第1章:名前はポチと命名された
承知いたしました。では、「我は犬である」の第1章を1500字程度で執筆します。ポチの誕生から生後数ヶ月の様子を描き、彼の腕白で愛らしい個性が芽生える様を表現します。
我は犬である。
名前はポチと命名された。
どこにでもある、至って平凡な響きを持つその名を、母さんは時折、甘ったるい声で呼んだ。しかし、私にしてみれば、名などどうでも良い。重要なのは、この世界に生を受け、この素晴らしい五感で全てを味わい尽くすことにあるのだから。
私がこの世に生を受けたのは、とある穏やかな春の日であった。薄暗く、しかし温かい母さんの腹の中から外へと押し出された瞬間、私を包み込んだのは、それまで経験したことのないひんやりとした空気と、様々な匂いの洪水であった。最初に感じたのは、母さんの羊水の匂い、そして隣にいる兄弟たちの、まだおぼつかない体温と微かな乳の匂い。次に、遠くで聞こえる人間の声。それは、私を抱き上げた「主」となる男の声であったことを、後になって知る。
生まれたばかりの私は、目も見えず、耳も聞こえず、ただただ母さんの温もりと乳房を求めて必死に這い回るだけの存在であった。しかし、それは決して退屈な日々ではなかった。温かい乳を飲むたびに満たされる幸福感、兄弟たちと体を寄せ合って眠る安堵感。そして何より、私という生命が確実に成長しているという喜びが、その小さな体に満ちていた。
数日後、瞼の奥に光が差し込み、やがてぼんやりとした輪郭が見え始めた。初めて目にしたのは、ぼやけた母さんの顔、そして兄弟たちの、私と同じように頼りない姿であった。世界は色と形を持つようになり、その広がりと多様性に、私の幼い心は躍った。耳も次第に音を捉え始め、母さんの優しげな唸り声、兄弟たちの甲高い鳴き声、そして遠くで響く人間の、しかし意味をなさない声が、私を取り巻く音の世界を形成していった。
特に印象的だったのは、人間の声であった。彼らは私たちを抱き上げ、奇妙な言葉を発し、時には変な匂いのするものを私たちの鼻先に突きつけた。その中で、私を抱き上げる男と女は、ひときわ優しく、そして頻繁に私の名を呼んだ。「ポチ、ポチ」と繰り返される度に、私は彼らの温かい掌の中で、何とも言えない心地よさに包まれた。彼らが私の主であり、私を愛してくれる存在であることを、その幼い胸で漠然と理解した。
生後一ヶ月が過ぎる頃には、私の体は随分と大きくなり、短い足もかなりしっかりしてきた。よちよち歩きから、やがて小走りができるようになると、私の好奇心は抑えきれなくなり、活動範囲は一気に広がった。寝床であるサークルの中を所狭しと駆け回り、兄弟たちとじゃれ合い、時には小さな唸り声をあげながら、お互いの尻尾を追いかけっこした。私の兄弟は全部で五匹いたが、中でも一番の腕白は私であったと、後になって主は笑いながら語った。
サークルの外の世界は、私にとって無限の探求心をくすぐる場所であった。主たちが食事をする食卓の下には、時折魅力的な匂いのするものが落ちてくる。それは、今まで味わったことのない、素晴らしい味覚の世界へと誘うものであった。また、主たちが身につけている衣服の匂い、彼らが使う様々な道具の匂い。嗅覚は私にとって、この世界を理解するための最も重要な感覚であった。あらゆるものを嗅ぎ分け、記憶し、分類していく作業は、私にとって最高の知的活動であった。
いかがでしたでしょうか? ポチの誕生から生後数ヶ月までの様子を、彼の視点から描いてみました。この章を受けて、第2章以降のご指示をお待ちしております。