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第7話 日曜日、アルバイト

次の日の日曜日、俺は自宅の自分の部屋でのんびり休んでいた。


ベッドに寝っ転がりながら、昨日の喫茶店での出来事を思い出す。


なんだったんだろうな、あれは・・

いや、そりゃさ、デートじゃないにしてもさ、七瀬が友人の女の子を紹介してくれるといったら、かわいい女の子と会話でもできるかな、とか、少しは期待してもいいんじゃないだろうか?

ふたを開けてみれば、かわいい顔だけど、お前の魂を寄こせとかいいかねない悪魔のようなオーラの奴が出て来たぞ。


「・・・いやいや、ここは、少しでも前向きに考えてみるか」


昨日の話を改めて整理すると、あの水城玉緒みずきたまお伊藤由香里いとうゆかりの友人、七瀬は俺の友人、玉緒と七瀬は友人どうし、ということなんで、俺と伊藤由香里のいざこざを、といっても俺が一方的に悪いのだが、それぞれの友人である七瀬と玉緒が取りなしてくれる、ということなんじゃないだろうか。

それなら、まあ、ありがたい・・・のか?


「それにしても、あの笑みを浮かべた玉緒は怖かったな・・・」


下手なことして七瀬や伊藤由香里を傷つけようものならば、俺を社会的に抹殺するのもやぶさかではない、というような目をしていた気がする。


「あれ、やぶさかではない、ってこの使い方であっているんだっけ?」


俺はスマホをとりだして調べてみる。


「えー・・・、誤用が多く、本来は『喜んですること』を意味する・・・」

うん、使い方は間違ってないな。おー、こわ。


ついでに、あの玉緒の笑顔から連想した4文字熟語をスマホで検索してみた。

「○○政治、っと。・・・ほう、フランス革命、ロベスピエール、か。・・・・・なるほど」


歴史の勉強になるなあ~

七瀬のおかげで、また一つ賢くなったぜ


・・・・・・


どちらにせよ金が足りんということで、その日の昼前、俺は母方の叔父に電話した。40代の叔父は建設関係の仕事をしている人で、自分の会社を持っているらしく、いつもいつも、人手不足だー、浩二、暇ならバイトせんか? と言ってくる人だ。


「あ、叔父さん、お久しぶりです、浩二です。いきなり電話してすんません。」

「おー、浩二、ひさしぶりだな! どうした、どうした」


「いやー、ちょっと小遣いたりなくて、何か気軽なバイトとか、手伝いとか、ないかな~って思いましてー」

「おー、そうか、そうか。ちょっと待てよ。(ごそごそ、ぺら、ぺら)・・・よし、今日午後、空いてるか?」


「へ? 今日ですか、あ、はい、大丈夫です」

「そんじゃあ、午後1時過ぎにでも、俺の会社に来てくれ、よろしくなー!」

っぷつん・・・


「・・・・」


「・・・まあ、早いにこしたことはないよな。」

俺はだらけていた体を起こして、少し気合を入れる。


それにしても、日曜日でも仕事しているのか、社会人って大変だな・・・


・・・・・・


手早く昼食を取ってから、自宅から歩いていける叔父の会社に行く。

「おー、浩二、こっちこっち」

叔父がトラックに乗って待っていたので、助手席に乗り込む。トラックはすかさず出発する。

「何か急に、すいません」

「いいって、いいって、大した仕事じゃないんで一人でやろうと思っていたが、人手があるに越したことはないしな!」


「何の仕事ですか?」

「あー、ちょっと会社関係の荷物運びだな。ま、今日のところはあんまり重い物は運ばないから、心配するな」

「おっけーです」


・・・

「どうだ、最近の学校は?」

「えー、まあ、何となくやってますよ。中学校のときのサッカー部みたいな本格的な部活動はやっていないんで、けっこう余裕はありますね」

「進学校だろ? 勉強とか忙しいんじゃないか?」

「一応、塾は行ってますけど、まだ1年生なんで、そんな厳しくないです」


「ほー、そうか、そんで、小遣い足りないってことは、もっと遊びたいってか?」

「あー、まあ、遊びたいというか・・・」

「ん、違うのか?」

「えー、と、まあ、いいですけど。今の部活の女子の同期に、バレンタインでチョコもらいまして・・・義理のはずなんですけど、なぜか、ホワイトデーは5倍返しねって言われたんですよ」


「ぶっ、ぶはっ、はっはっはっ! 何だ、何だ、義理なのに5倍返しって言われたのか?」

「そうなんですよ、まあ、結構世話になっているいいやつなんで、それくらいいいかな、と思ったんだけど、・・・小遣いたりないなあ、と思って、叔父さんに連絡したんです」

「っくっくっく、そういうことか、こりゃ、大変だ。めいっぱい稼がんとな」


・・・

「まあ、学生のうちはいろいろ悩むもんだ、それもまた面白いもんだろ?」

「ま、そうですけど。・・・おじさんも仕事で悩みとかないんですか?」


「そりゃ、こっちはこっちで、悩みがたくさんだ。いくら仕事があっても、人が足りない、設備が足りない、時間が足りない、お金が足りない、悩みいっぱいだ! 最近は、金利きんりが上昇ぎみなのが悩みの種だな。まあ、悩んでもしょうがないがな!」

「・・・金利きんりって何ですか?」


「あー、例えば、俺が銀行からお金を借りるときの利子の割合だな。1%増えれば大騒ぎだ!」

「・・・たった1%で?」


「そりゃそうさ、1億円借りてて1%増えたら、払う金額が100万円増えちまう! 大きいだろ?」

「うわ、確かに、1%でも大きいんですね・・・ちなみに、俺、チョコは5倍返しって言われたんですけど」


「金利にしたら、500%か、とんでもない高利貸しだな!」

「そうですよねー」


「まあ、男女の関係は、金利を超えるってことだな! 女心は秋の空っていうか、なかなか女心は難しいもんだ。ただな、たった5倍で気になる女の子が笑ってくれるなら、元はとれるんじゃないのか?」

「・・・・」


「気になるんだろ? そうでもなきゃ、そんなに悩まんもんだ」

「・・・そうですかね」


・・・

その後は、叔父の言うままに着いた先で荷物運びなど手伝い、夕暮れまでびっちり働いた。


「おう、お疲れ! 来週日曜日もいいんだっけ? 次回もよろしくな!」

ブロロ・・

叔父は俺を自宅に送り届けてくれ、そのまま帰っていった。


「っつ、疲れた」

ひさびさの体力仕事でやや筋肉痛だが、半日仕事でいくらか稼ぐことができた。


「ただいまー」

自宅の玄関を開けリビングに入ると、昨日と同じようにソファで妹の詩織しおりがスマホを見ていた。


こいつ、友達いないのかな・・・、いや、人のことは言えんか


おっと、妹がこっちを振り向く気配がしたので、あわてて冷蔵庫のほうにいく。

「・・・お兄ちゃん、今日はどこ行ってたの?」

珍しく、妹から俺に話かけてきた。


「あー、叔父さんとこ、バイトしてきた」

「・・・なーんだ、つまんないの」

っぷいっと、すぐさま俺に興味を無くしてスマホの画面に顔を戻す。

何を期待していたんだか・・


部屋に戻り、カレンダーを見る。

バレンタインデーから10日が経過し、ホワイトデーまで、残り20日ほど。


スマホにある水城玉緒みずきたまおの連絡先を見ながら、玉緒の言葉を思い出す。

『考えておいてください』


「早めに決めないとな・・・」


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