表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分身の影  作者: 柳 凪央
2/17

第二章 船内の影

出航から数時間が経ち、豪華な客船アクア・エテルナ号は穏やかな海を静かに進んでいた。蓮は自室の窓から夜の海を眺めていたが、心は落ち着かなかった。


「船内の誰かが隠している何かがある……」


そう思いながらも、具体的な手がかりはまだ掴めていなかった。


その時、ドアのノック音が響いた。


「蓮さん、ちょっとお話が…」


顔を覗かせたのは佐藤美咲だった。彼女は優しく微笑みながらも、目の奥には確かな決意が宿っている。


「何か見つけたの?」


「ううん、まだ。でも、乗客たちの様子を見ていると不自然な空気を感じるの」


「どんな?」


「表向きは楽しげにしているけど、目が泳いでいる人もいるし、誰かを警戒している感じの人も……。特に、あの若い女性」


美咲は船内で見かけた茶色のパーカーを着た女性の話をした。


「彼女、逃げるように歩いていたの。何かを恐れているみたいだった」


蓮はその話を聞きながら、改めて乗客リストを思い返していた。


「乗客名簿を見てみよう。名前を洗い出せば、手掛かりが掴めるかもしれない」


二人はタブレットを開き、乗客たちの名前や職業、座席などの情報を確認した。


「何か異変が起きたら、連絡を取り合おう。僕たちで真相を探ろう」


「うん、頼りにしてる」


その言葉に、美咲の手は蓮の腕にそっと触れた。軽やかで、しかし温かい感触だった。


だが、その瞬間、船のエンジンが急に唸りを上げた。


「緊急事態です。エンジントラブルにより、現在航行不能となりました。お客様は船内に留まってください」


アナウンスの声は冷たく、静寂を破った。


蓮と美咲は顔を見合わせた。

密室の閉ざされた世界に閉じ込められた今、何かが動き出す予感が強まっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ