第6話:「勇者、実はトイレ掃除のプロでした」
~魔王より汚れに立ち向かう男たち~
「くっ……この便器、普通に硬ぇ……」
膝をつき、必死にトイレブラシを握るライル。
彼の“勇者への第一歩”は、なぜか便器との格闘だった。
背後からセリナが冷ややかに一言。
「勇者って名乗りたいなら、せめて魔王倒せって話よね。今何やってんの?」
「魔王倒すのは遠すぎる! 今の俺にはこの便器がラスボスなんだよ!」
◆◇◆◇
前回、トイレ神様に「まず掃除からだ」と言われた我らがEランク冒険者一行。
掃除はただの掃除じゃない。なんか異様に汚れが強化されてて苦戦中。
ベルが鎧の手入れを中断し、泥まみれの床をゴシゴシ。
「これ、魔王の呪いか何かか? 鎧より汚れの手入れに全力出してるぞ俺……」
◆◇◆◇
図書館でミミルが巻物を読みつつ言う。
「トイレ神様はどうやら“罰を与える系神様”。汚れを放置した村人をこっぴどく怒ってるらしいわ。」
セリナが呆れて財布を見ながら。
「つまり汚れたら罰金とでも言いたいのか……やっぱり金か。」
◆◇◆◇
騒ぎが再燃。
村の井戸に謎の黒い粘液が発生。
「誰だ、こんなところで悪さしてるのは!」
ライルが剣を振ると……
「ベッタベタやんけ!」
剣に粘液がべっとりくっつき、まるで掃除用具の代わりに使われる羽目に。
「剣よりブラシの方が活躍してるってどういうことよ……」
◆◇◆◇
ミミルが呪文を唱え浄化魔法を放つが、黒い粘液が逆に怪しい黒煙を吐き出す。
「何これ、反撃!?」
ベルが鎧を固めて、言う。
「俺が盾になるから、掃除班は任せた!」
◆◇◆◇
必死の掃除バトル。
「ライル、ブラシ貸せ!」「ミミル、魔法強化頼む!」
「セリナ、後ろから援護して!」
4人の連携プレイで、ついに汚れの元凶を発見。
その瞬間――
「ぎゃあああああああ!」
巨大トイレの中からヌルヌル黒い怪物が飛び出す。
「トイレ神様の本体か!? こいつ倒さなきゃ勇者になれねえ!」
◆◇◆◇
ライルは剣を掲げ叫ぶ。
「魔王はまだ遠い。今はこのトイレ怪物を倒すんだ!」
セリナが渋々矢を放ち、ベルは前線でガード、ミミルが魔法をぶつける。
そして、必殺技を叫ぶ――
「ラッキー=スラッシュ!!」
◆◇◆◇
怪物は崩れ去り、村に再び清潔と平和が戻る。
トイレ神様が満足そうに姿を現し、勇者の証を授ける。
ライルは証を首にかけながら、ニヤリ。
「勇者伝説のスタートは、やっぱりトイレ掃除からか……悪くねぇ!」
◆◇◆◇
こうして無謀な勇者たちの冒険は今日も続くのだった。