表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分身の影  作者: 柳 凪央
8/17

第八章 暗闇の罠

加賀健一の部屋は静寂に包まれていた。

雨音が窓の外で繰り返し響き、時折り遠くの雷鳴が低く唸る。

木の床は湿気を含み、わずかに軋む音が空気の緊張感を増幅させていた。


蓮は加賀の机に広げられた紙の束に目を凝らした。

それは内部告発の資料の断片であり、プロジェクト・オリオンに隠された不正の証拠だった。

一枚一枚に書き込まれた小さな文字が、過去の傷を今に呼び覚ます。


「加賀さん……これが本当ならば、事件は単なる復讐劇を超えた意味を持つ」

蓮の声は震えたが、真実への渇望は揺るがなかった。


加賀は冷たい目で彼を見据えた。

「真実は時に重すぎる。君たちにはこの闇に巻き込まれてほしくない」


その瞬間、蓮の胸に迷いがよぎった。

過去の警察時代、守りきれなかった無念。

今度こそ、真実を暴き、再び誰かを守るために。



美咲は部屋の片隅で小さなメモ帳を取り出し、静かに言葉を紡いでいた。

「蓮、気をつけて。私たちはここで大きな何かを動かそうとしている」

彼女の声は優しくも鋭く、まるで嵐の前の静けさのようだった。


外の世界は閉ざされ、豪華客船という小宇宙の中に濃密な人間模様が渦巻いている。

雨が一層激しくなり、窓ガラスに叩きつけられるたびに、二人の影が揺らいだ。



蓮は決意を新たに、加賀の資料を携えて部屋を後にした。

廊下は薄暗く、わずかな灯りが壁の汚れを浮かび上がらせる。

足音が床に吸い込まれるように響き、背後にはいつ何時犯人が現れてもおかしくない緊迫感が漂う。


「この船にはまだ隠された秘密がある」

蓮は低く呟き、美咲とともに次の行動を思案した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ