表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
分身の影  作者: 柳 凪央
12/17

第十二章 分身の罠

薄暗い船内の図書室に、蓮と美咲は再び足を踏み入れた。

雨音が窓を叩きつける中、静寂が二人を包み込む。

美咲の手には、先ほど見つけた手紙のコピーが握られていた。


「この船の誰かが、自分の『分身』を使って犯行に及んだ——そう考えるしかないわ」

美咲の声は低く、慎重だった。


蓮は頷き、周囲を見回す。

本棚の影、壁の向こう、閉ざされた扉の向こう——。

「二つの顔、二つの人格……だが、どうやってそれが実現したんだ?」


その時、図書室の奥から物音がした。

二人は一瞬身を固くし、ゆっくりと音のする方向に歩み寄った。


そこには、顔に不自然なほど落ち着きのない若い男、松井隆司が立っていた。

「君たち、また真実に近づいているな」彼の声には、冷たい含みがあった。


蓮は美咲の手をそっと握り締め、警戒を強めた。

「何を知っているんだ?」


松井は微笑み、冷ややかな目で答えた。

「真実は常に二面性を持つ。俺はその一つの顔を演じているだけだ」


その言葉に蓮は戦慄した。

「つまり、お前が犯人だと言いたいのか?」


松井は首を振った。

「犯人は俺の『分身』だ——正確には、俺が演じるもう一つの人格だ。君たちは真実の片割れしか見ていない」


美咲は震える声で言った。

「それは……多重人格?」


松井はゆっくりと頷いた。

「その通りだ。そして、この船の中で、俺の『分身』が動き出した」



蓮はその告白に動揺しつつも冷静を保った。

「それなら、その『分身』をどうやって捕まえる?」


松井は薄笑いを浮かべた。

「それは君たちがこれから解く謎だ」


二人の間に、緊張の糸が張り詰めたまま、静かな嵐が再び近づいてくる予感が漂っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ