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【第2部】第16話:アンダルス首都の攻防

 アンダルス本国、首都防衛ライン。



 シャルロッテたちを突破した数万の聖王国軍・北方別働隊は、アンダルスの都市部が目と鼻の先にある地点まで到達した。



「主力は国境だ! この首都はもぬけの殻に等しい。一気に制圧せよ!」



 勝利を確信した聖王国軍の騎兵たちが、怒涛の勢いで首都の城門へと押し寄せる。

 だが、彼らの前に立ち塞がる二つの影があった。



 ドワーフの若き天才テオと、獅子獣人の将軍レオニダスである。


 エリオからの連絡を受け、前線にいた彼らを一瞬にして首都へ送り届けたもの。


 レールガンを利用した瞬間転送システムである。と言っても、実態はただの荷物を弾丸として発射するだけの代物である。


 通常であれば、積荷は圧力に耐えられず木っ端微塵になるだろう。

 だが、その無茶苦茶を可能にするドワーフが搭乗していたのなら、話は別だ。




「ここから先は、一歩も通さないよ」




 テオが静かに両手を大地へと這わせる。



 彼の脳裏に浮かぶのは、かつて己の未熟さを叩き直してくれた師――バルガスの姿だった。


 圧倒的な防御と反撃の技術。それをドワーフ特有の無尽蔵のタフネスと融合させた時、テオのクオリアは真の姿を現す。



「顕現せよ――『絶対城壁アイギス』!」



 テオの小さな体から、爆発的な黄金のクオリアが噴出する。


 それは物理的な質量を伴った巨大な光の城壁となり、首都の前面を完全に覆い尽くした。



 突撃してきた聖王国の兵士たちは、その光の壁を突き破ろうとするが、壁は微塵も揺らがない。それどころか、凄まじい反発力によって騎兵たちは自らの突撃の威力をそのまま跳ね返され、次々と宙を舞って血を吐き捨てた。


 これぞ、かつて最強と言われた英雄部隊のタンクが使用していた攻防一体の防壁である。



「な、なんだこの異常な強度の壁は!? 魔法じゃない、ただの意志の力でこれほどの防壁を!?」



 混乱する敵軍を見据え、レオニダスが悠然と歩み出る。



「テオ、見事な防壁だ。だが、他国の者の手を借りてばかりでは面目が立たん。後は、アンダルスの仕事である!」


 レオニダスは、背後に控えていたアンダルスの一般兵たちを振り返った。


 万が一の場合残していた新兵たちで構成された部隊であり、まだ実戦経験が乏しい。


 顔は真っ直ぐに前を向いているが、恐れていることが手に取るようにわかった。


 レオニダスは、彼らを鼓舞するように、声を響かせる。


「我らが同胞よ。恐れることはない。今この瞬間より、お前たちは一騎当千の英雄となる」



 レオニダスが、その太い両腕を天へと掲げた。



 彼の内から溢れ出した金色のクオリアが、暖かなヴェールとなって新兵たちを包み込む。


 

 レオニダスのクオリア。

 完全な支援型に特化されたレオニダスの能力は、己の範囲内にいる『味方』と認識した者すべてに、自身と同等のステータスまで引き上げるクオリアの加護を付与するというものだ。


 光の膜を帯びた一般兵たちの体に、劇的な変化が訪れる。


「な、なんだこれは……!? 力が……底無しに湧いてくる!」

「体が羽のように軽い! それに、自信がみなぎって……、恐怖を……感じない?!」


 肉体的な強化のみならず、精神面にも影響を与える点が、クオリアの特徴でもある。


 ただの一般兵たちが、瞬時に『将軍クラスの戦士たち』へと変貌を遂げたのだ。



「さあ、我らがアンダルスの誇りを見せてやれェェッ!」



 レオニダスの咆哮と共に、黄金のオーラを纏ったアンダルス兵たちが、テオの光の壁を抜け、一斉に打って出た。



 聖王国軍は咄嗟に速射魔法で迎撃を図る。だが、兵士たちはとまらない。


 ついに聖王国軍の前衛と接触し、戦闘に突入した。


「馬鹿な……! こんな新兵が、なぜ我々の魔法障壁を素手で引き裂いているのだ!?」

「くそっ! 押し返せ! 魔装の強度を最大限まで引き上げろ!」



 曲がりなりにも、聖王国の本軍である。エジプーシャ軍のように、この程度で崩壊したりはしない。


 すぐさま立て直し、ジリジリと戦線を押し上げていく。

 

 

 テオの防壁があるとは言え、数で勝る相手に対して持久戦は分が悪い。


 

 なんとか相手の陣形を崩そうとレオニダスが前進を始めた時、伝令からの報告が戦場を駆け巡った。



『エジプーシャ国境の聖王国本隊、我が軍の最新兵器により完全に沈黙! 敵主力、撤退を開始しました!!』



 その報告に、アンダルス軍から地鳴りのような歓声が上がる。



 意志の力や自信はクオリアをより強固にする。


 レオニダスに付与された加護の効果が増加し、膠着状態にあった戦線をアンダルス側が押し始めていた。



 勝てる!!


 アンダルスの誰もがそう思い始めた、まさにその時。


 空が、不自然なほどに暗く淀んだ。



 テオが空を見上げると、ビリビリと肌に電気が走ったような痛みを感じた。


 テオは何かを察し、空の果てを凝視する。


 目に飛び込んできたものは、あまりにも現実離れした光景だった。


 雲を引き裂き、遥か彼方の空の向こうから、大型の『流星』がこっちに向かって飛来していた。


「違う……あれは、星じゃない……!」


 それは、数百キロ離れた聖王国本国から放たれた、超長距離からの極大魔法による砲撃。


 戦略兵器とも呼ぶべきそれは、アンダルスという国ごと地図から消し去ることを意図した、まさに邪悪の塊であった。


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