺して泣いているのがなんとも憐れだ


フォンフー様の話では母親を亡くしたばかりらしいのでそれで泣いているのだろう


ハッキリ言ってこういう話しは危険だ


図らずも涙腺が緩くなり男のくせに泣いていまう確率が高い


可哀想な話に弱いのだ


そのまま見捨てる訳にもいかず静かに入って行き声を掛け、その子が顔を上げた瞬間驚いてしまう


昨日は腫れて真っ赤で瞼も腫れ半眼状態だったのに今はスッキリとした顔に戻り、肌も体と同じく白いそして涙で濡れた瞳は金色に煌めき大きな瞳を見開き、その子も驚いているようだった。


そして誰かと勘違いして小さな体を私に向かって抱き付いてきた。


もし十数年後のあの子に同じ様に抱き付かれたら思わず押し倒していただろう


あくまでも十数年後を強調する!


私はそういう趣味は無い


こんな綺麗な子供を見た事が無かった


昨日とまるで別人


同一人物とは思えない


神族は美形が多いので虎族の美しい子共も大勢見て来たがこの子は別格だ


纏う色が他にない所為かも知れない


美しい見事な黒髪もさることながら金の瞳は別格だ


まるで暗闇に光る月のようだ


この色に魅せられない神族はいないだろう


この子が後十数年経ったらどんなに美しい娘になるのか容易に想像できる。


しかも境遇を聞けば、かなり辛い目にあったようで途中から既に涙を耐えるのに限界が来てレイカちゃんも辛そうなので話を止めたかったのにレイカちゃんは健気にも話を続けてしまう


もう限界だった


涙は決壊してしまた……


小さな女の子の前で泣いてしまうと情けない姿を曝してしまったが、レイカちゃんは優しく涙を拭いてくれた上に笑う事無く黙っていてくれた


フォンフー様には少々生意気な感じは否めなかったがアレはフォンフー様がいけなかったのだろう


こんな綺麗で優しい子なら、十五歳になったら結婚を申し込みたいくらいだ


あくまでも仮定の話ではある。




漸く涙も治まりお互い寝台に座り気まずい雰囲気だ


この雰囲気を変える為にも話をしないと


「レイカちゃんは何歳ですか?」


「五歳」


五歳なら後十年すれば立派な大人だ


「私は九十歳になります」


「?」


話しを続けるために自分の事を話そうと思ったのだが


「家族は私をいれ五人おりまして父は大司農府で官位の職を持ち母はそんな父を支えいます。上に兄と姉がいるのですが既に家庭を持ち自立してます」


「いいな…レイカも……ヒック ウェン…」


父親に殺されかけ母親もどうなったか分からない状態で家族の話をするのは流石に不味かった


「ああ…ごめんなさい 無神経な事を言ってしまって」


小さな女の子を泣かせてしまいオロオロしてしまうがアレの事を思い出す


「そうでした、これをレイカちゃんに返そうと思っていたんです」


懐から真珠の髪飾りを包んだ布を取り出し目の前で広げると涙を止める。


「母様の髪飾りだ」


真珠の髪飾りを手に取り大事そうに受け取る


「チェンさんが体を洗う時に服に入っていたのを預かっていたんですよ」


「ありがとう」


ズッキュン


礼を言いながら少し微笑む少女の顔に胸を何かに打ち抜かれる


何だこの衝撃は


「/// いえー 私は預かっただけなので、高価な品ですから大事に仕舞って置いて下さい」


「でもレイカ仕舞う場所が無い」


「それなら大丈夫です。この部屋を好きに使っていいので、この引き出しは鍵が掛けられて安全です」


備え付けの机の引き出しを示す。


「レイカここに居てもいいの?」


「ええ、行くところが無いなら好きなだけ居て下さい」


するとレイカちゃんは私の首に跳び上がり抱き付く


「これから如何すれば良いか分からなくて怖かったのー ヒィーンエ―ンエンエ~ン」


小さい体はとても軽く強く抱きしめれば壊してしまいそうなので、良く母がしてくれたように背中を撫でてあげる。


こんなに小さいのに一人で我慢してたのだろう


まだ五歳なのに


この子を守って上げたい


決して不純な動機では無い! これはただの加護欲だ!!


多分……


何だか自分でも危ない道に走りそうで怖い




それからもう少し話をして親交を温め有意義な時間を過ごした。


明日は朝食を一緒にとる約束をして部屋をでた。


明日の朝が楽しみだ








夕食後フォンフー様の部屋でレイカちゃんの報告をする。



「それで、あのガキは「レイカちゃんです!」… 」


「そのレイカは父親に殺されそうになったが妖獣の森に捨てられたと言うんだな」


「はい、その通りです」


「それでその父親は龍族の誰なんだ」


「それは分からないようです」


「龍族で金の瞳を持つのが誰だか知っているか?」


「確か龍王陛下がそうだと聞いておりますが、他の龍族でいるかどうかまでの情報は…なにぶん他国なので知る由もありません」


「単純に考えれば龍王の娘になるが、王が人間だからと言って子供を殺したり捨てたりするのか」


「有り得ないと思いますよ。龍族は我々より更に子が出来にくい体質ですから人間だと言って殺すなど…… しかも龍王と言えば四神国の王の中でも清廉潔白で前龍王の悪政を正し、善政を施している善王として有名なお方、そんな龍王陛下がそんな悪逆非道な事をするとは思えません」


「だよな…じゃあ誰だ」


「まさかレイカちゃんを青龍国に返すつもりなのですか!」


「レイカが龍族なら問題になるが人間だしな、しかも父親に捨てられたんなら此処に置いても問題にならんだろ」


「ありがとうございます。フォンフー様」


「何でお前が礼を言うんだ?」


「いえ、父親に捨てられるなどあまりに不憫で」


「貧しさで子供を捨てる親なんて幾らでもいるだろに、そんな事で一々同情してたら切りが無いぞ」


「でもレイカちゃんを拾って来たのはフォンフー様ですよ」


「五月蠅い! 俺はやる事があるから出ていけ」


都合が悪くなると直ぐこれだ


インフーは仕方なく部屋を出て行き今夜は早く寝ようと思うのだった。











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