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最強の敗北

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!破邪顕正!」

憐の指が複雑な印を結び、呪符が炎の鳥となって声喰い様を襲う。しかし、声喰い様がその闇の口を開くと、炎の鳥は鳴き声すら上げることなく、吸い込まれて消滅した。

「チッ…!言霊を喰うか、厄介な!」

憐は舌打ちし、戦略を切り替える。懐から取り出した小刀で自らの指を切り、血で呪符に紋様を描く。

「我が血を贄に、鋼の式神を顕現せよ!五行相克、金の刃を以て、邪を断て!」

憐の周囲に、無数の刃物が宙に浮かび、声喰い様へと殺到する。物理的な攻撃はさすがに喰えないのか、声喰い様の体にいくつもの傷が刻まれた。だが、その傷はすぐに闇に溶けるように再生してしまう。

一方、犬飼は刑事の意地を見せていた。遮蔽物に隠れながら応戦し、組織のチンピラを二人、三人と無力化していく。しかし、多勢に無勢。じりじりと追い詰められていく。

「くそっ、キリがねえ!」

犬飼がリロードしようとした、その一瞬の隙。背後から忍び寄った男が、ナイフを振り上げた。

「犬飼、伏せろ!」

憐の鋭い声が響く。憐は、声喰い様との攻防の最中でありながら、犬飼の危機を察知し、彼を庇うように結界術を発動させた。だが、それが命取りとなった。

最強の陰陽師の、ほんの一瞬の油断。

声喰い様は、その隙を見逃さなかった。憐が術を発動するために紡いだ「言霊」そのものを、根本から喰らい尽くす。

「しまっ…!」

術が不発に終わる。力の流れが逆流し、憐の体に凄まじい衝撃が走った。体勢を崩した彼女の体に、声喰い様の闇の触手が突き刺さる。

「がっ…はっ…!」

憐の口から、鮮血が飛び散った。最強の陰陽師は、まるで糸の切れた人形のように、ゆっくりと地面に崩れ落ちた。

「神凪さんっ!」

犬飼の悲痛な叫びが響き渡る。

その光景を見て、拝島が高らかに笑った。

「終わりだ、刑事君!君も、その役立たずの陰陽師も、我らが神の晩餐となるのだ!」

声喰い様が、勝利を確信したかのように、ゆっくりと犬飼に迫る。絶望的な状況。犬飼の拳銃は、とうに弾切れだった。


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