プロローグ
広大な妖獣の森の中に小さな家が建っている。
家は小さいながら手入れが行き届き温かい雰囲気に満ちており、小さな畑、露天風呂、庭は花で溢れ、まるで箱庭の様な空間
其処には二〇歳くらいの青年と五歳の少女の親子が住んでいた。
青年は艶やかに伸ばされた真直ぐな長い黒髪、黒曜石のような美しい瞳に愛らしい唇が真珠のような肌に納まり、細身の体と相まって中性的な美しさを放っている。一方少女は青年と同じ黒い髪だが緩く波打ち毛先がクルクル巻いており可愛らしさを強調、瞳の色は黄金を溶かし込んだように煌めき、ピンクの頬と唇は白い肌を引きたており将来美しい娘になるのは約束されているのが容易に想像できた。
今、青年は居間で組み紐を組みながら娘の帰りを待っているが、その手元は楽器を奏でるかのように糸の駒をコトコトコトとリズミカルに動かし美しい紐を組んで行っている。
突然白い壁にポッカリと黒い穴が開いたかと思うと少女が現れるが、その表情は何時にも無く暗く陰っていた。
「お帰りなさいレイカ、どうしたの?」
貧民街の学問所から戻って来たら何時もは元気よく「ただいま」を言うのだが下を俯いたままだ……
心配になり少女に駆け寄り、しゃがみ込んで少女と視線を合わすと僅かにその目に涙が浮かんでいた
「レイカ何があったの」
青年が優しく尋ねると漸く少女が口を開く
「母様…レイカは愛人の子なの」
「えっ!!」
五歳の幼女の口から愛人の言葉を聞き絶句してしまう
「大きい子がレイカは龍族の愛人から生まれたから変な色だって言われたの……」
この世界では人間の半数以上近くが茶色い髪に緑の目をしており、後は少数民族と龍族なのだが龍族は力を表す特殊な色を身にまとっていた為、龍族の血を引く者は人間でありなが違う色を持って生まれるので、レイカの髪と目を見てそう判断されても仕方無かった
特に黒髪は稀だ
龍族の愛人…青年は悲しい気持ちなる
少女を優しく抱きしめながら話しをする。
「レイカは愛人の子供じゃないよ…レイカの父様は龍族だけど私とチャンと婚姻を結んでるから大丈夫、この指環が証拠だよ。」
そう言って左手に嵌る龍の意匠を施した金の指環を少女に見せる。
「じゃあ何故父様はいないの? 父様に会いたい」
青年は何時か我が子に聞かれる事を覚悟していたが真実を告げれ無い
父親が我が子の存在を知らず、もし自分の存在を知られたら殺されるかもしれないなど言えない
「ごめん…レイカを父様と会わす事が出来ないんだ」
「どうして? レイカが嫌いなの…」
今にも泣きそうな我が子をただ抱きしめるしかない
嘘は言えなかった。
「父様の分も母様が頑張るから、我慢してレイカ… うっうううん…うっう…」
初めて母が泣くのを見て少女は驚く、何時も優しく微笑み自分を愛してくれる母を自分が泣かせた事にショックを受ける
「母様ゴメンなさい…… 父様の事はもう言わないから泣かないで」
優しく母が何時もしてくれるように少女は母の頭を小さな手で撫でてあげる
それから少女は二度と父親の事を聞くまいと心に決める
自分の父親が誰だろうと母がいれば十分だ
大好きな母を悲しませたく無く、小さいながら聡明な少女は思うのだった。
青年の名前は水城藍と言い十七歳の時、崖から落ち其の時たまたま手にした金の指環によってこの天帝の治める世界に流され、龍王の伴侶としてこの結界の家に閉じ込められていた。この世界に来て既に四十三年が経っているがアオイの姿はあまり変わっておらず青年のまま――― これは龍族と婚姻する事に因り、龍族の重き命を分け合う事によって人間のアオイの命が数百年伸びた事に寄る。
しかもアオイの相手は四神国の一つ青龍国の龍王ルェイロン、謂わばアオイは男の身でありなが正妃の立場、だがその境遇は暗たんたるもので幸せとは言い難い…しかも指環の不思議な力によって龍王の子産み育てているが、それは龍王に秘匿されていた。
何故なら龍王は我血を憎み忌避していた為、子供の存在など許さず見つかれば殺されるのが必至……しかもその子は短命の人間として生を受けてしまい、母親より先に死ぬ残酷な運命の下に産まれた悲運の王女
それがこの愛らしい少女レイカであった。
しかしまだ二人は知らない
これから起こる更なる悲劇を
だがこの少女の秘めた力を誰も気付いていない
過酷な運命に立ち向かう力を
これは、そんな少女の物語
青年が母親… BLファンタジーでは普通で有です!…多分
スルーしてくれれば嬉しいのですが……こんな小説ですが宜しくお願いします。